経済原論IA Principles of Political Economy IA

科目名
Course Title
単位数
経済原論IA
担当教員氏名
2単位
Principles of Political Economy IA
必修・選択
選択
海老塚 明
後期第1部開講
【講義の主題と目標】
ソ連・東欧の社会主義圏の崩壊によって、マルクス経済学の権威は失墜したとされている。し
かし、ソ連・東欧の、そして現在でも存在する全体主義的社会主義体制の創始者は、レーニンや
毛沢東をはじめとする、いわゆる「血塗られた」革命家たちであって、マルクス本人ではない。
マルクスの主著である『資本論』の分析対象は、資本主義経済そのものである。現代の全体主義
である新自由主義やグローバリズムの影響下でのグローバル資本の横暴、労働者の実質賃金の持
続的な低下、格差の拡大は、まさにマルクスが指摘した資本主義の病理である。いったい資本主
義とは何であるのかを、マルクスとともに考えてみたい。
【講義の概要】
新自由主義やグローバリズムに対する批判を念頭に、マルクス『資本論』の主要な論点の概要
を講義する。市場経済に還元することのできない、資本主義経済の特徴を明らかにし、今日の経
済社会に対する根底的な批判の視座を提供することにしたい。
【講義計画】
第 1 回 はじめに
第 9 回 剰余価値論(2)
第 2 回 商品と労働価値説(1)
第 10 回 賃労働関係論
第 3 回 労働価値説(2)
第 11 回 資本関係の再生産
第 4 回 貨幣と物象化
第 12 回 再生産表式論(1)
第 5 回 資本論
第 13 回 再生産表式論(2)
第 6 回 労働力商品論(1)
第 14 回 総括
第 7 回 労働力商品論(2)
第 15 回 試験
第 8 回 剰余価値論(1)
【評価方法】
期末試験による。
【テキスト又は参考書】
マルクス『資本論』関連参考文献:マルクスが一種のブームになる中で、多くの入門書が出てい
る。どれか一つを手にとって読んでおくことは、本講義の見通しをよくするだろう。私自身は、
入門書としては、今になっては少々難解な部類になってしまったが、内田義彦『資本論の世界』
(岩波新書)を推薦したい。さらに、本格的に学びたい学生にはデヴィッド・ハーヴェイ『〈資
本論〉入門』(作品社)を、現代との関係を考えたい学生には、トマ・ピケティ『21 世紀の資本』
(みすず書房)を推薦する。
【コメント】
資本主義の「純化」を目指す運動とも見なすことができる新自由主義やグローバリズムの支配に
よって生活世界の「貧困化」が広がる現状に対抗する意味で、ある種の「マルクス・ルネッサン
ス」が始まりつつあるように思われる。少なくとも、マルクスを知ることは、間違いなく現代経
済社会を「知る」ことの一助になるだろう。
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