地球惑星科学基礎V演習 結晶⾯、晶帯軸、ステレオ投影、ブラッグ条件 第8回 瀬⼾雄介 http://pmsl.planet.sci.kobe-u.ac.jp/~seto さまざまな結晶の形状 Pyrite Calcite Corundum Quartz Tourmaline Beryl このような形態は、結晶の単位格⼦形状を反映したものである 単位格⼦と結晶外形 単位格⼦ 結晶の表⾯は単位格⼦が階段状に並んで、平滑な⾯を形作っている 結晶の「形状」を表現するためには単位格⼦を基準とした表現が必要 結晶における⽅向の表し⽅ • 結晶軸 a [u v w] : 単位格⼦ベクトル a, b, c をそれぞれ u, v, w 倍したベクトルの⽅向と⻑さで 定義される周期性 c b • 結晶⾯ a (h k l) : a/h h, k, l 等分している⾯集合の⾯間隔と ⾯の法線⽅向で定義される周期性 b/k b 単位格⼦ベクトル a, b, c をそれぞれ c/l c 結晶⾯とは • 結晶は、格⼦点を通る平⾏な⾯の集合と考えることができる • この集合を 結晶網⾯ (crystal net plane) という • 結晶の外形に現れる平滑な結晶⾯(crystal face)は、この網⾯の 終端が露出したものだと考えることができる 結晶⾯ (Miller指数 h k l ) 単位格⼦軸a, b, c に対してそれぞれa/h, b/k, c/l の点で交わる平⾯(P)と、原点との距離をdとしたと き、周期dで無限に並んでいてP⾯と平⾏な⾯の集合 a a/h a P b/k d b c/l c b, c ⾯の集合 = 結晶⾯ 回折における⾯とは結晶に内在する周期性 (⽅向と間 隔)を意味していて、ある⼀枚の⾯を指すものではない 結晶⾯の⾯指数の表わし⽅ その1 (hkl) 単位格⼦軸a, b, c を、それぞれh, k, l 等分している⾯の集合 この⾯は a を 2等分 b を 1等分 c を 0等分(c軸と交わらない) している b a d この⾯の指数は (2 1 0) c軸は紙⾯垂直⽅向 この⾯の⾯間隔は d 結晶⾯の⾯指数の表わし⽅ h, k , l などの表記は、それぞれ-h, -k, -l をあらわす (2 1 0) b その2 (2 1 0) b a a c c -a/2 a/2 a b a b • 原点に最も近い⾯はa, b, c 軸とそれぞれa/h, b/k, c/lで交わる • ⾯の(法線)⽅向: 原点から、⾯へ垂直におろしたベクトルの⽅向 • ⾯の間隔: 原点と、原点に最も近い⾯との間隔 さまざまな結晶⾯ (001) (100) a b (010) c (011) (111) Pyrite (FeS2) : ⽴⽅晶系 Corundum(Al2O3) : 六⽅晶系 a c ( 2 1 0) b c 120° b ( 2 1 0) ( 0 0 1) ( 1 0 -2) ( 1 0 2) ( 0 1 1) ( 1 0 1) ( 2 -1 0) ( 0 2 1) (-1 2 0) ( 1 1 0) ( 2 -1 0) a ⾯と軸の関係 • 結晶軸[p q r]の⽅向と結晶⾯(p q r)の法線⽅向は⼀般に⼀致しない c = [001] (001) b a • 結晶軸 [u v w]と結晶⾯ (h k l)が u∙h + v∙k + w∙l = 0 の関係にある とき、この軸と⾯の法線は直交する c c = [001] (010) (001) b a [110] a b 晶帯、晶帯軸とは • 指数の異なる2つの結晶(網)⾯の交線の⽅向を、それら の結晶⾯が属する晶帯軸という (001) (100) <010> • 共通の晶帯軸に属する結晶⾯の集合を晶帯という • ある晶帯軸[u v w]と、それに属する結晶⾯(h k l)は必ず u∙h + v∙k + w∙l = 0 という関係を持つ (ワイスの晶帯則) ステレオ 投影(等⾓投影) 球⾯上の真円は、ステレオネット上でも 真円になる (⾯積は保存されない) ⼤円/⼩円と極 ⼤円 (晶帯): 円の半径が球の半径 と⼀致する円 ⼩円: 円の半径が球の半径より ⼩さい円 極 (晶帯軸): ⼤円あるい は⼩円に垂直な⽅向 ステレオネットによる⽴⽅晶系の投影 ⽴⽅体 体対⾓線の⽅向 (3回軸) 点群 2 3 ○ ● ○ ○ 辺の⽅向 (2回軸) ●○ ●○ ● ○ ● ● ステレオネットの性質 – ⾓度が保存される (⾯積は保存されない) – 球⾯上の円はステレオネット上でも円である • ⼤円: 球の原点を通る平⾯と球⾯との交線 (経線に相当) • ⼩円:球の原点を通らない平⾯と球⾯との交線 (緯線に相当) – ⼤円や⼩円を作る平⾯は、原点を通りその平 ⾯に垂直な唯⼀の直線をもつ。これをその⼤ 円の「極」という。 結晶形状 (晶相)のステレオネット投影例 Corundum(Al2O3) : 六⽅晶系 ( -1 -1 0) ( 1 -2 0) c ( -1 0 1) ( 0 -1 1) (-2 1 0) ( 1 -1 1) 120° b a [-1 -1 0] ( 0 0 1) ( 101) (-1 2 0) ( 01 1) (110) (-1 1 1) ( 0 0 1) ( 2 -1 0) (-1 2 0) ( 2 -1 0) ( 1 0 1) ( 0 1 1) (110) 解析例 ⼆つの晶帯に属する結晶⾯を決めたい場合 ⼆つの結晶⾯が属する晶帯を決めたい場合 u1∙h + v1∙k + w1∙l = 0 を満たす⾯の集合 u2∙h + v2∙k + w2∙l = 0 を満たす⾯の集合 晶帯[u1 v1 w1] 結晶⾯(h2 k2 l2) 晶帯[u2 v2 w2] u1∙h + v1∙k + w1∙l = 0 u2∙h + v2∙k + w2∙l = 0 を同時に満たす⾯ (v1 w2 – v2 w1 , w1 u2 – w2 u1 , u1 v2 – u2 v1 ) 結晶⾯(h1 k1 l1) u∙h1 + v∙k1 + w∙l1 = 0 u∙h2 + v∙k2 + w∙l2 = 0 を同時に満たす晶帯 <k1 l2 – k2 l1 , l1 h2 – l2 h1 , h1 k2 – h2 k1 > 等価な⾯・軸 その1 • 結晶の対称性によって結びつけられる ・等価な結晶軸の集合を<u v w> ・等価な結晶⾯の集合を{h k l} と表す 例: ⽴⽅晶系ではa, b, c軸が等価なので <100> は [100] と[010]と[001]の集まり 例: 正⽅晶系ではc軸⽅向に4回回転軸があるので {120} は (120) と(210)と(120)と(210)の集まり c a =[100] c=[001] b =[010] b a 等価な⾯・軸 その2 • 結晶における結晶軸や結晶⾯は「周期性」である ⇒ 原点の位置に左右されない (平⾏移動しても性質が変 わらない) ⇒⾯や軸の等価性は、(空間群そのものではなく、そこから並進要 素を取り除いた)点群によって決まる 点群 4/m, {100}, {110}, {001} に囲まれた結晶 (001) (213) (-123) (123) (2-13) (-132) (132) (3-12) (312) (010) (110) (100) 点群 m3m, {123}に囲まれた結晶 (3-21) (321) (231) (3-2-1) (110) (32-1) (23-1) (13-2) (3-1-2) (31-2) (21-3) (12-3) ⽴⽅晶系 m3m の晶癖変化 ① {100} {012} {111} {112} {110} {122} {123} ⽴⽅晶系 m3m の晶癖変化 ② {100} {111} {110} 結晶における回折現象 結晶は規則正しく並んだ原⼦でできている – 原⼦の⼤きさは~0.1nm 結晶中の原⼦ひとつを直接⾒ることのできる 実験装置は存在しない 「回折」という現象を利⽤する ⼲渉縞 スリット スリット 光源 光源からの光路差によって⼲渉縞があらわれる •広義の回折 光や⾳が障害物などをかすめたとき幾何 学的に直進しないで,影の部分にまわり こむ現象 •結晶における回折 原⼦によって散乱された波(X線,電⼦線, 中性⼦線)が、ある特定の条件(ブラッグ 条件)を満たす⽅向に強めあう現象 X線は軌道電⼦によって散乱される 軌道電⼦ X線 原⼦核 直進⽅向に強く散乱する X線 特定の⽅向に強く散乱する 2d sin(θ) = λ 光路差 ⼊射波 波⻑ 反射波 λ θ θ 単位格⼦ d sin(θ) d 2d sin(θ) = λ λ 結晶⾯ λ θ2 d1 θ1 d2 結晶⾯ 単位格⼦ 結晶はさまざまな”結晶⾯”によって回折する 2d sin(θ) = λ 光路差 次数(任意の整数) 波⻑ 2d sin(θ) = n λ 光路差 θ dh k l d2h 2k 2l θ dhkl sin(θ) もし、2 dh k l sin(θ) = 2 λ だったら… 2 d2h 2k 2l sin(θ) = λ と考えても同じこと (h k l) ⾯によって2次の回折 = (2h 2k 2l)⾯によって1次の回折
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