JDCニュースレターvol.4

JDC ニュースレター
2015 年 3 月発行
酪農家取材レポート(2015 年・春)
Vol.4
http://www.dairy.co.jp/
平成 26 年度生乳需要基盤強化対策事業 独立行政法人農畜産業振興機構 後援
〒101-0044 東京都千代田区鍛冶町2-6-1堀内ビルディング4階 TEL:03-6688-9841 FAX:03-6681-5295
酪農 家が 支える「 国 産 100%」の牛乳、
生活 者もそ の 意 義を実感
― 生 活 者 調 査 結 果 から鮮 明 に ―
今月、
「牛乳が国産100%であること」の意義を裏付ける生活者(20代~60代の女性)への意識調査の
結果が公表されました。それによると、牛乳が国産であることについて、9割を超える人が「意義がある」と回
答しています。その理由としては「安心」
「安全」が圧倒的多数を占め、
「おいしさ」がそれに続いています。
前号(VOL.3)でもお伝えしましたが2015年4月から牛乳が値上げされます。今回は牛乳の値上がりに
ついて消費者はどうとらえているのか、そもそも牛乳の価格についてはどのように見られているのか、牛乳
は食生活に不可欠なのか、といった調査の結果を取り上げてご紹介します。
【調査結果の要旨】
■国産牛乳の意義とその理由
■酪農の意識と現状の認知度
日 本 の 食 生 活 に 、日 本 の 酪 農 が 必 要
牛 乳 が 国 産 で あ ることに つ い て は 、9
と思うかどうかにつ い て 聞 い た 質 問につ
割を超える人 ( 9 3 . 4 % )が「 意 義が ある」
いては、
「 非 常にそう思う」が半 数を超え、
と回答しています。その理由として「安心」
「 そう思う」と合 わ せ ると約 9 割 に 達して
「 安 全 」が7~8割 以 上 を 占 め て おり、食
います。日 本 の 酪 農 経 営 が 大 変 な 状 況に
の 安 心・安全の面から、国産の牛乳を支持
あると考 えて いる人 も 8 割 を 超 えて いま
する声が多いという結果になっています。
すが(「非常にそう思う」と「そう思う」の合
計 )、一 方で、日本 の 生 乳 生 産 量 の 減 少に
牛乳の値上げと現在の
価格に関する意識
食材や食料品に関連する話題で最も気
になったニュースについて問う質問に対し
ては、半数以上が「食料品の相次ぐ値上げ」
「 昨 春からの 消 費 税( 8 % )の 増 税 」といっ
歯 止 めがかからな いことを 知って いる人
は少なく、2割を切っています。
【調査結果(抜粋)詳細】
最も気になったニュースは
「食料品の値上げ」
た価格に関する事項を挙げています。一方
Q.1 食 材 や 食 料 品 に 関 する話 題
で 、今 年 春 からの 牛 乳 の 値 上 げにつ い て
で、気になったニュースは?
は、
「 知らない」と回答した人が半数を超え、
もっと も 多 い 回 答 は「 食 料 品 の 相 次
「よく知っている」人は1 割にとどまりまし
ぐ 値 上 げ 」と な り 、半 数 を 超 え ま し た
た。また、現在の牛乳の価格そのものにつ
( 5 7 . 4 % ) 。次 い で「 昨 春 から の 消 費 税
いては、
「高い」
(約2割)と感じている人よ
(8%)の増税」
(56.8%)
「 チェーン店 な
りも「安い」
(約3割)と感じている人が多く
どにおける異 物 混 入 事 件 」
(49.4%)
「食
なっています。
品メーカー 工 場における毒 物 混 入 事 件 」
認知度が低い今春からの「牛乳
の値上げ」
Q.2 今春、牛乳が、乳業メーカーから
の出荷段階で2~5%程度値上がりする
ことの認知は?
( 4 6 . 0 % )となり、価 格と安 全 性 に 対 す
る関心が強いという結果になっています。
1
食 料 品 の 値 上 げ に 多くの 人 が 関 心 を
日本の酪農経営は「大変」98%
持っているものの、牛乳の値上げに関して
Q.
5 日本の酪 農の経 営は大 変だと
は「 知らな い 」の 回 答 が もっとも 多く、半
思うか?
数を超えました(55.2%)。
「よく知ってい
る」と回答した人は、10.4%に留まりまし
た。牛乳の値上がりの認知は高くないこと
がわかりました。
現在の牛乳の価格は「安い」が
3割
Q.
3 牛乳の価格に対する意識は?
「 と て も 意 義 が あ ること だ と 思う」が
52.0%、
「 意 義 が あ ることだと思う」が
「非常にそう思う」が44.2%でもっとも
多く、
「 そう思う」が4 1 . 2 % 、
「どちらかと
い えば そう思う」が 1 2 . 8 %と続 き 、合 計
9 8 . 2 % の 人が日本 の 酪 農 家 の 経 営 環 境
が厳しい状況にあることを認識しているこ
とがわかります。前項の質問と合わせて見
41.4%、牛乳が国産であることに意義が
あると感じている人が合計93.4%に達し
て います 。国 産 牛 乳 へ の 期 待 が 高 いこと
がうかがえます。
国 産 は「 安 心 」
「 安 全 」と大 多
数が 回 答
ると、酪 農 家 は日 本 の 食 生 活に欠 か せ な
Q.
8 牛乳が国産であることに意義が
「 と て も 安 い 」が 3 . 4 % 、
「 安 い 」が
い仕事であると思っているが、その担い手
ある理由は?
2 4 . 6 % 、合 計 2 8 . 0 %に対し、
「 高 い 」が
の 仕 事につ いては大 変で あると思ってい
19.2%、
「とて も 高 い 」が 0 . 8 % 、合 計
る、という日本の酪農や酪農家に対する認
2 0 . 0 %となり、
「 安 い 」と感じている方が
識が浮き彫りになりました。
多く見られました。
酪農や酪農家は日本の食生活に
「不可欠」99%
Q.
4 日本の酪農や酪農家は、
日本の
食生活に不可欠か否か?
日本の生乳生産量の減少は知ら
れていない
Q.
6 日本の生乳生産量の減少に歯止め
がかからない状況であることの認知は?
牛 乳 が 国 産 で あることに意 義 が あると
する理由として、多数の人が「安心だから」
(87.2%)、
「 安 全だから」( 7 5 . 4 % )を選
ん で います 。
「 お いしい 」は そ れに続 い て
おり
(42.4%)、国産牛乳の品質に対する
安 心 感が消 費 者 心 理として大きな 要 素に
なっていると考えられます。
「 詳 し く 知 っ て い る 」と 回 答 し た 人 が
「 非 常にそう思う」と回 答した 人 がもっ
とも多く5 0 . 6 %と約 半 数を占めました。
「 そう思う」が 3 7 . 0 % 、
「どちらかという
18.6%であるのに対し、
「知らない」と回
答した人が43.0%と最も多い結果となっ
ています。
とそう思う」が 1 1 . 0 % で 、酪 農や 酪 農 家
Q.
9 日本の酪農や酪農家に対して思っ
ていることは? 回 答 の 多 かった 順 に「 応 援した い 」が
「 ど ち ら か と い え ば 応 援 し た い 」が
んどの 方 が 、日 本 で の 食 事に酪 農 が 不 可
牛乳は国産であることに「意義
がある」
Q.
7 牛乳が国産であることに対する
1 8 . 4 % で 、合 計 9 8 . 2 % の 方 が「 応 援し
欠との 認 識 を 持って いるという結 果 が 出
考えについて。
たい 」と回 答しています。消 費 者 の 声とし
が日本 の 食 生 活に不 可 欠で あると回 答し
た 人 が 、合 計 9 8 . 6 %に達して おり、ほと
ています。
2
日 本 の 酪 農 や 酪 農 家 を「 応 援
した い 」
43.2%、
「非常に応援したい」が36.6%、
て 、日 本 の 酪 農とそ の 担 い 手 で ある酪 農
家 を 応 援した いという思 い が 強 いことが
わかり、酪 農 家にとって励 みになる結 果と
なっています。
これからも変わらず「国産100%」
の牛乳をご愛飲いただきたい。
−国内の生乳の安定供給に向けた
環境作りが必要不可欠−
中央酪農 会 議 事 務 局 長 内 橋 政 敏 年明け以降、様々な食品の値上げが相次ぐ中で、4月からは、牛乳や乳
製品に使用される原料乳の価格(=乳価)が値上がり、それに伴い製品と
しての牛乳や乳製品の小売価格も値上がりすることが見込まれています。
今回の値上がりの背景には、飼料価格の高騰などに伴う、生乳の生産基
盤の脆弱化があります。本紙では、前号(VOL.3)でも取り上げた値上が
りの背景の説明と共に、生産基盤回復に向けた業界の取り組みのほか、日
本における酪農の重要性などをご説明いたします。
[調査概要]
■調 査 方 法:株式会社ネオマーケティン
グが運営するアンケートサイト「アイリサー
チ」登 録 モ ニ タ ー に 対 す るイ ン タ ー ネッ
トリサ ー チ
■調 査 対 象:全国の女性(無職、学生を除く)
20~69歳
■有 効回 答 数:20~60代各100名、
計500名
■実 施 時 期:2015年2月12日(木)~
13日(金)
乳 価 値 上 げ の 一 番 の 要 素
は、国内生産基盤に対する
危機感 業 努 力を超えることなどから、牛 乳 などの
商品の出荷価格の改定に踏み切りました。
トの中で約半分を占める牛の飼料代や、燃
生産基盤回復に向けた酪農
業界の取り組み
料・電気代などの高騰があります。これらの
酪 農 業 界でも、生 産 基 盤を維 持・回 復し
生 産コストの 上 昇により、経 営 圧 迫される
ようと、様 々 な 取り組 み が 行 わ れ て い ま
なかで、直 近 の 急 激 な 円 安 進 行も加わり、
す。まず、中央酪農会議としては、生乳の増
先行きの不透明感が一層増し、乳牛頭数の
産・維 持 を 促 す「 生 乳 計 画 生 産 対 策 」を 実
減 少や酪 農 家 の 廃 業が生 乳 生 産 の 減 少に
行することにより、酪 農 家が生 乳を生 産し
直結する事態となっています。
やすい環境づくりをしています。
これまで、規 模 拡 大 などによって生 乳 生
酪農家は、生乳生産を増やす取り組みと
産 の 維 持が図られてきましたが、それも限
して、遺 伝 的 改 良により牛 1 頭 当たりの 乳
界に近づいています。
量を増やしてきたほか、
「性判別受精卵・精
指定生乳生産者団体(=酪農家の生乳を
液」の導入による後継牛(=乳牛の雌牛)の
集荷し、販売する組織)と大手乳業メーカー
効率的な確保に加え、暑さによる牛の泌乳
との 乳 価 交 渉 に お い て は 、両 者 の 間 で 生
量の減少や繁殖成績の低下を抑えるため、
産 基 盤 の 維 持・強 化を図ることが急 務であ
夏場の暑熱対策などの牛の飼養管理の改
るという認 識は一 致していたもの の 、消 費
善に取り組んでいます。
者 の 節 約 志 向が依 然として強 いことや、円
また 、生 産コストを抑 える取り組 みとし
安に伴う不 透 明な経 営 展 望などから、メー
て 、価 格 の 不 安 定 要 素 が 大きい 輸 入 飼 料
カー 側 は 乳 価 値 上 げ の 決 断に時 間を要し
からの 脱 却を目指す自給 飼 料 生 産 へ の 移
たと聞いています。
行や、稲作農家との連携を通じた飼料用米
それでも、4月から乳価の値上げが決まっ
やホー ルクロップサイレージ( 稲 発 酵 粗 飼
乳価値上げの背景には、生乳の生産コス
たのは、昨 秋からの 急 激 な 円 安 進 行や、昨
年末に社会問題化したバター不足問題など
により、生乳生産基盤の脆弱化への危機感
が共 有されたということだと思 います。一
方、乳業メーカーにおいても乳価値上げ分
に加え、輸 入 原 材 料 価 格や包 装 資 材 、物 流
費の上昇・高止まりなどのコストアップが企
3
料)などの活用も行っています。
ン」を形成する関係者の努力により、安全・
また、酪農は気温をはじめとする気象の
さらには、労 働 力 不 足を補うため、搾 乳
安心な国産牛乳乳製品を安定的に供給し
影 響を受 けやすい 産 業 です。今や 異 常 気
ロ ボット の 導 入 による 効 率 化 や 、身 内 に
てきました。
象は常態化していて、干ばつなどによりい
後 継 者 が い な い 場 合に、身 内 以 外 で 後 継
しかしながら、直 近 の 円 安 などで 、あら
ず れか の 国 の 輸 出 が 減ると、国 際 価 格 は
者 を 確 保 する第 三 者 継 承 など、各 生 産 者
ゆる経費が値上がりしています。酪農家や
たちまち高騰してしまいます。
が経 営 環 境 の 課 題に応じた様々な努 力を
乳業メーカーだけでなく、運送業者などに
さらに、中 国などの 新 興 国を中 心に、世
行っています。
おいても、コストは上昇しています。
界の乳製品需要が増えていることもあり、
酪 農は、小 売 業 、乳 業メーカー 、指 定 生
一昔前より国際価格の水準は上昇。中長期
■行政による支援の実施
乳 生 産 者 団 体 、農 協 、運 送 会 社 、獣 医 師 、
的には、不足気味な状況や国際価格の高止
このような 中で、生 産 基 盤 の 強 化と、日
機械メーカーなど、様々な人々に支えられ
まりは続くと見込まれていて、
「買いたくて
本 人 の 食 生 活に重 要な牛 乳 乳 製 品 の 安
て いるキズ ナの 産 業 です 。酪 農 経 営 が 成
も買えない」状況になりつつあるのです。
定 供 給 を 図る観 点 から、行 政 でも 様 々 な
り立 たなくな れば 、こうした 人 たちも 成り
そのような状況の中、輸入に大きく依存
対策が講じられています。
立たなくなってしまいます。これは業 界だ
するのは非常に危険だと言えます。
2 0 1 5 年 度には、酪 農 家 の 収 益 性 向 上
け の 問 題 では なく、最 終 的には 消 費 者 の
日本の基礎的な食料である
“牛乳乳製品
を 地 域ぐるみ で 実 現 する体 制 で ある「 畜
皆さまにとっても問題になるのです。
の原料を、日本の酪農家が日本でつくってい
産クラスタ ー 」の 構 築 へ の 支 援 が 掲 げら
生 産 現 場 から消 費まで のコストを適 正
る”
ことは非常に価値のあることなのです。
れています。これは、酪 農 家と地 域 の 関 係
に反 映 させ た 小 売 価 格 の 形 成 を 行 い 、ミ
事 業 者 が 協 力し合って 、地 域ぐる み で 酪
ルクサプライチェーンを維持していくこと
農家を支えていこうというものです。
が不可欠なのです。
また 、優 良 な 後 継 牛(=乳 牛 の 雌 牛 )を
国産牛乳乳製品を安定的に供給するため
へ の 移 行を促 進 する対 策 なども 講じられ
日本 の 食を日本 で つくると
いうことの価値に対する認
知が必要
ています。
前述の調査にもあるように、生乳生産量
タンパク質をはじめとした栄養素が豊富な
この ほかにも 、牛 の 管 理 に 関 する技 術
の減少により生乳が不足しているというこ
食品で、これまでも日本人の健康を支えて
の 向 上や 牛 舎 環 境 の 改 善 、夏 場 の 暑 熱 対
とについてはあまり知られておらず、つい
きました。
策 など、生 乳 の 増 産 につ な がるきめ の 細
数 年 前までは 余って いるとさえ思 わ れて
中央酪農会議としては、これからも日本
か い 取 組 へ の 支 援 や 、輸 入に頼らずに自
いました。最近のバター不足でようやく認
人の元気につながる生乳の生産基盤の回
給 飼 料 の 使 用が可 能となる環 境 作りも進
知されはじめたともいえます。
復のための様々な取り組みを行います。そ
められています。
国 内 の 生 乳 が 不 足して いる中 で 、牛 乳
れとともに、日本の酪農や国産牛乳乳製品
さらに、農 林 水 産 省と中 央 酪 農 会 議 が
乳 製 品は日配 品として欠かせ な い 存 在で
の価値や魅力、酪農家の前向きな取り組み
一 体 と なって「 ベ スト パ フォー マ ン ス 会
すから、小 売りの 現 場としては 、値 上 げを
について様々な媒 体などを用 いて情 報を
議 」と いう会 合 も 開 催して い ま す 。こ れ
避けたいし、目玉としたい商品の代表かも
発信していきます。消費者の皆さまに日本
は 、乳 用 牛 の 泌 乳 能 力を最 大 限に発 揮 さ
しれませ ん 。牛 乳について、鮮 度が求めら
の酪農についてもっと知っていただき、国
せるため、乳 牛 の 繁 殖・飼 養 管 理における
れ、栄養が豊富=日持ちしないという特性
産牛乳乳製品の価値について改めて考え
最 新 の 知 見 を 集 約し、改 善 ポ イントを 酪
を持つことからも、セー ルが行われること
ていただきたいと思います。これからも、日
農 家 に 啓 発し、さらな る生 産 性 向 上と収
が多いです。
本中どこでも気軽に手に入れることができ
益の確保を図ろうとする取り組みです。
乳 製 品につ い ては 、不 足しても 輸 入 す
る国産100%の牛乳を、継続してご愛飲い
ればいいという人もいます。
ただきたいと思います。
確 保 するた めに 、
「 性 判 別 受 精 卵・精 液 」
の 活 用に対 する支 援 や 、国 産 の 自 給 飼 料
日本国内のミルクサプライ
チェーンの維持が不可欠
4
■これからも牛乳の継続飲用を
厳しい経営環境の中でも、安心・安全な
に、日本の酪農家は努力と工夫を続けてい
ます。牛乳乳製品は日本人にとって米と並
ぶ基礎的な食料であり、またカルシウムや
しかしな がら、世 界 の 牛 乳 乳 製 品 の 生
産 量 は 約7億トン以 上( 生 乳 換 算 )ありま
これまで 、牧 場 で 酪 農 家 が 毎 日 搾 乳し
すが 、そ の ほとんどは 自 国 内 で 優 先 的 に
た 生 乳 が 、乳 業 工 場 に お い て 、製 品 とし
消 費 され 輸 出に回るの は 1 割にも なりま
て の 牛 乳や 乳 製 品に加 工され、スー パー
せ ん 。輸 出 国も、ニュージーランドやオー
マ ー ケットなどの 店 頭に毎 日 並 び 消 費 者
ストラリア、EU、米国などの数か国に限ら
の手に届くまでの「ミルクサプライチェー
れています。
2015 年 3 月発行