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【野の花・野草アート展】
私たちは幼少期より、四季折々の野の花や野草とともに暮らしてきました。
子供の頃、耳をふさいで逃げる友達を追いかけながら
たんぽぽの綿毛を吹き飛ばした春の終わり。
朝露のついた花を摘んでは、チューチューと蜜を吸ったラジオ体操の帰り道。
棘のたくさんついた実を投げ合って、寒さと日が暮れるのを忘れるほど遊んだあの頃。
自然とともにあった日々は懐かしく、思い出すだけで心温まる風景です。
今の私たちはどうでしょうか。
少しずつ思い出は薄れ、日々の暮らしに追われています。
それでも、野の草花たちは、春が訪れる度に電柱の足元から顔をのぞかせます。
都会の片隅で運よく花を咲かせ、小さな実をつけた野草たちが
コンクリートのわずかな隙間から、誰に見られることもなくそっと佇んでいます。
私たちは、こうした身近にある小さな自然を見つめ直して
可憐ながらも生命力に溢れた小さな野の花や野草の姿を
樹脂粘土へ細やかに映して、この都会で咲かせようと決心しました。
それが、
「樹脂粘土 野の花・野草アート協会」が発足したきっかけです。
私たちの作品から、日々の生活の中で忘れかけていた「大切なものは何か」を
感じ取っていただきたい。ほんのひと時、心豊かな時を持っていただきたい。
そんな思いでこの度、「野の花・野草アート展」を開催することとなりました。
そうした私たちの作品にご共感くださった富弘美術館のご協力のもと、
星野富弘さんの素晴らしい詩画とともに展示いたします。
~樹脂粘土野の花・野草アート展の開催によせて
【星野富弘さんの作品との出逢い】
子供のころ、道徳の授業で星野さんを知り、それから何十年も経っていました。
心の奥深くに強く印象に残ったまま、星野さんとの接点はありませんでした。
「野の花・野草アート」を始めてから、視点が変わっていったようです。
今まで、目にも留めなかった草花にも足を止めて、
しゃがんでまで覗き込むようになっていました。
そんななかで、星野富弘さんの本を思い出して、手に取りました。
改めて星野さんの詩画に触れたとき、やさしさと温かさ、そして人間の弱さと
強さを感じることができました。
昔は、空き地や原っぱも多く、私たちはどこを歩いても、
いつも野の草花に囲まれていたような気がします。
彼らは、過酷な生活環境を乗り切るために、小さな個体のままでも花をつけ
種子を作りだし、幾度となく踏まれても耐え抜ける特殊な能力を身につけています。
環境が大きく変わっても、生き抜く術を見出して
素のままそこに凛とたたずむ姿は、まるで星野さんのようです。
強い心を持ち、優しく温かく、そして何よりも美しい。
いつか、この思いを形にしたいと夢見ていたことが現実となりました。
来年 25 周年を迎える富弘美術館。
それに先立ち、このような素晴らしい機会を与えてくださった富弘美術館関係者の皆様に
心より感謝とお礼を申し上げます。
樹脂粘土野の花・野草アート協会
代表理事 小玉 智子