□ (続)中国インターネットマーケットの現状たった 24 時間の売り上げが一兆円を越える今年は何が売れたのか 2014 年 11 月の中ごろ、インターネットニュースで中国、アリババ・グループのインターネット売り上げが 11 月 11 日たった一日で日本円換算一兆円を超えたと伝えられた。日本最大のインターネットショッピングサイトである楽天の年間取扱高が 2 兆円には達していないことを考えると、すさまじい金額である。日本最大のデパート伊勢丹新宿店の 2 年分の売り上げである。 24 時間の売上高は 571 億元、93 億ドル、日本円で 1 兆 670 億円（レートは 1 元=18.7 円）。昨年より 80％以上売り上げが伸びたのに、アリババの株価は 3.5％下落し、アリババ株を 16％保有するヤッフーの株価もつられて一時若干下がったというから、期待していたものがいかに大きかったかが窺い知れる。（2013 年の売り上げは 362 億元、59 億ドル、約 6840 億円）アリババは傘下のオンラインショッピングサイト「天猫（T モール）」と「淘宝網（タオバオ）」での商品取引額が 2014 年 3 月までの 1 年間で 1 兆 6800 億元（約 32 兆 7000 億円）に上った。この額は米アマゾン・ドット・コムとイーベイの合計よりも多く、世界最大である。アリババ社の報告によると、今年、独身の日に傘下のサイトを訪れた顧客数は延べ 4 億 200 万人で、これは中国成人人口の 3 分の 1 以上に相当する。独身の日は、今では既婚者も含めたあらゆる消費者層にとって 1 年で最大のネット通販の日となっている。アリババのデータによると、スマートフォンの小米科技旗艦店、家電のハイアール旗艦店、ジャック&ジョーンズ旗艦店(デンマークのファッションショップ)、などに混じりユニクロ旗艦店が天猫の同セールの売上トップ 10 に入っている。売れ筋商品はスマートフォン、モバイル PC、タブレット、携帯電話などのほか、ファッション関連商品、粉ミルク、紙オムツ、家電製品、空気清浄機だが日本製粉ミルクや紙おむつは飛ぶように売れている。アリババの配送子会社である菜鳥社では、独身の日以降の 3 日間で 4,000 万個以上の小包を配達した。しかし天猫（T モール）では 2 億 7,800 万件の配送注文があったという。この分だと、配送が完了するには 3 週間ほどかかることになる。3 日間で 4,000 万箱の配達というのは、全配送件数のうちの 14%に過ぎない。作られた記念日光棍節独身の日時間や空間に縛られない強みを発揮中国では 11 月 11 日を「光棍节＝光棍節（グヮングンジェ）独身の日」と呼んでいる。この日は数字の「1」が 4 つ並び、独身を意味する「つるつるに光る棒」という中国語の表現を連想させることから、こう呼ばれるようになった。独身の日は、もともと 1990 年代に学生の間で広まったもので、正式な記念日ではない。だが 2009 年にアリババが独身層をターゲットにした大幅値引きのセールを始め、それ以来ほかのネット通販業者も追随するようになった。自分へのご褒美を買おうという訳かもしれない。ネット小売産業の急速な発展は、中国市場の需要と大いに関係がある。商務部研究院消費経済研究部の趙萍副主任によると、中国は人口の規模が大きく、ネット利用者が多いため、市場ニーズも全体的に大きいという。（人民網日本語版による）実店舗の小売産業と比較すると、ネット小売には時間や空間などの制限がなく、このことが消費者を強く引きつける力になっている。趙副主任は、「現在の実店舗の小売産業には配置が不合理、情報サービスが不足、商品在庫が相対的に少ないといった問題があり、特に遠隔地の農村や中部・西部地域では実店舗の少なさ、サービスの不十分さが問題になっており、ネット小売産業はこうした不足点を補っている」と話す。共産主義時代の中国では計画経済のもとに生産が行われ、消費者は品物を選ぶことも、好みのものを購入することなどできなかった。改革開放が進んだ 1990 年代でも、百貨店では陳列棚の商品を手にすることができず、係員から伝票をもらい、会計所で支払いを済ませ、支払済み印のある伝票と交換に始めて品物を受け取ったものである。売り子も会計係も一人として笑顔や｢ありがとうございます｣などと言わなかった。また、ニセモノやコピー商品の多い中国では、一般的に対面取引への信頼感が低いことがネットショッピングを盛んにしていると言えよう。最近、配送システムが画期的に改善してきたこともネットショッピングの発展に大きく寄与している。インターネットで発行される独身証明書。発行者は中国独り者男女管理センター。有効期限は 10 年間。「妻もなければ、愛人もなく、ガールフレンドもいない正真正銘の独身であることを証明する」中国では 8 割世帯がネットショッピングを利用ネットショッピングは中国で急速に発展している。関連の統計によると、03 年から 11 年にかけて、中国ネット小売市場の平均増加率は 120％に達して、売り上げ規模は世界一になった。中国中央テレビ（CCTV）が発表した「中国経済生活大調査 2013-2014 年」によると、13 年にネットショッピングをしたことのある世帯は 81.52％に達し、18-25 歳の若年層が特にネットショッピングを好むことがわかった。都市別にみると、ネットショッピングへの意欲が高いのは海南省、西蔵（チベット）自治区、江蘇省。よく購入される商品は衣類、書籍、デジタル家電製品だった。業界関係者の予測によると、2020 年には中国ネット小売市場の規模は最大で 4 兆 2 千億元（約 68 兆 9299 億円）に達し、現在の米国、日本、英国、ドイツ、フランスの市場の合計に相当するという。北京市内の配送風景