変化 −中編−

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変化 −中編−
[なぜ変化できないのか]
前回(Vol.23)、僕が考えた「変化の公式」を紹介しました。
変化(=成長)とは、まず反省からはじまる。
そこからどれだけ改善ができたか。
つまり反省分の改善こそが変化です。
しかし、誰もが実感しているように、自分を変化させることは極めてむずかしい行為です。
たとえ反省をしても、なかなか改善まではたどり着けません。
たとえば金曜の夜、部下と酒を飲みながら話をすれば、ある者は涙を流しながら
「わかりました、気をつけます」と深く反省をしてくれます。
でも、月曜日になるとやっぱり同じ失敗を繰り返すのです。
経営者としてこれまで幾度もそうした経験をしてきました。
これはいったいどうしてなのか。
言う側には徒労感ばかりが募り、いつしか失望という名のあきらめが生まれます。
人はなかなか変化することができない。
その原因をよくよく考えたとき、じつは顕在意識と潜在意識が大きく関わっているのではないか――
そのことにたどり着きました。
顕在意識とは自分で自覚できる心のことであり、潜在意識は自覚できない心、いわゆる無意識のことです。
反省とは言ってみれば自覚する行為です。
過ちを悔い、もう同じ行ないはしないと心に誓います。
しかし、それが改善に結びつくには、その反省が無意識の行動にまであらわれなくてはなりません。
つまり、顕在意識で行う反省を潜在意識にまで落とし込む必要があるのです。
たとえば、「こんどこそタバコをやめよう」という反省はまだ顕在意識のレベルです。
その一方で、潜在意識(無意識)はまだタバコを吸おうと欲するわけですから、
そこでいかに反省を強く持ち続け、潜在意識にまで落とし込めるかがカギとなります。
[変化の行き着く先は「自己実現」]
言うなれば、変化とは、身についた無意識の行動を、意識的に変えていくことです。
それは顕在意識と潜在意識の戦いです。
よく言う、「己に勝つ」とは、顕在が潜在に勝つことなのです。
たとえば、トップアスリートなどはその典型だといえます。
野球選手のイチローも、遊びたい、ラクをしたいという欲求(潜在)が最初は強かったはずです。
でも、彼は自分を律し、それに打ち克つことで偉業を成し遂げました。
顕在で潜在に勝つ。
イチローのように、それができた人間は皆魅力的です。
人間としてまぶしいほどの輝きを放っています。
そして、じつはそれこそが「自己実現」なのではないでしょうか。
自己実現とは、僕にとって極めてあいまいな言葉でした。
自己を実現する、といっても実際にはどういう意味か理解できない。
なぜ「自己」というふたりの自分がいるのだろうか。
自分は自分だし……ずっとそんな印象でした。
けれど、顕在と潜在の関係を考えたとき、その意味がパッと開けました。
自己実現とは、求める自分になることです。
求める自分とはつまり、「あんな人間になりたい」と顕在で求めている理想像です。
潜在に打ち克つことにより、その求める自分になること。
そのとき、顕在と潜在という分裂したふたりの「わたし」がいるのではなく、
顕在と潜在が一致したひとりの「わたし」がいる。
それこそが自己実現であり、変化の行き着く先にあるものだといえます。
次回、顕在と潜在の戦いから、変化の必要性と打ち克つ方法をお話したいと思います。
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