中山久憲 著 『住民主権型減災のまちづくり -阪神・淡路大震災から学び、南海トラフ地震に備える-』の発行 2015年は阪神・淡路大震災の1995年発生 から20年という節目の年になります。震災復 興事業は2011年に完了しました。 あらためて、震災復興事業の完了までのプ ロセスの分析を、神戸市内で成し遂げられた 震災からの「創造的復興」の現状を振り返り、 行政の事業の進め方や、住民と協働で進めた まちづくりのプロセスと制度、その際に主体 となったまちづくり協議会の活動を軸に、事 業により創り出された復興現場の具体的な形 態を中心に実践及び理論の両面から捉え直し てみました。 本書において、導き出せた成果は、被災者 である住民が「主権者」として復興のまちづ くりの活動ができた実態と、それを実現に導 いた制度やシステムが側面から複合的に支え 神戸学院大学現代社会研究叢書 1 たことでした。都市計画が求めてきた「住民 ミネルヴァ書房 2015年9月 発行 主権」は理想の形態ですが、これまでは制度 282頁 定価 本体 6,000 円+税 の壁や、財政の壁などで、実現までの厳しい 現実がありました。しかし、大震災からの早期復興という特殊な命題追求の過程で、国を はじめとする行政側の権限の委譲と、住民の活動を支援した「まちづくり条例」の存在、 まちづくり協議会の活動実態、それを支えた専門家派遣制度などが、見事に機能したこと で「住民主権型」のまちづくりが実践されたのです。 また、4年前の2011年に発生した東日本大震災の「超」大規模災害発生の現実の前に、 もはや行政だけの力では、災害への備えに対処できないことが明らかになり、被害を抑止 する「防災」から、被害を軽減する「減災」への発想の転換を余儀なくされました。 今後想定される大規模災害に備えた「減災」をいかに進めることができるか。それには、 被災者になるかもしれない住民と行政が協働で実践するまちづくりが不可欠です。その進 め方に参考となるのは阪神・淡路大震災からの復興の「住民主権型まちづくり」となりま す。 これらをまとめ、 「阪神・淡路大震災から学び、南海トラフ地震に備える」を副題とし、 『住民主権型減災のまちづくり』として、このたび、神戸学院大学現代社会学会研究叢書 の1冊としてミネルヴァ書房より発行することができました。 阪神・淡路大震災や東日本大震災の被災地の現地に立った実践的知見を体系的に取りま とめた1冊に過ぎませんが、今後想定される災害への備えや、災害発生後の復興事業の進 め方の参考になれば幸いです。
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