多収性専用品種「新潟次郎」を 用いた飼料用米の多収穫栽培のポイント 新潟県では、飼料用米を生産して収入を確保する方策として、「新潟次郎」等の知事特認品種を用い た、多収穫を推奨しています。ここでは、平成26年度に実施した「新潟次郎」の多収穫栽培実証試験の 成績を踏まえ、多収穫のポイントを述べたいと思います。 1 「新潟次郎」の品種特性 ○極早生のうるち種で、 「こしいぶき」 に比べ出穂期、成熟期ともに 7 日程 度早いため、水管理や穂肥、収穫等 の作業も早くなります。 ○耐 倒伏性は強のため多収穫栽培に 適します。また、穂発芽性は中です。 ○いもち病ほ場抵抗性は、葉いもちは 中、穂いもちはやや弱です。 「新潟次郎」の特徴 2 「新潟次郎」の多収穫栽培実証ほの結果 本年度は 8 月の日照が少なく、登熟には不利な気象でしたが、実証の取組から、目標(700kg/10a)に 近い収量を確保するポイントとして、①初期生育の確保と適期穂肥により、めやすに近い籾数が確保さ れていること、②病害の発生が少なく登熟歩合が比較的高いこと、③雀害が少ないこと等が確認されま した(表 1 、 2 、 3 参照)。 3 栽培のポイント 多収穫のための具体的な栽培のポイントは以下のとおりです。 ( 1 )籾数を確保するポイント 「新潟次郎」は極早生品種のため、田植え後の植え痛み等の生育停滞を挽回する期間が短く、穂数への 影響が大きくなります。そのため、早期に確実に優良茎を確保し、穂数に結びつけることが大切です。 ①ほ場の選定 大豆作あと等の地力窒素の発現量が大きいほ場では、基肥量、穂肥量を抑えて多収穫も可能となり、 地力が低いほ場より収量を確保し易くなります。 ②基肥の施用 10a当たり窒素成分で 7 kg をめやすとしますが、地力に応じて加減します。基肥量が不足すると生 育量が不足し多収穫は難しくなります。また、多過ぎると茎数や㎡当たり籾数が過剰となり、いもち 病や紋枯れ病、虫害の多発生を招き、登熟歩合及び収量が低下するリスクが高まります。 ③施肥法 側条施肥は、初期生育が旺盛になるので、低水温地域や中山間地域など、初期生育が確保しにくい 地域に適しています。 10 表1「新潟次郎」の生育のめやす 表2「新潟次郎」の収量構成要素 及び品質のめやす 表3 平成26年度「新潟次郎」多収穫栽培実証ほの結果 ④健苗の育成 田植え後の活着を良好にし、初期の分げつを確保するため、規格に合った健苗を育成します。 ⑤田植え 田植え時期が遅すぎたり、栽植密度が少な過ぎると穂数や1穂籾数が不足します。田植え時期は、 5 月上旬をめやすとし、栽植密度は㎡当たり18.5株(坪当たり60株セット)、 1 株苗数は 3~4 本とし ます。 ⑥適期中干しの実施 中干しは根の活力を維持し登熟を向上させるので必ず適期に実施します。また、生育過剰の抑制に より、病害虫の発生を軽減し、登熟歩合の確保にも有効です。 ( 2 )病害虫防除の徹底 多肥栽培のため、いもち病や紋枯れ病が多発生しやすいので、適期防除が必要です。 ( 3 )穂肥の施用 穂肥は、 1 回目が出穂前25~23日、 2 回目が出穂前14日となります。 1 回目の穂肥時期は、最高分げ つ期頃と早いので、遅れず施用して、 1 穂籾数を確保することが重要です。 1 回の穂肥量は、10a当た り窒素成分で 3 kg、合計 6 kg をめやすとします。 ( 4 )雀害について 雀害が大きくなると実収量が低下します。雀害を低減するには、人家の近くのほ場を避ける、爆音機 の活用、団地化等の対応が必要です。 【経営普及課農業革新支援担当 田村 良浩】 11
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