中国南京市青龍山精神病院交流研修記を掲載しました

中国南京市青龍山精神病院との研修交流1年を過ぎて
八幡厚生病院
院長
齊藤
雅
「障害者の国際交流を支援する会」会長の北原守氏(前「北九州市手をつなぐ育成会(親
の会)会長、元福岡県議で、40年間中国・韓国との国際交流を進めている方」)の仲介によ
り、2014年 11 月より3か月間の研修を引き受けることとなった。
中国では、長い一人っ子政策のため、高齢者の増加に対して世話をする若者が少なく、高
齢者問題・認知症問題が大きな課題になってきている。南京市内には認知症の治療・看護を
行う病院がないため、現在市内に500床の病院を建設しており、2015年12月にはオ
ープン予定である。青龍山精神病院職員が高齢者病院の立ち上げに際し、日本における認知
症高齢者医療とケア関連の研修を受け、ノウハウを身に付け実践に役立てたいという主旨の
もと、100人ほどの応募者の中、5人の研修生(医師2名、看護師3名)が当院を中心に
立てられた研修計画に沿って、3ヶ月間の研修を終え帰国した。
研修を進めていく中で、
「慢性精神障碍者の社会復帰について」の、研修生側の高い関心が
感じられたため、研修内容に盛り込んでいった。
中国南京の青龍山精神病院は、民政局管轄の1100床(実際の入院患者は1300人程)
の病院であり、研修生達の帰国後、報告会に招待され、当院から私の他に林田看護部長と入
江師長の3人が病院を訪れた。私の講演も含めて、今後の末永い交流と5年間の日本での研
修について話し合い、協定を結んだ。北原氏によると、福岡県では初めての試みであり、画
期的なことであるという。
その後、南京市人民代表会議職員の張宏氏(通訳をしていただいた方)からのメールでは、
青龍山精神病院が、南京市内の公園を借りてバザーや作品展等の催しをして、新聞やテレビ
で話題になったということや、私たちが訪問し、確実に病院が変わってきたという報告があ
った。
長期入院の精神障碍者の退院・社会復帰については、これまで経験がなく、当院に研修に
来た、呂医師が中心になって、リハビリセンターの場所探しから、退院可能な患者さんたち
を説得に奔走しているという話である。
2015年8月末から9月にかけて、
「現地研修」に招待され、私の他、林田看護部長、中
山看護課長、西田精神保健福祉課長、入江師長の5人と北原氏とで、青龍山精神病院を訪問
し、病棟の中に入れてもらい、患者さんたちとも接することができた。王院長と呂医師が苦
心の末何とか確保することができた、リハビリテーションセンター(改装中)も見せてもら
い、建設中の認知症センターも見学した。4日間の間、青龍山精神病院の中心的なメンバー
と、社会復帰のことと認知症について繰り返し討論を行ってきた。中山・西田が社会復帰に
ついて、林田が認知症について、パワーポイントで話題提供した。
我々の帰国後、王院長と呂医師は、南京市の調査団と一緒に、武漢、長沙における精神科
医療の視察に行き、参考になったとメールを貰った。また、呂医師によると、退院を希望し
た2人の患者さんが、現在リハビリテーションセンターに通ってきており、毎日みんなでこ
れからの計画について話しあっているという。
この1年、南京市の精神科医療が少しずつ変わってきている。江蘇省・南京市の人民代表
会議もバックアップしてくれている。八幡厚生病院は、翠会ヘルスケアグループの病院の1
つとして、中国と民間のレベルでの友好関係を進めながら、南京市の精神科医療の発展を見
守っていきたい。
中国南京市青龍山精神病院との交流体験記
八幡厚生病院
看護部
林田・中山
2014年夏、障害者の国際交流を支援する会会長 北原守氏より、
「中国江蘇省南京にあ
る精神科病院の研修生を受け入れて頂けないか。
『認知症の高齢者ケアの実務者研修を中心と
した内容で3か月間』お願いしたい。」という依頼があったことから青龍山精神病院との交流
研修がスタートすることとなりました。
中国では、高齢化が進み、一人っ子政策も二人っ子政策に切り替わる時期に来ています。
データでは、一昔前の日本を追う勢いで、加速的に高齢化が進んでいます(老年人口比率は
世界で日本に次ぐ2位)。とてつもなく広い国なので、高齢者数も多く、2025年には世界
老年人口の4分の1を占めるまでになると予測されています。
青龍山精神病院院長(40代の若い王院長)が、高齢者対応の遅れを懸念し、日本への研
修生派遣を決めたようです。福岡県と江蘇省南京は姉妹友好提携を結んでいる関係や距離的
にも近いということに加え、そもそも、北原氏の築き上げてきた国際交流の歴史や信頼関係
が大きかったと思われます。八幡厚生病院院長と併設の介護老人保健施設ナーシングセンタ
ー八幡の職員、他関係者との協議で、
「自分達にとっても、研修生を受け入れることはプラス
になる」という思いから、受け入れを決めました。
振り返ってみれば、当初は言葉や習慣の違い、病気やケガへの不安が強くありました。
第1期研修生5人(医師2名、看護師3名)の不安は想像以上だったと思います。
「日本に行
ったらイジメられるんじゃないかと、思っていました~」と笑いながら話していました。
2014年11月からの3か月間の研修期間中は、5人とも大変真面目で、熱心に取り組
まれていました。認知症の高齢者ケア研修では、座学に加え、食事・排泄・入浴等の直接介
助や夜勤体験もして頂きました。研修生は、もともと精神科病院勤務ということもあり、
『精
神障がい者の退院支援・社会復帰』への関心も高くありましたので、研修プログラム内に、
そういった内容も追加していきました。
2015年2月の研修終了後の3月、青龍山精神病院研修報告会に院長を含めた当院職員
3名と北原氏が招待され、その席で、今後の末永い交流と5年間の日本(八幡厚生病院)で
の研修を受け入れることに関して協定を結びました。さらに2015年8月末から9月初旬
にかけ、院長、当院職員4名、北原氏の計6名が、中国南京市青龍山精神病院に行き交流研
修を行ないました。
中国側の課題として、入院主体の医療体制であるため、精神障がい者や高齢者(認知症)の
社会資源が少なく、地域移行、地域定着に関しての支援・取組みは充実していないことがあ
がっています。王院長・呂医師(日本研修中のリーダー)が中核となり、それらの課題をい
ち早く克服するため、当院研修で学んだ日本の精神科医療のノウハウを導入しつつあり、着々
と進む現状に、ワクワクする思いです。
第2期の研修生は2016年5月を予定しています。私達は、友好の絆を深めながら、中
国南京市青龍山精神病院での取り組みが成果を上げ、その後、より広い地域で般化される事
を期待しています。
謝謝!
来日!你好!
2014年11月八幡厚
生病院へ挨拶にこられた
研修生5人(右側)
左から通訳をして頂いた
叶さん、
(障害者の国際交
流を支援する会職員)
齊藤院長、入江師長
青龍山精神病院玄関
青龍山精神病院内
ディスカッションの様子
病院内の交流見学、ついでに
院長は作業療法中