有効模型に基づくQCD相図の高密度領域の解析

有効模型に基づくQCD相図の高密度領域の解析
J.Sugano, J.Takahashi, M.Ishii, H.Kouno and M.Yahiro, Phys. Rev. D 90, 037901 (2014)
管野 淳平
A
高橋 純一, 石井 優大, 河野 宏明 , 八尋 正信
A
九州大学, 佐賀大学
九大研究会
~格子QCDと現象論模型による有限温度・有限密度の物理の解明~
2015/2/19 九州大学
QCD相図
 クォーク・ハドロン相転移線
 代表的な相
- ハドロン相
- クォーク-グルーオン・プラズマ相
- カラー超電導相
𝑇
- 高密度物質の状態方程式
- 中性子星内部にクォーク?
臨界点
クォーク-グルーオン・プラズマ相
クォーク・グルーオン
ハドロン相
クォーク・ハドロン相転移線
核子, ハイペロン...
中間子
カラー超電導相
中性子星
飽和密度
𝜇𝐵 = 3𝜇q
目的
 QCD相図の高密度領域に有効模型でアプローチ
- クォークパート : 𝜇B /𝑇 ≲ 3 での格子QCD計算を利用
- ハドロンパート : 相対論的平均場理論
 クォーク・ハドロン相転移線の位置
 中性子星
- 状態方程式
- Mass-Radius 関係式
Entanglement Polyakov-loop extended Nambu—Jona-Lasinio
(EPNJL) 模型 (2-flavor, isospin symmetric)
◎ カイラル対称性の自発的破れ
◎ 閉じ込め機構
𝑈(Φ, Φ∗ ) : Polyakov potential
- pure gauge理論での格子QCD
計算から決定
(only when finite 𝜇q )
S.Roessner, C.Ratti, and W.Weise,
Phys.Rev.D 75, 034007 (2007)
Entanglement vertex
Y. Sakai, T. Sasaki, H. Kouno, and M. Yahiro,
Phys. Rev. D 82. 076003 (2010)
ベクトル相互作用にも Entanglement の効果
 ベクトル相互作用の強さをどう決めるか?
- 効果は有限密度領域のみ
- ベクトル相互作用の強さはクォーク数密度に反映
カイラル凝縮, Polyakov loop
 高温領域ではカイラル凝縮 ∼ ゼロ
- ベクトル相互作用の効果のみを抽出
カイラル凝縮
F. Karsch, Lect. Note. Phys. 583, 209 (2002)
Polyakov loop
O. Kaczmarek and F. Zantow, Phys. Rev. D. 71, 114510 (2005)
格子QCDによるクォーク数密度
S. Ejiri et. al., Phys. Rev. D 82, 014508 (2010)
 𝐺v の大きさをとりあえず知りたい : 𝜇q ∼ 0 での値は?
- 𝑛q は 𝜇q - odd
⋅⋅⋅
- 𝑛q /𝑛SB は 𝜇q - even
𝜇q ∼ 0でほぼゼロ
⋅⋅⋅ 𝜇q ∼ 0でも有限
 Wilsonフェルミオン : 有効模型のカレント質量を refit
w/o ベクトル相互作用 @ 𝜇B ∼ 0
𝑇c = 171 MeV
カレント質量130MeV
𝑛/𝑛SB
𝑛/𝑛SB
カレント質量72 MeV
𝑇/𝑇c
𝑇/𝑇c
 格子QCDとの不一致
- 斥力的な効果(ベクトル相互作用)が必要
w/ ベクトル相互作用 @ 𝜇B ∼ 0
カレント質量130MeV
𝑛/𝑛SB
𝑇c = 171 MeV
𝑛/𝑛SB
カレント質量72 MeV
𝑇/𝑇c
𝑇/𝑇c
 𝐺v ∼ 𝐺s /3 ⋯ localized OGE 相互作用 + Fierz変換の結果と一致
𝑞
𝑞
gluon
𝑞
𝑞
𝑞
+ Fierz変換
𝑞
𝑞
𝑞
Entanglement vertex の効果
カレント質量130MeV
𝑛/𝑛SB
𝑇c = 171 MeV
𝑛/𝑛SB
カレント質量72 MeV
𝑇/𝑇c
𝑇/𝑇c
 Entanglement の効果で高温でベクトル相互作用が弱まる
𝐺v (Φ) = 𝐺v (1 − 𝛼1 ΦΦ∗ − 𝛼2 Φ3 + Φ∗3 )
 Entanglement の効果が重要
2相模型
 EPNJL模型でバリオンまで記述したい
- EPNJL模型にバリオンを導入する方法は確立していない
 熱力学との整合性を加味した2相模型
- クォークパート : EPNJL模型
- ハドロンパート : 相対論的平均場理論
相対論的平均場理論
N
G. A. Lalazissis, J. Konig, and P. Ring,
Phys. Rev. C 55, 540 (1997)
N
𝜎, 𝜔, 𝜌
N
N
saturation property
𝜓 : 核子場 𝜎, 𝜔, 𝜌 : メソン場
saturation density
0.148 (fm−3 )
パラメータはいくつかの原子核の
- 結合エネルギー
- 荷電半径
- 中性子半径
から決定されている
binding energy
16.299 (MeV)
incompressibility
271.76 (MeV)
asymmetry energy
37.4 (MeV)
effective mass
0.60
(per nucleon mass)
クォーク・ハドロン相転移線
 Gibbsの処方
ハドロン相の圧力 : 𝑃H
クォーク相の圧力 : 𝑃Q
𝑃H > 𝑃Q ⋯ ハドロン相が実現
𝑃H < 𝑃Q ⋯ クォーク相が実現
クォーク・ハドロン相転移線
𝑇(GeV)
クォーク相
ハドロン相
𝜇𝐵 (GeV)
ベクトル相互作用により
相転移線が高密度側へシフト
𝑇 = 0 [GeV] のとき
𝜇B : 1.3 [GeV] → 1.6 [GeV]
状態方程式 (isospin asymmetric)
𝑃 : 圧力
𝜌 : 各物質の密度
𝜌0 : 標準核密度
ハドロン相のみ
2相模型 (ベクトル相互作用なし)
2相模型 (ベクトル相互作用あり)
 中性子星内部に混合相, 純粋なクォーク相が出現
 ベクトル相互作用により純粋なクォーク相への相転移が遅れる
→ 状態方程式が stiff
Mass-Radius関係式
ハドロン相のみ : 2.79 𝑀⨀
2相模型 (ベクトル相互作用なし) : 2.29 𝑀⨀
2相模型 (ベクトル相互作用あり) : 2.65 𝑀⨀
TOV方程式 + 状態方程式
𝑅(km)
↓
Mass - Radius 関係式
𝑀 = 𝑀(𝑟)
P. B. Demorest et. al., Nature (London) 467, 1081 (2010)
 ベクトル相互作用があると, 最大質量が大きくなる
 ハドロン相をより soft な状態方程式で記述しても観測と無矛盾
まとめ
Ⅰ. 格子QCDの計算結果を用いて,
有限密度領域で重要となるベクトル相互作用の強さを決定
Ⅱ. 構築されたEPNJL模型と相対論的平均場理論を組み合わせて,
ベクトル相互作用のクォーク・ハドロン相転移線への影響を評価
Ⅲ. 状態方程式からMass - Radius関係式を導出し,
クォーク・ハドロン相転移が起こっても2𝑀⨀ を再現する可能性