米利上げは先送りで不透明感継続、だが買い場は近い?

平成 27 年 9 月 25 日
米利上げは先送りで不透明感継続、だが買い場は近い?
寄稿 / 長田清英 (東海東京調査センター シニア・グローバル・ストラテジスト)
内の利上げ開始を予想している。公表された年
米利上げ先送りで、「あく抜け」ならず
末の政策金利( フェデラルファンド(FF)レート )水準
16-17日( 水-木 )に開催されたFOMC( 米連邦
見通し(図表2)によれば、参加者17名中13名が
公開市場委員会 )では、利上げ開始が見送られる
年内1回以上の利上げを予想、残る4名が利上
こととなった(市場予想通り)。これを受け、米株市
げなし(何と1名は利下げ!)を見込んでいる。
場は会合後のイエレンFRB(米連邦準備度理事会)
一方、FFレート先物市場の価格形成に基づ
議長の記者会見のスタートとともに、一旦大きく
く市場参加者予想は、今年12月の利上げ開始
上昇したものの、その後は上げ幅を急速に縮
の確率が44.2%と50%を下回っており、利上げ
小した(図表1)。
は2016年に入ってからという見方がコンセンサ
<図表 1:
ダウ平均
スになりつつある( 9/17日時点、ブルームバーグによ
9/17 場中の推移>
る)。
声明文、およびFRBの
金利・経済見通し発表
ドル
16950
<図表2:
FOMC 参加者の年末の政策金利予想>
16900
16850
16800
1.75
破線の枠内のドットは、年内1回以上の利上げ
を予想するメンバーの数(13名)を示している。
1.50
ダウ平均
16750
1.25
16700
1.00
13名
0.75
16650
16600
9:30
%
イエレン議長の記者会見スタート
12:00
14.00
0.50
16:00
0.25
出所: ブルームバーグのデータを基に東海東京調査センター作成
0.00
-0.25
その背景には、①利上げ開始時期に関する
2015/9 FOMC
2015/6 FOMC
示唆がなされなかったこと、また②グローバル
出所: FRBのデータを基に東海東京調査センター作成
経済・金融市場の悪化・混乱が、米国の経済や
また、来年以降のFFレートの水準に対する
インフレ見通しに悪影響を与えうるとの見方が
FOMCと市場参加者との将来見通しの差を示し
今まで以上に明確に示されたことなどが挙げら
たものが図表3だ
れよう。マーケットとしては、米国内要因のみな
<図表3:
らず、海外の経済( 特に中国) や金融市場の動
上チャート: 6月時点でのFOMCメンバーの予想値(中央値)
中チャート: 9月時点でのFOMCメンバーの予想値(中央値)
下チャート: FFレート先物の利回り曲線
%
向を今まで以上に考慮せねばならず、利上げ
FF レート水準の将来見通し>
3.5
2.875
3.0
開始を巡る不透明感がかえって高まる結果とな
2.5
った。このことが、17日の米株市場の「微妙な反
2.625
2.0
1.625
1.5
応」につながったものと考えられる。
1.0
0.375
1.375
0.5
FOMC 参加者はまだ年内利上げが優勢
0.0
2015/9 2015/12
とはいえ、FOMC参加者の多くは引き続き年
1.305
0.625
市場参加者の
予想値
0.76
0.22
2016/12
2017/12
出所: FRB、ブルームバーグのデータを基に東海東京調査センター作成
- 1 -
2015/9/17 時点
平成 27 年 9 月 25 日
FOMC参加者の金利予想は、前回6月時点
期的な下値リスクはあるものの、中長期の投資
より下方にシフトしたものの、市場参加者の予
家にとってはそろそろ買いの機会が訪れている
想との間にはまだまだ大きな開きがあるのが現
とみることもできるだろう。
状だ。
何よりも不透明感の払拭が第一
買い場となることが多い 9-10 月
米国については、やはり利上げが実施される
米利上げ開始の見送りそのものは、足元の
ことが不透明感の払拭につながろう。利上げ開
米株相場にとって必ずしもマイナス材料という
始自体は株価にかなり織り込まれていると考え
訳ではない。大きな相場調整があった後だけ
られ、FRBが利上げ時に適切な説明(非常に緩や
に、この先ある程度の株価の戻りは十分に期待
かな利上げサイクルになる可能性が高いこと等)を行うこ
出来よう。一方、株式相場における最大の敵は
とで、「あく抜け」から市場が反発に向かうシナリ
何と言っても「不透明感の存在」である。今回の
オは十分ありうるものと見ている。(長田 清英)
利上げ開始の見送りは、結果的に当面の米株
相場の上値を抑える要因にもなると考えられ
る。
とはいえ、歴史的に見ればこの9-10月の時
期が株式の絶好の買い場となることが多い点は
念頭に置いておくべきだろう。実際、1970年1月
~2015年8月の期間におけるダウ平均の月別
騰落率の平均値を見ると、9月のパフォーマン
スの悪さが顕著となっている。経験則的には、9
月に株を仕込んで翌年の4-5月に売却するとい
うのが「勝算の高い投資」だということになる。
<図表4: ダウ平均・月別騰落率平均値>
%
期間: 1970/1 ~ 2015/8
2.5
1.96
2.0
1.5
1.09
1.01
1.0
1.75
1.33
0.87
0.52
0.51
0.5
0.15
0.0
-0.15
-0.5
-0.23
-1.0
-1.00
-1.5
1
2
3
4
5
6
7
8
出所: ブルームバーグのデータを基に海東京調査センター作成
9
10
11
12
月
米株市場には、「Sell in May, and go away;
don’t come back until St Leger day.(⇒5月に株
を売り、セントレジャーデー(9月第2土曜日、大きな競馬レ
ースが行われる日)まで戻るな)」という相場格言があ
る。今年のセントレジャーデーを過ぎた今、短
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平成 27 年 9 月 25 日
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