Evidence from Loan-level Matched Data

Unviable Relationship and Bank Lending:
Evidence from Loan-level Matched Data
札幌学院大学 井上 仁
甲南大学 中島 清貴
カリフォルニア大学サンディエゴ校 高橋 耕史
銀行企業間の詳細な貸出残高データと銀行および企業の財務データをマッチングさせた
データセットを用いて,日本の 1993 年から 2011 年における銀行と企業の貸借関係につい
て考察する。特に,財務状態(不良債権比率,自己資本比率)が芳しくない銀行と質の低
い企業の間の貸借関係に着目する。
その結果,
1990 年代終盤から 2000 年代初頭においては,
自己資本比率が低い銀行ほど全体的に貸出を抑制していたが,不良債権比率が高い銀行ほ
ど全体的に追加的な貸出を行っていた。また,一部の期間では,質の高い企業よりも質の
低い企業向けに追加的な貸出を行っていた。すなわち,自己資本比率が低い銀行に関して
は,貸し渋りもしくは capital crunch と呼ばれる現象が観察されるが,不良債権比率が高い
銀行に関しては,いわゆる追い貸しと呼ばれる現象が観察される。2000 年代中盤において
は,不良債権比率が高い銀行ほど全体的に貸出を抑制していたが,質の高い企業に比べて
質の低い企業向けの貸出は抑制していなかった。ここでも資源配分の失敗が起こっていた
ことが示唆される。さらに財務状態が芳しくない銀行と質の低い企業の間の貸借関係の背
後にあるバックグラウンドメカニズムについて考察する.