研究主題 筋道を立てて考え、表現する子の育成

研究主題
筋道を立てて考え、表現する子の育成
~算数科における言語活動を大切にし、学びを深める授業をめざして~
1.研究主題について
現在、社会全体が急激に変化し技術革新を要求されるようになってきている。このような社会では幅
広い知識と柔軟な思考力に基づく新しい知識や価値を創造する能力が求められる。またグローバル化の
進展により、異なる文化との共存や国際協力の必要性が増大している。そのため、これからの社会を生
きる子どもたちは、自ら課題を発見し解決する力、コミュニケーション能力、物事を多様な観点から考
察する力(クリティカル・シンキング)、様々な情報を取捨選択できる力などが必要になってくる。この
ような社会において、次代を担う子どもたちの「生きる力」を育むことが、今の学校教育に求められて
いる。
本校では「自ら学び心豊かに生きる子」を学校教育目標に、子ども一人一人の可能性を伸ばし、個々
の生きる力を育成することを目指している。特に本年度は「確かな学びから豊かな学びへ」を重点目標
に掲げる。
「わかる・できる」という子どもの実感に重きをおいた問題解決の場を設定し、子ども一人
一人が獲得した知識や技能を総合的に働かせ生活の中にいかす力を育み、個々の学びをより確かなもの
にしていきたい。そのような学びをもとに、感性を豊かにさせ、自分なりの見方や考え方を持つことで
よりよい自己を創りだしていくことを目標とした。
学校研究においては平成 25 年度から活用力を思考力・判断力・表現力ととらえ、算数科にしぼって
授業でその育成を図った。算数科は、問題を解決したり、判断したり、推論したりする過程において、
見通しをもち筋道を立てて考える力を高めていくことを重要なねらいとする教科であり、本校の児童に
つけたい活用力を育むのに適していると考えている。当初、思考力・判断力と表現力は補完するもので
あり、切り離して育つものではないとの捉えから「考えること」、
「書くこと」、
「伝えること」、
「比べて
聴く」ことを授業づくりの重点とした結果、指導者や分科会ごとにばらつきが見られ、多くの課題が残
った。そこで平成 26 年度からは思考力・判断力の育成については「筋道を立てて考えること」、表現力
については「自分で考えたわけや方法を表現すること」に重点をおいた授業づくりを行った。本校では
算数科における「筋道を立てて考える力」を「数学的に考える力」と捉え実践を重ねた結果、個人差は
あるものの児童は数学的に考え、考えたことをかいたり、話したりして表現するようになり一定の成果
が見られた。しかしながら、それぞれ思考したこと、判断したことの表現が自分だけ、あるいは教師や
一部の児童にしか理解されない表現をしている姿、友達の表現を見聞きしても理解できず結果的に多様
な見方・考え方ができない姿が見られ全体として考えが深まらない実態が明らかになった。
そこで、今年度も研究主題を「筋道を立てて考え、表現する子の育成」として昨年度までの方向性を
継続し、さらに数学的に考える力を高めるためにも、自分も周りも理解したり納得したりできる表現力、
そして他の表現を理解するための自分の言語の能力を育成していきたい。よって今年度は副題を「算数
科における言語活動を大切にし、学びを深める授業をめざして」として研究をすすめることとした。
1
2.今年度の取組
(1)研究仮説
「主題設定の理由」で述べてきたことから、今年度の研究の仮説を次のように設定した。
言語の能力を育むことを目指した言語活動を行えば、他者とともに学びを深められ、筋道
を立てて考え、表現する力を育むことができるだろう。
(2)授業づくりの重点
算数の言語の能力を高める授業
対話や交流で学びを深める授業
(3)授業づくりの視点
視点 1
課題と対話するための言語活動
~書く・描く~
個々が自分の考えをわかりやすく他者に伝えられる形に表現できることを目指す。言葉とともに算数
科の言語ともよばれる数、式、図、表、グラフをいかに活用させて表現させるか指導方法や手立てを工
夫する。
・課題の開発(問いが生まれる課題、解決したくなるようなワクワク感のある課題)
・見通し場面での対話や交流(既習は使えるか、使えそうなアイテムはあるのか)
・使わせたい表現の方法(どんな表現をさせたいのかを明確に)
・個別支援の手立て
など、自力解決場面で他を意識したわかりやすい表現をめざして授業の中でどのような取り組み
や工夫をしたのかを視点とする。
視点 2
考えを深めるための言語活動
~話す・聴く~
動的に、そして相手の反応を見て、相手の立場に立ったわかりやすい説明ができる言語の能力を育て
るような指導を工夫する。また聴く側も発表者の思いや考えを想像しながら聴き、反応することでコミ
ュニケーションの活性化を図れるような指導や手立てを工夫する。
・比較検討時の話し合いのさせ方の工夫
・算数科で使わせたい表現の周知
「なぜかというと~」
「もし~なら」
「例えば~」
「A は~、B も~。C も~。だからいつも~
である。
」
・聴く側の反応のしかた
など、ペア学習や全体交流場面で対話を取り入れ、関わり合いながら学びを高める姿をめざすた
めに、どのような取り組みや工夫をしたのかを視点とする
2
3.研究全体構想図
学校教育目標
自ら学び心豊かに生きる子
めざす児童像
やさしい子・考える子・たくましい子
本年度重点目標
研究主題
確かな学びから豊かな学びへ
筋道を立てて考え、表現する子の育成
~算数科における言語活動を大切にし、学びを深める授業をめざして~
研究仮説
言語の能力を育むことを目指した言語活動を行えば、他者とともに学びを
深められ、筋道を立てて考え、表現する力を育むことができるだろう。
授業づくりの重点
算数の言語の能力を高める授業
対話や交流で学びを深める授業
視点 1
課題と対話するための
言語活動
【書く・描く】
数学的な考えを
引き出す算数的活動
学級づくり
学びの土台
基礎学力
学習スキル
学習規律
家庭生活
視点 2
考えを深めるための
言語活動
【話す・聴く】
自己存在感
共感的人間関係の育成
自己決定の場
3
4.研究の方法
①
低学年・中学年・高学年・特別支援のブロック研究を基本とする。
②
学年で学期ごとに重点単元を設定し、その単元における目指す児童像を明確にし、研究の視点に基
づいて授業を行う。
③
重点単元でブロック研究授業を実施する。
④
全体研究授業は年 3 回実施する。(各ブロック 1 回)
⑤
ブロック研究授業、全体研究授業の整理会では研究の視点に沿って成果や課題について検討し、指
導法の工夫・改善を図る。
5.研究体制
低学年ブロック
中学年ブロック
学年毎に重点単元設定
学年毎に重点単元設定
ブロック研究授業 3 回
ブロック研究授業 3 回
提案
提案
工夫・改善
全体研究授業
工夫・改善
低・中・高 1 回ずつ
全体事前研・全体整理会
高学年ブロック
提案
工夫・改善
工夫・改善
少人数を活かして
特別支援ブロック
児童の実態に沿って
学年毎に重点単元設定
ブロック研究授業 2 回
ブロック研究授業 3 回
4
6.その他
①指導過程
いしかわオリジナル授業デザイン
児童
つ
い ま考えることは何かな
○
か 1「学習問題」を知る
む ・問いが生まれる
・意欲を高める
・
2「課題」をつかむ
見 ・本時の課題が焦点化される
通 3見通しをもつ
す ・結果の見通し
・方法の見通し
考
指導者
視点1
5分
1「学習問題」の提示
・意欲化をはかる提示の仕方の工夫
・既習との対比
2課題の決定
・児童の問いや意欲を重視
3見通しの支援
・予想 「どれくらいになりそうか」
・既習の活用「何がつかえそうか」
し っかり考えよう
○
え 4自力解決をする
る ・数、式、図、表、グラフなどで自分の
考えを表現する
授業づくり
10 分
4自力解決の支援
・ヒントカード、ヒントコーナーの工夫
・学習形態の工夫
課題と対話する
ための言語活動
問いや課題をも
つための言語活
動
話す・聞く
自力で課題を解
決するための言
語活動
書く・描く
視点2
か かわりあって深めよう
○
深 5考えを話し合う
め ・相手を意識した表現
ノートや提示物(発表ボード、発表用
る
紙など)の活用
具体物や半具体物の操作
話し方
・話し手に対する反応
20 分
5話し合いにより考えを深める
・ペア、グループ、全体等の学習形態
・話し合いの視点の明確化
・復唱、他者発表
・ねらいに関わる発言への問い返し
「ゆさぶり」
「ひろめる」「ふかめる」
10 分
6学習課題の解決
・課題につながるまとめ
・本時の学習過程をいかしたまとめ
7ふりかえり、適用問題に取り組ませる
・児童の学びの実態をみとる
・ねらいに沿った質の高い適用問題
5
他者とかかわり、
考えを深めるた
めの言語活動
話す・聞く
自分の学びを再
確認するための
言語活動
わ かったことは何かな
○
ま
と
め 6話し合いでわかったことをまとめる
る ・板書やノートから課題解決の結果をま
とめる
7ふりかえりや適用問題をする
・学習過程を自分の言葉でねらいに沿っ
て表現
(意欲)→「努力した」
(知・理)→「わかった」
(技能)→「できた」
(思考・判断)→「工夫した」
「生かした」
・学びを次時につなげる
考えを深めるた
めの言語活動
書く
②授業の検証
(1)授業観察シートの活用について
授業を授業者および参観者で評価することで、課題を改善に活かす。
授業観察シート
日時
月
学
年
単元名
授業者
参観者
日
限
以下の各項目を評価する
授 視点 1
業 課題と対話する
者 ための言語活動
~書く・描く~
の
指
導
支
視点 2
援 考えを深めるため
の の言語活動
様 ~話す・聴く~
子
児童の様子
評価項目
評価
①
課題の把握
◎○△
②
見通す
◎○△
③
自力解決
◎○△
④
全体交流
評価の理由
◎○△
⑤
まとめ
◎○△
⑥
学習規律
◎○△
⑦
学ぶ意欲
◎○△
⑧
書くこと
◎○△
⑨
話す
◎○△
⑩
聞く
◎○△
(2)児童生徒による授業評価及び「教師による授業づくり・ふりかえりシート」
算数科・道徳で年 7
回を目安に実施し、
授業の点検と改善
点の検討を行い、次
からの授業にいか
す。
1
道徳(学期に 1 回)
6、10 2月
算数科(学期に2回)
5,7,11,12月
児童による授業評価
教師による授業評価
6
③ノートの書き方
・ノートは、見開きにして 2 ページを 1 時間の学習にあてる
・学習の流れに沿って左ページに「学習課題」
「自分の考え・友達の考え」右ページに「まとめ」
「適用
問題」
「ふりかえり」を書く。
・赤鉛筆(赤ペン)
・定規で囲む
月/日
<
<
学習課題
>
ま
○
>は赤鉛筆
・課題との整合性をもたせて
自
○
・自分たちの言葉で
自分の考え
・思考の過程、理由などを表す
・他を意識、他を納得させるこ
とを意識させる
・かく(書く・描く)ことにより
思考を洗練させる
・多様な表現様式を関連させる
(絵、図、言葉、式、グラフな
ど)
★個々の思考を把握し、全体交
流の流れを組み立てる
友
○
P45
1
□
ふ
○
適用問題、またはふりかえりか
ら本時の学習のめあての達成度
をみとる
・ふりかえりは青鉛筆(青ペン)
で囲む
□□さんの考え
④学習のやくそく10か条
・学習の構えとして以下の10項目を意識して、授業にのぞませる。
・重点項目の設定と評価・ふりかえり
学級ごとに10か条のなかでも未達成の項目を重点項目として取り組みを行い、ふりかえりを行う
研究部より重点項目を設定し、期間を決めて全校で一斉に取り組む
低学年
中・高学年
学しゅうのやくそく10かじょう
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
学習の約束10か条
元気なあいさつ
せ中は、ピン
右手も、ピン
へんじは「はい」
すすんではつげん
みんなにきこえるこえで
目・耳・心できこう
はなしは、さいごまで
字はていねいに
チャイムでじゅぎょうをスタート
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
7
大きな声であいさつ
正しいしせいで
挙手はまっすく
返事は「はい」
すすんで発言
みんなに聞こえる声で
目・耳・心で聴こう
わからないことは質問しよう
字はていねいに
チャイムと同時に授業スタート
⑤聞く話す
相手を意識して話したり、聞いたりすることで思考・表現・判断の力もさらに高まる。学級に掲示
をして常に意識させる。
きこう
はなそう
お え う い あ
わ が な い い
り お ず し 手
ま で き せ を
で
な い 見
が
て
ら
8