近年、土壌環境などの有害物質による汚染は深刻な問題となっており

近年、土壌環境などの有害物質による汚染は深刻な問題となっており、これらの
有害物質で汚染された環境を速やかに修復することが重要な課題となっている。その方法
のひとつとして、バイオレメディエーションが注目されている。これら微生物を利用した
汚染浄化システムの開発は、従来の物理化学的処理技術と比較して安価であり、かつ無害
化処理が可能であることから、多くの有害物質分解の研究が行われている。しかしながら、
実際に有害物質分解時に機能している酵素群を統合的に解析した研究は少ない。本研究に
よって、有害物質分解時における微生物産生酵素群の相互作用を明らかにすることは、実
際の土壌環境で行われている有害物質分解システム解明に大きく貢献するものと考えられ
る。
本研究では、主に特定悪臭物質を中心とした数十種類の有害有機物質に対し、微
生物産生の酵素群の活性化の有無を同定することで、有害物質分解能を持つ酵素群の同定
を行う。さらに、酵素間の相互作用を推定する手法を開発し、酵素群の相互関係を推定す
ることで土壌環境浄化メカニズムを、酵素群の相互作用によって機能する1つの系として
明らかにしていく本研究の有する斬新な点としては、これまで主に細胞内における生命シ
ステムの解明という分子生物学的に利用されてきたバイオインフォマティクスの技術を、
土壌生化学の分野に適用する点が挙げられる。具体的には、発現プロファイルデータなど
の連続型数値データから変数間の関連構造を推定する手法を改良し、酵素群の活性化デー
タという離散型データから酵素間の関連構造を推定する手法の開発を行う。バイオインフ
ォマティクスにおけるネットワーク推定手法は、全遺伝子の発現プロファイルに適用され
ていることからも、本研究で得られる実験データ量に適用し、多数の酵素群について相互
作用推定を行うことは可能であると考えている。これまで、環境保全を目的とした土壌生
化学的実験データにインフォマティクス技術が応用された解析は稀であることから、本研
究によって酵素活性化データに対するバイオインフォマティクス的解析手法を確立するこ
とは、環境分野の実験データに対する新しいアプローチとして期待される。