すばらしいほめ言葉

子育て情報
3月号
平成 27 年 3 月
椙山女学園大学附属幼稚園
すばらしいほめ言葉
園長
横 尾
尚 子
ほめ言葉・叱り言葉」をめぐって、学生と話し合った時のことです。一人の学生が次の
ような発言をしてくれました。
高校に入学したばかりの頃、母が長期の入院。家事と父や弟の世話をしながら、勉強に
部活。友達との人間関係もグチャグチャで、毎日たいへんでした。なんで私ばっかり、と押し
つぶされそうになった時、母が「いつもありがとう。お母さんの自慢の子だよ」と言って
くれました。母の世話なんて何もしてあげてないのに、文句ばっかり言ってるのに、母は
ほめてくれました。今のままの私でいいんだって、認めてもらえたようで、とってもうれ
しかった。母のためにも、自分のためにも、がんばって生きて行こうって思いました。
母親に自慢してもらえる私である、という思いが、この学生を支え、励まし、日々の困
難に立ち向かっていく勇気や自信を育てました。親や大人が子どもを自慢に思うこと、誇
りに思うこと、そしてその気持ちを言葉で伝えることは、子どもにすばらしい力を育てま
す。
幼い子どもの例で見てみましょう。
ある学会のシンポジウムに、フランス人女性研究者が、小学1年生ぐらいのお嬢さんを
連れて登場されたことがありました。それはほほえましい光景だったのですが、こんな場
所で2時間もの間、幼い子がじっとしていられるのだろうか、と心配したのは私だけでは
ありませんでした。ところが、心配は大ハズレ。その子は終始母親をじっと見つめ、母親
の眼差しや笑顔にうなずき、微笑み返して過ごしました。一度も声を上げることはなく、
立ち歩くことも、ぐずることもありませんでした。終了後、母親はまっさきに娘を抱きし
め、何度もキスをし、話しかけていました。その言葉が気になって尋ねると、
「あなたは私
の誇りよ。ステキなレディだわ、と言ったのよ」と教えてくれました。
しつけは、単なる形の押しつけでは意味がありません。子ども本人が自律した人間とし
て生きて行けるように、また自分も他者も大切にして生きて行けるように、しつけられな
ければなりません。そのためには、子どもが自分のあり方を、自分自身の力で創造してい
けるように勇気づけましょう。