第9章何がGDPを決めるのか

この章で学ぶこと
1. 国民生活とGDPの関係
第9章 何がGDPを決めるのか
2. 生産能力の大きさとGDPの関係
3. 需要の大きさとGDPの関係
4. 生産能力と需要の関係
1.はじめに
日本におけるGDPの推移 (単位:兆円)
GDPの動きはニュースで頻繁に
とりあげられている
日本や世界のGDPについて見てみよう
アメリカと日本のGDP (2009年)
疑問
アメリカ合衆国 14兆ドル
• GDPが急激に増えたり、減ったりするの
はなぜだろうか?
日本 5兆ドル
• なぜGDPの小さな国と大きな国がある
のだろうか?
アメリカのGDPは日本の2倍以上!
1
この疑問に答えるためには
2.国民生活とGDP
GDPを決めているものが何なのかを
知らなければならない
国民生活の質とGDP
それを調べる前に
世界各国のGDP、平均寿命、識字率を見て
みよう
私たちの生活とGDPとの関係を考
えてみよう
GDP、平均寿命、成人識字率 (1999年)
国
一人当たりGDP
(ドル)
平均寿命
(年)
成人識字率
(%)
アメリカ
31,872
77
99
日本
24,898
81
99
ドイツ
23,742
78
パキスタン
1,834
バングラディッシュ
ナイジェリア
別の事例 (1994年)
一人当たりGDP
(ドル)
平均寿命(年)
ブラジル
4,000~5,000
64~66
99
ナミビア
2,000~3,000
58~60
60
45
中国
0~1,000
70~72
1,483
59
41
スリランカ
0~1,000
72~74
853
52
63
結論
GDPが大きいことは充実した医療や教育
など国民生活の質を高める経済的な可能
性を与えるが、その可能性が現実に豊か
な生活に結びつくためには、国の政策や
社会制度の充実などGDP以外の要因も
重要である
高度経済成長と国民生活
高度経済成長(1955~1973)
• GDPがこの間約5倍になった
• 平均寿命も増大
男性 59 (1950年代)
女性 63 (1950年代)
71 (1975年)
76 (1975年)
2
平均寿命が延びた背景
3.生産能力の大きさ
• 上下水道の普及、医療施設の整備
生産要素と生産技術
• 国民全員をカバーする医療保険制度の
成立
生産するために必要なもの
• 生産要素 (労働、資本、土地)
• 生産技術
高齢者の受診抑制が減る
人的資本の蓄積
生産要素がたくさんあればあるほど、
生産技術が高ければ高いほど、多くの財
を生み出すことができる
生産能力の大きさがGDPを
決めている
事故の能力を高め、
労働力としての質を高めること
学生の個人的な努力は、
社会的にも大きな意味をもっている
原材料と日本経済
4.需要の大きさ
• 戦争直後の生産減
需要とGDP
原材料不足
本当に生産能力の大きさがGDPをきめている
のだろうか?
傾斜生産方式によって克服
不況時
• 第一次石油危機時のモノ不足
• 使われない機械がある
• 失業者がいる
3
需給ギャップの動き
企業は売れる見込みがあるかどうかを
考えて生産を行う。
商品に対する需要の大きさがGDP
を決めている
需要の構成比 (2008年度)
金額(10億円)
構成比
304,828
56%
投資
117,714
22%
政府支出
97,047
18%
純輸出
21,447
4%
541,494
失業減
全労働者数と雇用者数の差が小さくなる
・・・需給ギャップの縮小
不景気時
失業増
全労働者数と雇用者数の差が大きくなる
・・・需給ギャップの拡大
生産能力と需要
消費
GDP
好景気時
GDPを支える要因として、
生産能力の大きさと需要の大きさの
どちらが正しいのだろうか?
需要さえあれば生産が行われるとは限らない
例) 飢饉
100%
結論
生産能力と需要の両方がうまく機能して
はじめて、GDPは健全にはたらく
結論
生産能力
需要
労 働
消 費
資 本
GDP
投 資
土 地
政府支出
技 術
純輸出
4
5.おわりに
日本におけるGDPの推移 (単位:兆円)
まとめ
1. 生産能力の大きさがGDPを決めている
2. 需要の大きさがGDPを決めている
3. 生産能力と需要の両方のバランスが
重要である
バブル景気
平成不況
• 80年代半ば~90年
• バブル崩壊後、需要が急減
• 地価や株価などの資産価格が本来の実力以
上に異常な値上がりをした
• GDPが伸び悩む
• 地上げ、貧富の格差の拡大
• 生産能力に比して需要が異常に増大
残された課題
考えてみよう 1
どのように生産能力と需要のバランスを保って
いけばよいのだろうか
あなたの身のまわりにある生産能力をあげてみ
よう。また、生産能力の大きさとはどのようなこ
とをいうのかを考えてみよう。
この問題を考えるためには、
• 各々の需要項目について考察
• 政府の役割など
生産をするときに、必要なものを考えてみよう
に関するより詳しい考察が必要
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5
考えてみよう 2
考えてみよう 3
生産能力はいま十分に活用されているだろう
か。もし利用されていないと思うなら、その理由
は何かを考えてみよう。
本章でGDPの決定には生産能力と需要要因
のバランスが大切であることを学んだ。
最近のニュースを思い出してみよう
リーマンショックで日本のGDPは落ち込んだ
が、このショックはこの生産能力と需要のどちら
に影響を与えたのだろうか、考えてみよう。
Column9-1を参考に!
次に読んで欲しい本
参考文献
「新版マクロ経済学」
「入門経済学第3版」
年中谷武他
勁草書房、2010年
伊藤元重(著)
日本評論社、2009年、第10章
「日本経済がわかる経済学」
「マンキュー入門経済学」
菊本義治他
桜井書店、2007年
グレゴリー・マンキュー(著)
東洋経済新報社、2008年、第8章
「ケインズ」
「高度成長」
吉川洋
ちくま新書、1995年
吉川洋(著)
読売新聞社、1997年、第7章
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