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無機化学 1
5回
10/19/2012
3章 イオン結合とイオン結晶
目的:NaCl、Na2SO4などのような原子および多原
子イオンから成るイオン結晶の生成、構造、格子
エネルギー、物性を紹介する。
****前期 「化学」 復習****
化学式, 分子式, 実験式, 化学方程式
●元素記号を用いて物質を表した式( 化学式 chemical
formula)のうち、分子を表記するのは 分子式 (molecular
formula)(例:He, H2O, O2, C6H6)で、イオン結晶では各構
成元素の最も簡単な整数比で表す( 実験式 empirical
formula 例:NaCl, NH4Cl、Na2SO4)。
●化学式を用いて 化学反応 (chemical reaction)を示し
たものを 化学方程式 (chemical equation)という。左辺
に 反応物 (reactant)、右辺に 生成物 (product)を書き、
左辺と右辺で同じ種類の原子数は同じである。
2H2 + O2 → 2H2O (反応式は→を用いる)
アボガドロの法則、モル
●「同温同圧のもとでは、すべての気体は同じ体積中に
同数の分子を含む」というのが「 アボガドロの法則 」で
0℃、1.013×105Pa(パスカル)(1気圧)で、6.0221×1023
個(NA, 凡そ6×1023)の気体分子を集めると、その種類に
よらず22.414 l(リットル、凡そ22.4 l)となる。
●この粒子数を含む純物質を 1モル(mol) という単位で
カウントする。基準は炭素で、炭素12.0 g が1モルである。
上の化学反応は、2モルの水素と1モルの酸素が反応し
て2モルの水ができることを示す。
物質量、分子量、式量、化学量論係数
●酸素原子1モルは16.00 g、酸素分子1モルは32.00 gで、
物質量という。純物質1モルの質量はモル質量(M g/mol)
で、分子の場合、単位を除いたのが 分子量 (molecular
weight)である。イオン結晶では実験式を用いた化学方程
式が用いられ、分子量の代わりに 式量 (formula weight)
が用いられる。
●化学反応で重要なのは反応物、生成物の前につく係数
と熱の出入りである。エタノールを燃やすと、炭酸ガスと水
が生成するので
aC2H5OH + bO2 → cCO2 + dH2O
係数a―dを化学量論係数(stoichiometric coefficient)
という。炭素で 2a = c, 酸素で a + 2b = 2c + d, 水素で
6a = 2dであるから, a:b:c:d =1:3:2:3となる。
C2H5OH + 3O2 → 2CO2 + 3H2O
熱化学方程式
●熱の出入りを考慮した熱化学方程式(thermochemical
equation)では、反応物、生成物の状態が重要であり、化学
式の後ろに気体(gas)g , 液体(liquid) l , 固体 (solid) sの
記号を付ける(熱化学方程式は等号を用いる)。
C2H5OH(l) + 3O2(g) = 2CO2(g) + 3H2O(l) + 1366.7 KJ
1モルのエタノール(液体)と3モルの酸素(気体)の反応に
より、2モルの炭酸ガス(気体)と3モルの水(液体)が生成し、
1366.7 KJの発熱を伴う。
●イオン化傾向:2つの元素のどちらがより酸化され易い(あ
るいは還元され易い)か、つまり酸化還元反応における化学
平衡がどちらに偏っているかの序列である。イオンの溶液中
での安定性や電気化学活量など化学平衡として反応が進
む方向を決定づける他の因子に大きく影響され、定量化は
困難。水溶媒でイオン化列という。(Li, K, Ca, Na) > Mg >
(Al, Zn, Fe) > (Ni, Sn, Pb) > (H2, Cu) > (Hg, Ag) > (Pt,
Au) のように( )内のイオン化傾向は条件に依存する。貸
そうかな、まああてにすな、ひどすぎる借金。理智 (Li) ルビ (Rb)
カ (K) バー (Ba)巣と炉 (Sr)仮 (Ca) 名 (Na) 魔具 (Mg)アル (Al) 漫画 (Mn) 合えん
(Zn)黒夢 (Cr)鉄 (Fe) 門 (Cd)木庭 (Co) に (Ni) 鈴 (Sn) 園 (Pb) 水 (H)アンチ (Sb)
尾 (Bi) 藤 (Cu)水銀 (Hg)銀色 (Ag) パラパラ (Pd) 白い (Pt) 金 (Au)
化学電池ではイオン化傾向の大きい金属が 負極 、逆
が正極 。
3.1)イオン結晶
3.1.1) 原子イオン間のイオン結晶
●無機イオン結晶は、電子を出して安定な陽イオンと
なる原子と、電子を受容して安定な陰イオンとなる原
子との間にクーロン静電引力が働いてできる結晶で
ある。
●各イオンは最外殻が満たされた安定な希ガス型電
子配置をとる。代表例は、周期表1族Na(電子配置
1s22s22p63s1)と17族Cl(1s22s22p63s23p5)から構
成される食塩(岩塩)で、3.1式である。
Na + Cl  Na+(Ne型) + Cl(Ar型) (3.1)
●イオン結晶を得る第一の条件は3.2式である。
Ip  EA < M
(3.2)
●NaNa+のイオン化反応に必要なエネルギー(イ
オン化ポテンシャル、Ip)は5.14 eVである。一方,
ClClにより3.61 eVのエネルギー利得(電子親和
力, EA)がある。従って、3.1式の右辺のイオン対形成
に5.14  3.61 = 1.53 eVのエネルギーが必要である。
結晶に凝集すると、異種イオン対間のクーロン引力、
同種イオン間のクーロン反発の総和による安定化エ
ネルギー(マーデルング・エネルギー, M)が得られ
る。岩塩の凝集エネルギーは約7.9 eVで、3.1式の
右辺へ必要な1.53 eVを凌駕しているので安定なイ
オン結晶となる。
イオン結晶の一般的性質
無機原子イオンから成るイオン結晶は、融点が高く、
電気の絶縁体で、水などの極性溶媒によく溶け、電
解質として働く。
中には、イオン伝導性に優れたものがある。しかし、
これらの性質に従わない多くの例外があり、また、
有機-無機複合系イオン結晶や有機物イオン結晶は
一般的性質を要約するのが困難なほど多様性に富
んでいる。
3.1.2) 多原子イオン、分子イオンを含むイオン結晶および
イオン液体
アンモニウム(NH4+)、フォスフォニウム(PH4+)、その水素原子をフェ
ニル基で置換したアニリニウム(C6H5-NH3+)やテトラフェニルフォス
フォニウム[(C6H5)4P+]、またシクロプロペニル、シクロヘプタトリエニ
ル(トロピリウム)など多くの無機多原子陽イオン、有機陽イオンがあ
る(図3.1)。また、過塩素酸イオン
(ClO4)、硫酸イオン(SO42-)、トリ
フルオロメチル硫酸イオン(トリ
フラート)(CF3SO3-),燐酸イオン
(PO43-)、などの無機多原子陰イ
オン、フェノラート(C6H5-O-)、p-ト
ルエンスルフォネート(トシラート
アニオン、CH3-C6H4-SO3, TsO)、
ピクラート(C6H2(NO2)3-O ) 、シク
ロペンタジエニル(Cp )などの
有機陰イオンがある。
変わった物質として、アルカリ陽イオンを包摂したクラウンエーテル
など多種多様なイオンが開発されている。その中でも、融点が室温
より低いイオン液体が、蒸気圧が極めて低いので環境を汚さない
グリーンな反応溶媒として、最近注目を浴びている。これは、エチ
ルメチルイミダゾリウム(EMI)などのような対称性の低い陽イオンを
用いた塩である。
クラウンエーテル:ペダーセンにより発見された環状エーテル
化合物で、環内に様々のアルカリ金属イオンやアンモニウム
イオン(M+)をゲスト分子として包含する。包含される陽イオ
ンのサイズと環の中央にある空隙サイズの適合性に依存し
た錯形成(ホストーゲスト化合物)が行われる。陰イオン(X-)
は強いイオン対形成から緩和される。従って、イオン結晶MXはクラウン
エーテルを含む無極性非水溶媒(多くの有機溶媒)に可溶となり、X-はM+
に強い束縛を受けずに存在するので、反応性が極めて向上する。このような
陰イオンをnaked anionという。生体内で、活性なnaked anionを生成する
ことは危険であり、クラウンエーテルを飲取しないよう取り扱いに注意する。
クラウンエーテルは、それを形成する原子数と環内の酸素の数で慣用名が決
定される。18-クラウン-6 エーテルが
最も一般的に利用される。レーンは
クリプタンドを用い、3次元包摂化
合物の化学を展開し、クラムは、こ
れらの包摂化合物(ホスト-ゲスト)
の化学を分子認識の視点で展開し、上述3化学者は1987年にノーベル化学賞
を受賞した。包摂化合物(クラスレート化合物)として、ヒドロキノンへのメ
タノール、Ar, Kr, Xeの挿入、-シクロデキストリンへの中性分子の挿入、ヨ
ウ素デンプンなどがある。
3.2) イオン結晶の構造
幾つかの代表的結晶構造があり、重要。
塩化セシウム型、岩塩型、閃亜鉛鉱型
●イオン間に働くクーロン静電力は方向性をもたないので、イオン結
晶の構造は陰イオン(半径R)、陽イオン(半径r)の数の比、半径比、分
極率によって支配される。
●各イオンはできるだけ多くの反対符号のイオン(その数を配位数
:coordination number)に取り囲まれるようにして安定化する。陽イオン
と陰イオンの数の比が1:1の場合の配位数は、8、6、4である。
1)陽イオンの半径と陰イオンの半径に大きな違いがな
い時(r/R>0.73 であると)、主に塩化セシウム型: CsX
(X = Cl, Br, I)、NH4X(X = Cl, Br, I)など、約50種の化合
物がある。配位数8。
2r
R
2
図3.2a) CsCl型 CsClの単位格
1 子
r/R=0.732 [(2R+2r)/2R=3]
全ての原子が同種なら 体心立
方格子(body centered cubic, bcc,
占有率68%, 全てのアルカリ金
属、Ba, 多くの遷移金属が属す。
2)陽イオンが小さくなり0.73 > r/R > 0.414ならば岩塩型:上記
CsX(X = Cl, Br, I)を除く全てのハロゲン化アルカリが属す。200種
以上の化合物がある。配位数6。
1
1
1
2r
2R
図 3.2b) 岩 塩 型 の 単 位 格 子
r/R=0.414[(2R+2r)/2R=2],
陽イオン、陰イオンは各々面心立方格子(face centered cubic,
fcc, 占 有 率 74.1%) 、 全 て が 同 種 原 子 な ら 単 純 立 方 格 子
(simple cubic、sc, 占有率52%, Poの低温相)である。
●岩塩構造はイオン結晶以外にも多く見られ、多くの遷移金
属はB, C, N, SiおよびGeと結合して岩塩型構造の金属性物質
を与える。これらは脆く、硬く、融点が高い。良い熱伝導体、
導電体である。
3) 陽イオンが小さくなり、陰イオンが大きくなると(0.414 > r/R)閃
亜鉛鉱型 (別名CuCl型: 閃亜鉛鉱(ZnS)、CdS、ハロゲン化銅(I)な
ど40種近くの化合物がある。Cu+, Clの位置に炭素Cをいれるとダイ
ヤモンド構造となる。配位数4)やウルツ鉱型(別名ZnO型) (ウル
ツ鉱(ZnS、ウルツ鉱は閃亜鉛鉱の多形で、より稀に産出する), ZnO,
CdS, AgIなど20余種の化合物がある。配位数4)をとることが多い。
2
Q
L
O
Q
O
1
2r
P
L
R
P
図3.2c) 閃亜鉛鉱型(CuCl型), r/R =0.225, [R/(R+r)=2/3]
全原子が同種でダイヤモンド型構造 (4配位、Si,Ge,灰色Sn,占
有率は34%)である
図3.2d) ウルツ鉱(ZnS)
型 (ZnO型)
陽イオンと陰イオンの数の比が2:1または1:2の場合の配位数は8:4,
6:3と4:2(1:2ではその逆)
1) r/R > 0.73ならば配位数8:4のホタル石型(ホタル石CaF2 ), Caと
Fを入れ替えた構造を逆ホタル石型という。
図3.2e) ホタル石型
ホタル石(フルオライト) 結晶を火の中に入れると光を発するので、
この名がある。緑や紫の美しい結晶であるが、硬度4で軟らく劈開
性が強いので日本では宝石に使われない。高級光学レンズ材、
フッ素の貯蔵材、濃硫酸に入れて加熱するとフッ化水素(HF) が発
生する
2) 0.73 > r/R > 0.414で配位数6:3のルチル型(ルチル(金紅石)
は酸化チタン(TiO2)の多形の一つ)。
ルチル
O
Ti
図3.2f) ルチル型
3) 0.225>r/Rなら4:2配位のCu2O型(Ag2Oなど)
Cu
O
図3.2g) Cu2O型
Cu2O
CuO