設計改革がいつも 失敗に終わるのはなぜ? 解決の糸口は図面標準化からの脱却にあり ものづくり企業がグローバル競争力を高めるには、設計業務の改革が不可欠だ。なぜなら設計段階で製品コストの8割が決まると いわれているからだ。しかし、多くの企業が改革に取り組んでは失敗を繰り返している。要因は設計の「標準化」の意味を勘違い していることにある。ここでは、ものづくり企業における設計改革を数多く成功に導いてきたコンサルタントと、多くの企業に様々な 設計ソリューションを提供し続けてきたダッソ―・システムズのエンジニアに、改革を成功に導くためのポイントを聞いた。 は千差万別であり、将来のものも含め 設計改革に潜む「勘違い」 “図面”の標準化は失敗のもと た要求をいつも満たす標準部品や標準 ものづくりのグローバル競争はます をベースとした標準化は形骸化してい ます厳しさを増している。日本企業が く——。 図面を定義することは不可能です」 (北 山氏) 。その結果、 「使えない標準図」 世界で競争優位を獲得するには、より 高品質、より高機能な製品をより低価 格に提供する必要がある。そのために 欠かせないのが設計業務の改革であ 設計改革を成功に導く 「3つのステップ」とは る。 「目指すべきは、図面の標準化では 製品コストの8割が決まるといわ なく『設計の高度化』です。これは、設 れる設計業務を改革することができ 計ナレッジが可視化・共有され、設計 れば、価格も含め、顧客の求める製品 そのものが標準化されている状態のこ をより迅速に提供することが可能に とを指します。設計の高度化により、 なる。 付随的に設計雑務の自動化も促進。設 しかし、設計改革を成功させるのは 計者は品質や新機能の実現のために多 ん」 (北山氏) 。 簡単ではない。 「設計改革に取り組ん くのリソースを割くことができるよう 第2ステップは「直接業務の効率化」 だものの、頓挫してしまう企業も少な になります」と北山氏は訴える。 だ。仕様データの重複入力の排除や、 くありません。最大の要因は『標準化』 その上で、北山氏は、改革を成功に 技術計算ツールの属人化の排除により に対する勘違いにあります」とプリベ 導くための具体的な3つのステップを 仕様展開を効率化する。 クトの北山 一真氏は指摘する。 示す。 そして第3ステップが「直接業務の 多くの企業が「標準化」のために取 まず第1ステップは、 「間接業務の 高度化」だ。設計ナレッジの可視化や り組んでいる施策の1つに、 「図面標 効率化」である。採番や設計帳票の自 共有、それに基づいたCADの自動作 準化」が挙げられる。これは、標準部 動化などが挙げられる。 「しかし、中に 図などが挙げられる。 品や標準図面を定義した「標準図」を、 は設計を弱体化させるE-BOM(設計 とりわけ重要なのが、第2・第3ス 設計者に使わせて効率のよい設計を目 部品表)導入などもあるため、その見 テップの「直接業務」の効率化・高度 指すもの。 「しかし、本来、顧客の要求 直しも含めた取り組みが欠かせませ 化である。 「多くの改革は間接業務の 株式会社プリベクト 代表取締役 北山 一真氏 設計改革がいつも 失敗に終わるのはなぜ? 解決の糸口は図面標準化からの脱却にあり 3DEXPERIENCE Open (外部インターフェース、コンバータ) 図1●3Dエクスペリエンス・プラットフォームの構成イメージ 統一 ユーザーインターフェース Governance / LifecycleProcesses (部品表、PJ管理、 要件管理、環境負荷 物資管理など) Design / EngineeringProcesses (メカ・エレキ・ ソフトモデリング、 デザインなど) Manufacturing / SimulationProductioncentric Processes Processes (製造・ (線形・非線形解析、 工程シミュレーション、 解析データ管理など) 製造実行管理など) 3D Design Experience for Professionals Processes (3Dモデリング) 業務プロセスに応じた アプリケーション Collaborative Innovation Collaborative Sharing 3DDashboard 3DSwym 3DSpace 3DPlay 3DPassport 3DSearch 6WTags 3DMessaging 3DCompass プラットフォーム ハードウエア、データベース、Web Apps または パブリッククラウド(IaaS) データベースによる統合情報基盤上でCAD、BOMなどのアプリケーションが稼働する。製品を構成するデータが一元的に管理されているため、シームレスな設計業務が可能になる 図 2 ●3D エクスペリエンスの活用イメージ CAD構成 CAD構成展開 EBOM ダッソー・システムズ株式会社 シニア・テクニカル・セールス・マネージャー 3DSバリューソリューション事業部 営業技術部 3 鈴木 好徳氏 効率化ばかりになっています。直接業 CAD構成から EBOMの生成 CAD構成 CADは部品データの集合体。CAD 構成をドリルダウンしていくと、構成要素である部品データが展開される。部品を 選択・修正するとBOMが自動生成され、設計業務は大幅に効率化する 務こそが設計の本質です。ここを改革 しなければ、真の意味での成功はあり クスペリエンス・プラットフォーム」だ。 ができます」とダッソー・システムズ 得ません」と北山氏は力説する。 「これは、組み立て型製造業におけ の鈴木 好徳氏は説明する。 る製品開発の企画から、設計、生産、 最大の特徴はデータベースに基づい CADとBOMの データを“融合” ものづくりを支える情報基盤 さらに出荷後のユーザサポートに至る た一元管理を実現している点だ。これ まで全業務プロセスの製品データを統 により、まず直接業務の効率化を実現 合的・包括的に運用・管理するもの。 することが可能だ。 これにより、従来起こりがちだった製 典型的な効率化の例として、CADと 直接業務の効率化・高度化を推進す 品データの転写を何度も繰り返すとい BOMの一体運用が挙げられる。従来、 る上で有効なのが、ダッソー・システム った非効率な業務プロセスを排除。よ CADとBOMは別々のソフトウエア、 ズの製品開発プラットフォーム「3Dエ り生産的なものづくりを実現すること データで運用されてきた。 「その結果、 設計改革がいつも 失敗に終わるのはなぜ? 解決の糸口は図面標準化からの脱却にあり 図3●ナレッジを活用した自動設計のイメージ 設計ナレッジの 有効活用を促し 柔軟な運用で生産性も向上 このデータベース管理は、直接業務 の高度化にも大いに役立つ。 顧客要求仕様 「技術・経験に裏打ちされた設計ナ 基本形状 レッジは、いわば暗黙知。それを明ら かにするには、これまでの実績に基づ いた設計諸元の全容を洗い出すことが 不可欠です」と北山氏は述べる。その 上で、諸元項目ごとに適切な値や設計 設計パラメータ計算 ルールを策定。はじめてナレッジの共 有が実現できるというのだ。 CADパラメータ計算 これに対し、3Dエクスペリエンス・ デザインルール(ナレッジ) による自動設計 プラットフォームは、設計諸元を統一 して管理できるとともに、設計ナレッ ナレッジを蓄積・登録しておけば、顧客要求仕様を選ぶだけで最適な基本形状を選定できる。デザインを追加・変更 した場合も、ナレッジに基づいて諸元値を自動的に算出。設計を自動的に変更できる ジも設計諸元ごとに管理することが可 能。 「例えば、顧客要求に対し、設計ナ レッジに基づいた諸元値を自動的に算 作図したCADに変更が生じた場合は、 界でもユニークなアーキテクチャを採 出。それを基にパラメトリックに自動 新たにBOMを作成し直すなど、ムダ 用しています」と鈴木氏は述べる。 的に図面を作成することもできるので な作業が多く発生していました」 (鈴 また、従来のCADデータ管理ソフ す。また、このナレッジも、データベ 木氏) 。 トウエアは修正の競合を防止するため ース上で管理されているため、変更・ 加えて、CADデータはユニット単位 に、作業中はCADファイルにロック 新設登録後すぐに必要なすべてのユー など、数十以上のファイルで構成され をかけ、排他制御する仕組みとなって ザが共有可能。垂直立ち上げにも柔軟 ているため、製品データの一部を修正 いることが多い。そのため、同一の に対応します」 (鈴木氏) 。 するだけであったとしても、CADファ C A Dファイルを親に持つ、別々の つまり、3Dエクスペリエンス・プラ イルをすべて読み出した上で、対象フ CADファイルを複数の人が同時に作 ットフォームは、顧客の要求にきめ細 ァイルに修正を加えなければならなか 図作業を行うことはできなかった。 かく対応しながら設計業務を効率化す った。 「その点でも、 3Dエクスペリエンス・ るとともに、設計者間での高度なナレ 「3Dエクスペリエンス・プラットフ プラットフォームは、従来のファイル ッジを体系的・迅速に共有することが ォームなら、こうした煩雑な作業は一 ベースよりも細かなデータの単位でデ 可能となるのである。 切不要です。CADの変更完了時には、 ータを管理することができるため、ロ 熾烈なグローバル競争を勝ち抜くた BOMの変更もすでに行われており、 ックする情報をより小さな範囲に抑え めには、多くの企業が陥りがちな「図 逆にB O Mの修正を行えば、それが ることが可能。これにより、ファイル 面標準化」を脱し、いち早く「設計標 CADへも反映されます。こうしたこと ベースではできなかった複数の人によ 準化」に取り組むことが肝要だ。ダッ が可能なのは、CADのデータもBOM る作図作業を同時に行うことができ、 ソー・システムズの3Dエクスペリエ のデータも1つのデータベースで一元 分業時の作業効率が飛躍的に高まりま ンスは、そのための有力なソリューシ 管理する仕組みを備えているため。業 す」と鈴木氏は話す。 ョンとなることは間違いない。 お問い合わせ ダッソー・システムズ株式会社 マーケティング [email protected] URL http://www.3ds.com/ja
© Copyright 2024 ExpyDoc