[390]続・「まご」にもいろいろござんして 気になる日本語(3)

上野先生と歩こう 中国語遊歩道 『中国のことばと文化Ⅱ』
[390]続・「まご」にもいろいろござんして
気になる日本語(3)
(9)お孫さんは?
新年に,かつて中国からの留学生としてわたくしのクラスに出ていた友人に会った時,「先生,お
孫さんは?」と聞かれた。この君に限らず,何年か前までは「お子さんは?」と聞かれたものだが,
今は「お孫さんは?」である。
それが年長者に対する礼儀と心得ているのか,或いはわたくしの貧弱な語学力を憐んでか,中国の
友人はみな日本語で話しかけてくれる。
これに対して甲羅を経た元教師は,何とか対処できそうな時は中国語で応答するが,手に負えない
とみるや,素早く日本語に切り換えて恥じるふうがない。
(10)孫はいないが,孫娘なら……
くみ
やす
上の問いかけに対しては,与し易しとみて,ちょっといたずらをしてやろうと,“我没有孙子”と
答えたうえで,暫く相手の反応を待った。案の定,「それはお寂しいですね」ときたので,“但是我
有一个孙女”と付け加えると,こんどは「それはよかったですね」と祝福してくれた。
“我没有孙子,只有一个孙女。”孫はいません,孫娘が 1 人いるきりです。男女をはっきり区別し
ていう中国語としてはおかしくないが,日本語としてはかなり違和感を覚えるが,どうだろうか。
わたくしには息子と娘が 1 人ずついるが,上の“孙女”は言うまでもなく息子夫婦の間に生まれた
女児である。これがもし娘夫婦の間に生まれた子供であったなら(残念ながら娘は未婚です),“外
孙”“外孙女”ということになるから厄介だ。
(11)「孫娘」の反対語は?
日本語の「孫」は息子の子であるか娘の子であるかを問わずに指すのが普通であるから,「子の子」
ということになる。もし男女を区別したければ,女の方に限って「孫娘」ということになる。「孫男」
や「孫息子」は聞いたことがない。
息子の子と娘の子を区別する言い方も有るにはある。「内孫」と「外孫」である。「うちまご」と
「そとまご」。音読して「ないそん」「がいそん」ということになるが,耳にすることは少ない。
「内孫」を手元の辞書で調べると,例えば『岩波国語辞典』第七版には「自分のあととりから生ま
れた子供。⇔外孫」とあり,「祖父母の側から言う」と注記されている。
これがよくわからない。
(12)次男の息子は内孫?外孫?
息子が何人かいてそのうちの 1 人が家の跡をつぐとして,その息子の子が「内孫」であることはわ
かるが,他の息子の子はどうなるのか。娘が婿を迎えて跡をついだ場合,その子は内孫?外孫?ここ
のところがよくわからない。
「外孫」を同じく『岩波国語辞典』で引くと,「嫁にやった娘の子である孫。⇔内孫」とあり,「祖
父母の側から言う。家族制度のもとでは自分の家に属さない」と注記されている。
跡をつぐとか,家に属するとか属さないとかというのは旧民法での話であるから,そこで生まれた
「内」とか「外」とかの概念に,今日の一般的な使い方との間に食い違いが生じるのはやむを得ない
ことかもしれない。だとすれば,息子の子が「内孫」,娘の子が「外孫」ということか。
2015/2/20
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