労働安全衛生法令MONTHLY - JACOのWebSite(日本環境認証機構)

<2015 年 9 月 29 日発行>
無断複写禁止
発行:㈱日本環境認証機構
<本 MONTHLY につきましては、都合により本号をもちまして終了させて頂きます。>
労働安全衛生法規制の制改正情報
(2015年8月1日~2015年8月31 日)
●労働安全衛生規則の一部を改正する省令、安全衛生特別教育規程の一部を改正する件
(2015/08/05 官報第 6589 号)
解説 ロープで労働者の身体を保持し、ビルの外装清掃やのり面保護工事などを行ういわゆる「ロープ
高所作業」については、従前よりビルメンテナンス業や建設業で行われていますが、当該作業において、
ロープの結び目がほどける、ロープが切れる等により墜落する死亡災害が発生しています。
このようなことから、
「ブランコ作業における安全対策検討会」
(厚生労働省労働基準局安全衛生部長開
催)報告書(平成 27 年 4 月)を踏まえ、ロープ高所作業における労働災害を防止するため、労働安全
衛生規則の改正を行うものです。
施行期日:2016 年 1 月 1 日(特別教育については 2016 年 7 月 1 日から適用)
<「ロープ高所作業」を行う事業者の方へ>
●「ロープ高所作業」の定義が明確にされました。また当該作業を行う場合には、ライフラインの設置、
メインロープ等の強度等確保、調査及び記録、作業計画策定、作業指揮者の選任、特別教育の実施他
の必要な措置を講じることと規定されました。
⇒ 2016 年 1 月 1 日より実施する必要があります。(特別教育については 2016 年 7 月 1 日)
1.ロープ高所作業の定義 (規則第 539 条の 2)
「高さが2メートル以上の箇所であって作業床を設けることが困難なところにおいて、昇降器具(労働
者自らの操作により上昇し、又は下降するための器具であって、作業箇所の上方にある支持物にロープ
を緊結してつり下げ、当該ロープに労働者の身体を保持するための器具。
)を用いて、労働者が当該昇
降器具により身体を保持しつつ行う作業(40 度未満の斜面における作業を除く。)」と定義されました。
2.ライフラインの設置 (規則第 539 条の 2)
ロープ高所作業を行うときは(以下各項同じ)
、身体保持器具を取り付けたロープ(「メインロープ」
)
以外のロープであって、安全帯を取り付けるためのもの(「ライフライン」
)を設けなければならないこ
ととされました。
3.メインロープ等の強度等 (規則第 539 条の 3)
(1)メインロープ、ライフライン、これらを支持物に緊結するための緊結具、身体保持器具及びこれを
メインロープに取り付けるための接続器具(
「メインロープ等」)については、十分な強度を有する
ものであって、著しい損傷、摩耗、変形又は腐食がないものを使用しなければならないこととされ
ました。
(2)メインロープ、ライフライン、身体保持器具については、次に定める措置を講じなければならない
こととされました。
①メインロープ、ライフラインは、作業箇所の上方にある堅固な支持物に緊結すること。この場合、
メインロープとライフラインは、それぞれ異なる支持物に、外れないように確実に緊結すること。
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<2015 年 9 月 29 日発行>
②メインロープ、ライフラインは、ロープ高所作業に従事する労働者が安全に昇降するため十分な長
さのものとすること。
③突起物のある箇所その他の、接触することによりメインロープ又はライフラインが切断するおそれ
のある箇所(
「切断のおそれのある箇所」
)に覆いを設ける等これらの切断を防止するための措置(「切
断防止措置」
)を講ずること。
④身体保持器具は、メインロープに①の接続器具を用いて確実に取り付けること。
4.調査及び記録 (規則第 539 条の 4)
墜落又は物体の落下による労働者の危険を防止するため、あらかじめ、当該作業に係る場所について次
の事項を調査し、その結果を記録しておかなければならないこととされました。
①作業箇所及びその下方の状況
②メインロープ、ライフラインを緊結するためのそれぞれの支持物の位置、状態、その周囲の状況
③作業箇所及び②の支持物に通ずる通路の状況
④切断のおそれのある箇所の有無並びにその位置及びその状態
5.作業計画 (規則第 539 条の 5)
(1)あらかじめ前項調査に基づき作業計画を定め、計画に沿って作業を行わなければならないこととさ
れました。
(2)また作業計画には次の事項を記載し、関係労働者にも周知しなければならないこととされました。
①作業の方法及び順序
②作業に従事する労働者の人数
③メインロープ及びライフラインを緊結するためのそれぞれの支持物の位置
④使用するメインロープ等の種類及び強度
⑤使用するメインロープ及びライフラインの長さ
⑥切断のおそれのある箇所及び切断防止措置
⑦メインロープ及びライフラインを支持物に緊結する作業に従事する労働者の、墜落による危険を防
止するための措置
⑧物体の落下による、労働者の危険を防止するための措置
⑨労働災害が発生した場合の応急の措置
6.作業指揮者 (規則第 539 条の 6)
作業を指揮する者を定め、その者に前項作業計画に基づき作業の指揮を行わせるとともに、次の事項を
行わせなければならないこととされました。
①メインロープ、ライフライン、身体保持器具について定められた措置が講じられているかどうかに
ついて点検すること。
②作業中、安全帯及び保護帽の使用状況を監視すること。
7.安全帯の使用・保護帽の着用 (規則第 539 条の 7・8)
(1)労働者に安全帯を使用させ、保護帽を着用させなければならないこととされました。
(2)安全帯は、ライフラインに取り付けなければならないこととされました。
(3)労働者は、安全帯の使用、保護帽の着用を命じられたときは、これに従わなければならないことと
されました。
8.作業開始前点検 (規則第 539 条の 9)
その日の作業を開始する前に、メインロープ等、安全帯及び保護帽の状態について点検し、異常を認め
たときは、直ちに、補修し、又は取り替えなければならないこととされました。
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<2015 年 9 月 29 日発行>
9.ロープ高所作業に係る業務に従事する労働者に対する特別教育 (規則第 36 条、告示第 23 条)
事業者が労働者に特別の教育を行わなければならない業務に、ロープ高所作業に係る業務を追加されま
した。
「学科教育」
①ロープ高所作業に関する知識 1時間
②メインロープ等に関する知識 1時間
③労働災害の防止に関する知識 1時間
④関係法令 1時間
「実技教育」
①ロープ高所作業の方法、墜落による労働災害の防止のための措置、安全帯、保護帽の取扱い 2時間
②メインロープ等の点検 1時間
10.施行期日
2016 年1月1日(ただし、特別教育については 2016 年7月1日から適用する)
11.経過措置
ビルクリーニングの業務に関する作業またはのり面保護工事に関する作業以外の作業については、必要
な墜落防止措置を講じた場合に限り、当分の間、2項のライフラインの設置の義務は適用しないことと
されました。
<参考資料(ホームページ)のご紹介>
●厚生労働省ホームページ
「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」について労働政策審議会から妥当との答申があ
りました
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000088923.html
●厚生労働省通達
ロープ高所作業における危険の防止を図るための労働安全衛生規則の一部を改正する省令等の施行
について(平成 27 年 8 月 5 日 基発 0805 第 1 号)
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T150805K0010.pdf
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<2015 年 9 月 29 日発行>
●粉じん障害防止規則及びじん肺法施行規則の一部を改正する省令
(2015/08/10 官報第 6592 号)
解説 粉じん障害防止規則は、
「粉じん作業」に従事する労働者の健康障害を防止するため、事業者に
作業場の換気等の各種措置を義務付けています。
その一環として現在、砂型を用いて鋳物を製造する工程において、砂型を壊す場所等における作業等を
「粉じん作業」として指定し、粉じんにばく露することによる健康障害を防止するための一定の措置を
義務付けており、また、当該作業のうち、一定の作業に従事する労働者に呼吸用保護具を使用させるこ
とを義務付けられております。
今般、現在は「粉じん作業」に指定されていない砂型の造型に係る作業における粉じんばく露のリスク
について検討がなされ、平成 26 年 8 月に「鋳物工場での砂型造形作業における粉じんばく露リスクの
調査研究報告書」が取りまとめられました。
当該報告書を踏まえ、
「粉じん作業」及び呼吸用保護具を使用しなければならない作業の範囲を見直す
ため、粉じん障害防止規則及びじん肺法施行規則について所要の改正を行うものです。
施行期日:2015 年 10 月 1 日
<「砂型を用いて鋳物を製造」する事業者の方へ>
●「砂型を造形する場所における作業」が新たに「粉じん作業」として追加されました。また「砂型を
造形する作業」が新たに「労働者に呼吸用保護具を使用させなければならない作業」として追加され
ました。
⇒ 2015 年 10 月 1 日より実施する必要があります。
1.「粉じん作業」の追加 (粉じん障害防止規則別表第 1、じん肺法施行規則別表)
「砂型を造形する場所における作業」が新たに「粉じん作業」として追加されました。
これに伴い、各々以下についての対応が必要となります。
(1)粉じん障害防止規則
以下について対応が必要となります。
①換気の実施(第 5 条)
全体換気装置による換気の実施又はこれと同等以上の措置を実施しなければならない。
②休憩設備(第 23 条)
粉じん作業を行う作業場以外の場所に休憩設備を設けなければならない。休憩設備には労働者が作
業衣等に付着した粉じんを除去することのできる用具を備え付けなければならない。
③清掃の実施(第 24 条)
粉じん作業を行う屋内の作業場所については、毎日 1 回以上、清掃を行わなければならない。
粉じん作業を行う屋内作業場の床、設備等及び休憩設備が設けられている場所の床等(屋内のもの
に限る。
)については、たい積した粉じんを除去するため、1 月以内ごとに 1 回、定期に、真空掃除
機を用いて、又は水洗する等粉じんの飛散しない方法によつて清掃を行わなければならない。
(2)じん肺法
じん肺法全体が適用となり、じん肺健康診断他各種規定に対応が必要となります。
2.「労働者に呼吸用保護具を使用させなければならない作業」の追加 (粉じん障害防止規則別表第 3、第 27 条)
「砂型を造形する作業」が新たに「労働者に呼吸用保護具を使用させなければならない作業」として追
加されました。
これに伴い、
「当該作業に従事する労働者に有効な呼吸用保護具を使用させなければならない。」と言う
規定についての対応が必要となります。
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<2015 年 9 月 29 日発行>
<参考資料(ホームページ)のご紹介>
●経済産業省 パブリックコメント(2015/6/01)
「粉じん障害防止規則及びじん肺法施行規則の一部を改正する省令案に関する意見募集について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495150038&Mode=0
●粉じん障害防止規則及びじん肺法施行規則の一部を改正する省令の施行について(平成 27 年 8 月 10
日 基発 0810 第 1 号)
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T150810K0140.pdf
●労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令
(2015/08/12 官報第 6594 号)
解説 労働安全衛生法施行令は、がんその他の重篤な健康障害を生ずるおそれのある物質である特定化
学物質について具体的に規定し、特定化学物質を製造し、又は取り扱う事業者については、労働安全衛
生法に基づき作業主任者の選任、特別の健康診断の実施等を義務付ける規制を行っています。
今般、ナフタレン及びリフラクトリーセラミックファイバーについては、「化学物質による労働者の健
康障害防止措置に係る検討会」及び「労働安全衛生法における特殊健康診断等に関する検討会」におけ
る議論を踏まえ、特定化学物質として規定する等所要の改正を行うものです。
施行期日:2015 年 11 月 1 日
<「ナフタレン」または「リフラクトリーセラミックファイバー」を取り扱う事業者の方へ>
●ナフタレン及びリフラクトリーセラミックファイバーが新たに「特定化学物質」として追加されまし
た。これに伴い、作業主任者の選任、作業環境測定の実施、特殊健康診断の実施を行う必要がありま
す。また「譲渡又は提供時に名称等を表示すべき物」にも追加されました。譲渡又は提供時に名称等
を表示する必要があります。
⇒ 2015 年 11 月 1 日より実施する必要があります。
1.「特定化学物質」への追加 (労働安全衛生法施行令別表第 3)
「ナフタレン及びリフラクトリーセラミックファイバー」が、新たに「特定化学物質 第二類物質」と
して追加されました。
これに伴い、以下についての対応が必要となります。
(1)作業主任者の選任(労働安全衛生法施行令第 6 条、労働安全衛生法第 14 条)
都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了
した者のうちから、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生
労働省令で定める事項を行わせなければならない。
(2)作業環境測定の実施(労働安全衛生法施行令第 21 条、労働安全衛生法第 65 条、第 65 条の 2)
有害な業務を行う作業場について、必要な作業環境測定を行い、及びその結果を記録しておかなけ
ればならない。
作業環境測定の結果の評価に基づいて、労働者の健康を保持するため必要があると認められるとき
は、施設又は設備の設置又は整備、健康診断の実施その他の適切な措置を講じなければならない。
(3)健康診断の実施(労働安全衛生法施行令第 22 条、労働安全衛生法第 66 条)
有害な業務に従事する労働者に対し、医師による特別の項目についての健康診断を行なわなければ
ならない。過去に当該業務に従事し、現在も使用する労働者に対しても同じ。
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<2015 年 9 月 29 日発行>
2.「譲渡又は提供時に名称等を表示すべき物」への追加 (労働安全衛生法施行令第 18 条、労働安全衛生法第 57 条)
「ナフタレン及びリフラクトリーセラミックファイバー」が、新たに「譲渡又は提供時に名称等を表示
すべき物」として追加されました。
これに伴い、以下についての対応が必要となります。
(1)表示等
爆発性の物、発火性の物、引火性の物その他の労働者に危険を生ずるおそれのある物、若しくは労働者
に健康障害を生ずるおそれのある物を容器に入れるか、または包装して、譲渡、または提供する者は、
その容器または包装に、次に掲げるものを表示しなければならない。
① 名称
② 成分
③ 人体に及ぼす作用
④ 貯蔵又は取扱い上の注意
⑤ その他、厚生労働省令で定める事項
<参考資料(ホームページ)のご紹介>
●参考資料(ホームページ)
:厚生労働省新聞発表資料(2015/7/24)
「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案要綱」と「労働安全衛生規則等の一部を改正する
省令案要綱」の諮問と答申~ナフタレンとリフラクトリーセラミックファイバーを特定化学物質と
して規制します~
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000091530.html
●参考資料(ホームページ)
:経済産業省 パブリックコメント(2015/6/18)
「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案に係る意見募集について」
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495150054&Mode=0&from
PCMMSTDETAIL=true
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<2015 年 9 月 29 日発行>
●2015年 8 月1日~2015年8月31 日までに公布された労働安全衛生法規制 一覧
□ 電気事業法の規定に基づく主任技術者の資格等に関する省令第一条の三の規定に基づき、学校の認定を取り消した
件(2015/08/04 官報第 6588 号)
□ クレーン等安全規則第二百二十四条の四第二項第四号等の規定に基づき厚生労働大臣が定める者の一部を改正する
件(2015/08/04 官報第 6588 号)
●参考資料(ホームページ):経済産業省 パブリックコメント(2015/6/17)
「クレーン等安全規則第 224 条の4第2項第4号等の規定に基づき厚生労働大臣が定める者の一部を改正する件」
等に係る意見募集について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495150051&Mode=0
□ 労働安全衛生規則の一部を改正する省令(2015/08/05 官報第 6589 号)
□ 安全衛生特別教育規程の一部を改正する件(2015/08/05
官報第 6589 号)
□ 消防法施行規則第四条の六第四項に規定する登録確認機関の代表者の氏名の変更に関する件(2015/08/06
6590 号)
□ 粉じん障害防止規則及びじん肺法施行規則の一部を改正する省令(2015/08/10
□ 労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(2015/08/12
官報第
官報第 6592 号)
官報第 6594 号)
□ 消防法施行規則第四条の六第四項に規定する登録確認機関の代表者の氏名の変更に関する件(2015/08/13
6595 号)
官報第
□ 電気事業法第六十九条第一項の規定に基づく登録安全管理審査機関の登録の更新をした件(2015/08/14
6596 号)
官報第
□ 電気事業法第六十九条第一項の規定に基づく登録安全管理審査機関の登録の更新をした件(2015/08/26
6604 号)
官報第
□ 電気事業法の規定に基づく主任技術者の資格等に関する省令第一条の三の規定に基づき、学校の認定を取り消した
件(2015/08/28 官報第 6606 号)
□ 電気事業法第七十四条の規定に基づく登録安全管理審査機関の審査の業務の一部を休止する届出があった件
(2015/08/28 官報第 6606 号)
□ 電気事業法等の一部を改正する等の法律の一部の施行期日を定める政令(2015/08/28 官報号外第 194 号)
□ 電気事業法施行令等の一部を改正する政令(2015/08/28 官報号外第 194 号)
□ 電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令(2015/08/31 官報号外第 197 号)
□ 電気事業法施行規則等の一部を改正する省令(2015/08/31
官報号外第 197 号)
□ 電離放射線障害防止規則第七条の二第二項第一号の規定に基づき厚生労働大臣が定める事象(2015/08/31
外第 197 号)
凡例)□
:
官報号
貴組織で関係する法規制にチェックするなどにご利用ください。
太字: 解説が前方ページにありますのでご覧ください。
掲載されている労働安全衛生法令の制改正情報、及びその他情報は、十分注意して作成しておりま
すが、ご利用になられる場合は、官報等の情報をご確認ください。
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<2015 年 9 月 29 日発行>
労働安全衛生ワンポイント
●今月のワンポイントは、2015 年 8 月 6 日付の厚生労働省通達「平成 27 年下半期の安全衛生対策の推
進について」から、国の重点施策ポイント等を解説いたします。
<「平成 27 年下半期の安全衛生対策の推進について」>
1.序文
労災発生状況は昨年上半期に大幅増であったことから 8 月に緊急対策を行った結果、下半期は減少した
ものの、通期では増加。本年上半期は昨年下半期に引き続き減少傾向にはあると分析しています。
これに対し、業務上疾病の被災状況については、災害こそ減少傾向にあるものの死傷者数は増加。加え
て昨年は精神障害の労災支給決定件数が過去最高となるなど、職場におけるメンタルヘス対策や過重労
働が重要な課題となっており、さらに、化学物質による眼等の薬傷・やけどなど、保護眼鏡等の基本的
な保護具着用があれば予防できる重篤災害も依然として発生していることを課題としてあげています。
このような状況を踏まえ、平成 27 年下半期の重点取組実施項目を以下の通りとしています。
2.業種横断対策
特定の業種に限定しない、全体的な重点対策として、6 項目を挙げています。
(1)腰痛予防対策
(2)化学物質対策
(3)過重労働・メンタルヘルス対策
(4)安全衛生優良企業公表制度の推進
(5)転倒防止対策
(6)交通労働災害防止対策
⇒(2)項及び(3)項については、過去のワンポイントでもご紹介した 2014 年 6 月 25 日公布の労働安全衛
生法改正の中心となる項目であり、序文での課題とも一致するものです。
⇒これに対し、(1)項「腰痛予防対策」
、(5)項「転倒防止対策」、(6)項「交通災害防止対策」について
は、従来より各職種共通の課題として取り上げられていたものであり、現在でもこれらに関する事故
が多いことの裏返しであると考えられます。
⇒特に以下のようなリーフレット類を準備し、指導体制を強化するようです。
・
「職場における腰痛予防対策指針」リーフレット(今後配布)を活用して、製造業、陸上貨物運送業、
小売業に対する指導を実施
・
「転倒災害防止対策」の特設サイト周知用リーフレット(8 月配布)による指導
・
「交通労働災害防止のためのガイドライン」周知用リーフレットによる運輸交通業以外の業種に対す
る安全対策を推進
3.重点業種対策
上記の他、第 12 次労働災害防止計画(12 次防)重点業種ごとに個別の取り組みを行うとしています。
(1)製造業対策
①機械の本質安全化を図るためのリーフレットを活用した指導
②荷役作業における労働災害防止対策(荷主事業主による安全対策)
③重量物取扱い作業、立ち作業、座り作業での腰痛予防対策
④メンタルヘルス対策
⑤化学物質対策
⑥暑熱期の熱中症の予防対策
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<2015 年 9 月 29 日発行>
(2)建設業対策
①足場に係る改正労働安全衛生規則の円滑な施行による墜落・転落防止対策の徹底
②交通災害防止対策
③暑熱期の熱中症予防対策
(3) 陸上貨物運送事業対策
①荷役作業における労働災害防止対策
②過重労働による健康障害防止対策
③メンタルヘルス対策
④重量物取扱い作業、車両運転等の作業での腰痛予防対策
(4)小売業
①重量物取扱い作業、立ち作業での腰痛予防対策
②荷役作業における労働災害防止対策(荷主事業主による安全対策)
(5)社会福祉施設
①介護作業での腰痛予防対策
②メンタルヘルス対策
(6)飲食店
①バックヤードの作業に着目した4S(整理/整頓/清掃/清潔)活動やKY(危険予知)活動の普及
②業界団体や災防団体との連携による、学生アルバイトなど未熟練労働者に対する教育の充実
③中央労働災害防止協会が厚生労働省補助事業として実施している「中小規模事業場安全衛生サポー
ト事業」
(無償)の活用
⇒各業界毎に、国が課題と認識している事項が良くわかる内容となっています。
自社の取り組み方針の参考にされてはいかがでしょうか。
<通知及び参考資料(ホームページ)のご紹介>
●平成 27 年下半期の安全衛生対策の推進について(平成 27 年 8 月 6 日 基発 0806 第 1 号)
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T150817K0010.pdf
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<2015 年 9 月 29 日発行>
厚労省からの通知・ガイドライン
(2015年8月1日~2015年 8 月31日)
●労働安全衛生法施行令及び厚生労働省組織令の一部を改正する政令等の施行について(化学物質等の表
示及び危険性又は有害性等の調査に係る規定等関係)(平成 27 年 8 月 3 日 基案案発 0803 第 2 号)
概要「労働安全衛生法の一部を改正する法律」(2014 年 6 月 25 日公布)及び、「労働安全衛生法施行
令及び厚生労働省組織令の一部を改正する政令」(同)により、化学物質等の危険性又は有害性等の調
査(「リスクアセスメント」)の義務化、及び化学物質等の譲渡又は提供時の名称等表示義務の対象と
なる物質の拡大が規定されましたが、それらの細部事項等が補足されたものです。
主な内容
1.表示対象物の範囲の拡大等について (法第 57 条、令第 18 条関係)
法第 57 条ただし書で、容器又は包装に表示をしなくても良いものとされた「主として一般消費者の生
活の用に供するためのもの」は、以下のものとする。
①「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に定められている医薬品、
医薬部外品及び化粧品
②農薬取締法に定められている農薬
③労働者による取扱いの過程において、固体以外の状態にならず、かつ粉状又は粒状にならない製品
④表示対象物が密封された状態で取り扱われる製品
⑤一般消費者のもとに提供される段階の食品
2.リスクアセスメント等について
(法第 28 条の 2)
(1)主として一般消費者の生活の用に供される製品について
前項の通り、表示義務及び文書(SDS)交付義務の対象から除かれていることから、リスクアセスメ
ントの対象からも除くこととした。
(2)リスクアセスメントの実施時期等
従来から取り扱っている物質を従来どおりの方法で取り扱う作業については、施行時点においてリ
スクアセスメントの義務の対象とはならないが、過去にリスクアセスメントを行ったことがない場
合等には、事業者は計画的にリスクアセスメントを行うことが望ましいとした。この場合の従来ど
おりの方法とは、作業手順、使用する設備機器等に変更がないことをいう。
<通知及び参考資料(ホームページ)のご紹介>
●労働安全衛生法施行令及び厚生労働省組織令の一部を改正する政令等の施行について(化学物質等の
表示及び危険性又は有害性等の調査に係る規定等関係)
(平成 27 年 8 月 3 日 基案案発 0803 第 2 号)
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T150805K0050.pdf
●その他 厚生労働省 労働基準局からの通知・ガイドライン一覧
□ 最大荷重が 1 トン以上のフォークリフト運転等の業務に就くことができる者として厚生労働省労働基準局長が定める
者について(平成 27 年 8 月 4 日
基発 0804 第 4 号)
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T150805K0030.pdf
□ クレーン等安全規則第 224 条の4第2項第4号等の規定に基づき厚生労働大臣が定める者の一部を改正する件につ
いて(平成 27 年 8 月 4 日
基発 0804 第 3 号)
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T150805K0020.pdf
掲載されている通知・ガイドライン情報は、十分注意して作成しておりますが、ご利用になられる
場合は、各省庁等から発行されている情報をご確認ください。
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<2015 年 9 月 29 日発行>
労働災害ニュース
(2015年8月1日~2015年8月31 日)
労災事故事例として最近の主な報道内容をまとめました。
その中でも、特に留意が必要な事故について詳細をご紹介します。
(氏名や住所等の個人情報は、記載を控えさせていただいております)
1.
「元請けに迷惑をかけられない」と労災事故報告せず、元事業所長ら書類送検(2015/8/6
産経新聞)
舞鶴労働基準監督署は 5 日、社員が労災事故で休業したにもかかわらず報告書を提出しなかったとして、労働安全衛生
法(報告義務)違反容疑で、船舶電気艤装工事会社と、同社舞鶴事業所の元事業所長(71)を、地検舞鶴支部に書類送
検した。
同署によると、元事業所長は平成 25 年 11 月 27 日、京都府舞鶴市余部下の同事業所船舶電機艤装工事現場で、当時 44
歳の男性社員が溶接作業中にやけどを負い 4 日間休業したにもかかわらず、同労基署に労働者死傷病報告書を提出しな
かったとしている。
今年 5 月初旬、休業した男性社員が同労基署に相談した。元事業所長らは「元請けに迷惑をかけたくなかった」などと、
話しているという。
2.夫の過労死は「労働時間過少申告のため」と提訴(2015/8/7
毎日放送)
システムエンジニアの夫が自殺したのは自己申告制の勤務体系で長時間労働を強いられたためとして、妻らが夫の勤務
先に損害賠償を求める訴えを起こしました。
訴えによりますと、大阪市のシステム開発会社でシステムエンジニアとして働いていた 57 歳の男性は、単身赴任先の
東京でうつ病を発症し、去年 1 月、マンションから飛び降り自殺しました。
これは男性がうつ病になる数か月前の勤務管理票です。
9 時から 21 時など切りのいい数字が並びひと月の残業時間は 20 時間から 89 時間となっています。
しかし、この会社の労働時間は自己申告制で、労働基準監督署が調べた結果、実際の残業時間は月に 127 時間から 170
時間だったことがわかりました。
男性は労災認定されています。
男性の妻らは「労働時間の過少報告を余儀なくされ、長時間労働を強いられた結果、過労でうつ病になり自殺した」と
して会社側に総額 1 億 4 千万円の損害賠償を求めています。
「労働時間を適正に把握する義務というのがあるんじゃないか。会社の使用者としての安全配慮義務の内容を問いたい」
会社の代理人弁護士は「訴状が届いていないのでコメントできない」としています。
3.福島第 1 で作業員死亡=車両タンクに挟まれ―東電(2015/8/8
時事通信)
東京電力は 8 日、福島第 1 原発で協力企業の男性作業員(52)が汚染水対策の工事で使われたバキュームカーのタンク
のふたに頭を挟まれ、搬送先の病院で死亡したと発表した。
東電は今後、状況をみて作業を中断し、安全点検を行うという。
東電によると、死亡した作業員は 2 次下請け企業に所属。8 日午前 6 時 25 分ごろ、汚染水対策として準備が進められ
ている「凍土遮水壁」の工事で使われたバキュームカーを清掃中、タンクのふたに頭を挟まれた。
別の作業員がふたを閉める操作を行っていたといい、福島県警が原因などを調べている。
凍土遮水壁は高濃度汚染水がたまった建屋に流入する地下水を減らすため、地中を凍らせて氷の壁を造る計画で、経済
産業省と東電、鹿島が中心となって進めている。
第 1 原発では昨年 3 月、作業員が土砂の生き埋めになって死亡したほか、今年 1 月には雨水をためるタンクから作業員
が落下し、死亡する事故が起きている。
東電は「心からご冥福をお祈り申し上げる。原因を詳細に調査し、再発防止に努める」などとするコメントを発表した。
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<2015 年 9 月 29 日発行>
4.精神障害で労災認定、高止まり
神奈川労働局まとめ(2015/8/13 産経新聞)
仕事上のストレスなどが原因で、うつ病などの精神障害を発症して労災認定された件数が、県内で高止まりしている。
神奈川労働局のまとめでは 4 年連続で 30 件以上を記録しており、2014 年度は統計を取り始めた 1999 年度以降 3 番目
に多かった。同局は、個人が負う業務内容の増加や長時間労働などが背景にあると推測している。
同局によると、14 年度の県内の精神障害などの労災請求件数は前年度比 11 件減の 122 件。うち自殺(未遂含む)は前
年度 0 件だったが 14 年度は 6 件あった。請求のうち、労災と認定された件数は 3 件増の 33 件で、認定率は 3.4 ポイン
ト減の 28.2%だった。
認定を業種別に見ると、運輸業・郵便業が 6 件、製造業と宿泊業・飲食サービス業が各 4 件、卸売業・小売業と医療・
福祉が各 3 件。職種別では販売従事者が 8 件で最多となり、割合も 24%で前年度の 13%から大きく増加した。年齢別
では 30 代、40 代が各 10 件で、50 代が 6 件と続いている。
一方、残業など長時間労働に起因する脳・心臓疾患の請求件数は前年度と同じ 62 件で、そのうち労災認定されたのは
4 件増の 20 件。認定率は 5.6 ポイント増の 37.0%だった。脳・心臓疾患の認定を業種別で見ると運輸業・郵便業が 6
件で最多。職種別では輸送・機械運転従事者が 5 件で最も多かった。
5.ローラー車下敷き、柏の 51 歳男性死亡
千葉(2015/8/18 産経新聞)
18 日午後1時半ごろ、柏市花野井の農道の工事現場で、無人の小型ローラー車(重さ約 3.6 トン)が動き出し、約 10
メートル前で作業していた同市明原、土木建設会社役員の男性(51)が下敷きになった。男性は頭などを損傷し、搬送
先の病院で死亡が確認された。
柏署によると、運転者がエンジンをかけたままローラー車を離れようとして、誤ってギアが入ったとみられ、男性は背
後から来る車に気づかなかったらしい。同署は業務上過失致死の疑いがあるとみて調べている。工事は土地改良区が発
注。幅約 2.9 メートルの農道に砕石を敷く作業を男性会社が請け負っていた。
6.設備点検の男性転落死 千葉市南部浄化センター(2015/8/31 千葉日報)
31 日午前 9 時 10 分ごろ、千葉市中央区村田町の同市が管理する下水処理施設「南部浄化センター」で、消防設備の点
検中だった市原市八幡、アルバイトの男性(22)が、3 階から約 17 メートル下の地下 2 階に転落した。男性は頭を強
く打ち、間もなく死亡した。千葉中央署は詳しい事故原因を調べている。
同署によると、施設は地上 3 階地下 3 階建て。男性は施設の消防設備の点検を委託されているメンテナンス会社の従業
員で、同日午前 9 時ごろから同僚 2 人と作業。火災警報器などの点検中に、配管やダクトなどを通している穴の約 70
センチの隙間から誤って転落したとみられる。男性は約 1 カ月前、アルバイトとして入社したばかりだったという。同
署は施設の安全管理や点検指導に問題がなかったかなど、状況を詳しく調べる。同市は「事実確認中」としている。
7.その他の事故報道
□ 鉄板の下敷きで男性死亡 大阪・港区の工場(2015/8/1 産経新聞)
□ 滑車落下し男性死亡 新日鉄君津製鉄所(2015/8/18 千葉日報)
□ 足場から転落、大工の男性死亡
北秋田市の建築現場(2015/8/18 秋田魁新報)
□ 青森の 60 代男性、熱中症死亡災害(2015/8/21 東奥日報)
□ 剪定作業中の男性が転落、死亡
米沢(2015/8/25 山形新聞)
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