中間バンド型 高効率次世代太陽電池の研究 鳥取大学 大学院 工学研究科 電気電子工学講座 市野邦男 研究の背景 • 太陽光発電のさらなる普及に向けた, 低コスト・高効率化の必要性 • 高効率太陽電池の実現手段 • 発表者らの実績・技術 -硫化物半導体光デバイス材料 2 太陽光発電開発戦略 (NEDO PV Challenges: 2014/9) http://www.nedo.go.jp/content/100573590.pdf 発電コスト目標と低減シナリオ(非住宅分野) 3 太陽電池の発電の原理と制限 従来型(単接合)太陽電池 光子エネルギー hn ≧ Eg 吸収 半導体 (pn接合) 出力電流 I 伝導帯 価電子帯 Eg:バンドギャップ ≒出力電圧V hn < Eg 透過 電力 W=V I バンドギャップ小:電流大,電圧小 バンドギャップ大:電流小,電圧大 →最適値(妥協点)あり:効率に制限(~30%) •シリコンを中心として種々の半導体材料 •変換効率:市販レベル 10~17%;研究レベル 15~25% 4 高効率太陽電池の実現手段(1)タンデム型 バンド ギャップ 大 中 小 異なる半導体を積層 光子エネ ルギー hn 大 中 小 伝導帯 価電子帯 各層でエネルギーの異なる光を吸収 → ロスの減少 •現時点の最高効率を実現 (44.7%, 4段,集光時) •3段タンデム型太陽電池の理論効率 47%(非集光時),63%(最大集光時) •高製造コスト:宇宙用,集光システム用 5 高効率太陽電池の実現手段(2)中間バンド型*) 半導体中に 中間バンドを形成 光子エネ ルギー hn 小 中 大 伝導帯 Eg~eVOC 価電子帯 中間バンドを介してエネルギーの異なる光を吸収 •原理提案・実証段階 •中間バンドの実現方法:量子ドット,不純物バンドなど •単純構造で3段タンデム構造と同等の理論効率 [ 47%(非集光時),63%(最大集光時) ] •低製造コストの可能性 (*) A. Luque and A. Marti (Univ. Politecnica de Madrid), Phys. Rev. Lett. 78 (1997) 5014. 6 発表者らの実績・技術 硫化物半導体の分子線エピタキシー(MBE)技術 ・高純度な極薄膜多層構造の作製に適する ・硫化物に特化した専用独自設計の分子線エピタキシー (Molecular Beam Epitaxy; MBE)装置を開発 超高真空: <10-9気圧 (1/1000×1/1000×1/1000) 基板 半導体 薄膜 真空 ポンプ 分子線 RHEED スクリーン N2 gas RHEED 電子銃 Zn Cu Al, Ga 高純度原料:蒸発(昇華) S 7 Photoluminescence Study of ZnS/ZnMgS Single Quantum Wells Appl. Phys. Lett., Vol. 74, pp. 3486-3488, (1999). PL ZnMgS ZnS buffer GaP sub. dwell ZnS/Zn 1-xMgxS SQW PL 10 K ZnMgS barrier Xe-lamp 3.95 ZnS well 3.9 dwell= 19 Å 28 Å 56 Å 73 Å Energy (eV) ZnMgS ZnS PL intensity (arb. units) Xe lamp (4.1 eV) ZnS/Zn 1-xMgxS SQW PL peak fit x=0.21 x=0.16 3.85 Eex HH Eex (no strain) 3.8 Eex LH x5 3.75 x5 3.7 3.8 3.9 Photon energy (eV) Eex HH (no QC) Eex LH (no QC) 4 25 50 75 100 ZnS well width d well (Å) 紫外発光量子井戸構造のを初めて作製 8 ZnS-based ZnSTe:N/n-ZnS Light-Emitting Diodes Appl. Phys. Express, Vol. 6, pp.112102-1~4, (2013). EL intensity (arb. unit) ZnSに少量(x~0.15)のTeを 加えた上で,アクセプタとして Nを添加 → 従来困難だったp型化に成功 pn接合発光ダイオード (LED) 構造 Au/ZnSTe:N/n–ZnS/n–GaP EL T=290K I=10mA 7mA 5mA 2 2.5 3 Photon energy (eV) 発光ダイオード動作を確認 9 研究の目的と構想 • 目的:高効率太陽電池(非集光で >30%) • 手段:中間バンド型太陽電池-不純物バンド型 -従来型同様の低コストと高効率を両立 • 母体半導体:CuGaS2 -硫化物半導体,適切なバンドギャップ,適した物性, 類似の実用材料 • 研究の方針: -独自の結晶成長技術により,まず高品質単結晶で 高効率化の原理実証 -その後低コスト多結晶で実用化研究 10 研究の構想 本研究 従来技術 Eg~eVOC Eg~eVOC バンド間吸収のみ 中間バンド型 CIGS(CuInGaSe2)多結晶薄膜 (Eg~1.2eV):高効率・低コスト ・不純物添加による中間バンド 形成:低コスト ・CuGaS2単結晶(Eg~2.46eV) 高品質結晶で原理検証 製造技術etc. 超高効率・低コスト 実用太陽電池 新原理 11 想定する太陽電池構造 窓層:n-ZnS 光吸収層: CuGaS2:X (X=Ti etc.) 中間バンドを形成 p-CuGaS2 不純物バンドによる中間バンド実現のため, 種々の不純物から適切なものを見出す • 適切なエネルギー準位を形成 • 高濃度添加可能 • 非発光再結合が少ない 12 研究の現状 • 主として母体結晶CuGaS2のMBE成長と高品質結晶の 作製条件確立に取組中 作製結晶のX線回折パターン 発光スペクトル −5 +4 [110 ] Tsub=600℃ TGa=900℃ TS=155℃ 90min PL Intensity (a.u.) #161 TCu=1140℃ XRD Intensity (cps.) 400 1 #162 TCu=1175℃ 200 0 68 70 PL (14K) 15 Ex 350nm CuGaS2 (008) 600 CuGaS2 (040) XRD Intensity (cps.) 800 [10 ] Tsub=600℃ TGa=900℃ TS=155℃ 90min 72 2θ(deg.) Cu poor:低品質 74 68 70 72 2θ(deg.) Cu rich:高品質 74 10 5 0 #186 Cu−rich #161 Cu−poor 500 600 700 Wavelingth (nm) 800 13 今後の方針 • pn接合構造の作製,基本的太陽電池動作の確認 • 不純物添加による中間バンド形成(不純物探索) • 中間バンド型太陽電池構造の作製,構造最適化 • 高効率化の実証 • 実用化研究へ 14 ご清聴ありがとうございました ご連絡先: 〒680-8552 鳥取市湖山町南4-101 鳥取大学大学院工学研究科 情報エレクトロニクス専攻 電気電子工学講座 市野邦男 e-mail: [email protected] TEL 0857-31-5240 FAX 0857-31-0880 15
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