【中国からのレポート 第 3 弾】 2015 年 4 月 5 日梅艶先生 長く実り大きい一ヵ月 1 聂葛道場と対抗戦(週一回) 聂葛道場(聂道場と葛道場は最近合併した)との対抗戦を引率しました。聂 葛道場は北京左安門中学の校舎の4階全部を借り切り、学校とグランドを共有 しています。その代わりに道場側は無料で中学校の生徒に囲碁を教えています。 あの有名な葛玉宏道場長と話すことができました。葛道場は日本から余正麒、 卞闻恺、牛栄子など長期間の修行を受け入れており、また、昨年末からヨーロ ッパの強豪達の修業を無料で受け入れ、ヨーロッパ囲碁連盟の練習基地にもな っています。週末は練習日ではないのに、道場生達は自主的に来て、分厚い死 活大全集を手にしています。忘憂清楽集、玄玄棋経、官子譜、発揚論、天龍図、 鬼手魔手、呉清源、前田陳爾、趙治勲など、あらゆる詰碁傑作を集める計2万 問の死活大全集です。葛道場の王先生は、「これをクリアするには数年かかり ます。全部クリアできた人は間違いなくプロ試験に合格できます」と。しかし、 誰がこんな根性があるでしょう。私はそれを見ていて気が遠くなりそうですが、 葛道場の皆さんはコツコツ毎日解いています。我が丁道場の子だって、A、B クラスの子は「上集ならできているよ」、と教えてくれ、また驚きました。 「根 性のある人が勝つ」、とても13歳の口から出てくる言葉と思えません。 さて、この日の対抗戦は午前9対6、午後6対9の成績でした。 2 第一回全国アマチュア女子名人戦 早速朗報がありました。3月末に第一回全国アマチュア女子名人戦(本戦) が行われ、元道場生の呂烁さんが優勝、現道場生の楊棋棋さんが三位でした。 それぞれ賞金 5 万元(約 100 万円)と 1 万元(約 20 万円)をゲットしました。 長い年月苦しい修業に耐えての大きな実りとご褒美に間違いありません。 中国では、アマの大会すべてが賞金つきです。日々の道場練習でさえ、詰 碁一問、練習碁一局まで賞金か罰金にかかっています。道場間対抗戦で負け た人はその場で勝った人に金を渡しているのを見て、びっくりしましたが、 それが中国式です。すべて真剣勝負でなくてはいけないと、こういう形で身 につけさせています。 7月中旬呂烁さんも楊棋棋さんも内モンゴルで開催されるプロ入段試験に 参加します。今年こそ幸運を祈っております。 3 可愛い天才たち 丁道場は毎日朝一時間 12 問の詰碁テストを行われます。 A クラス B クラス C クラス このようなものが一日 12 問、月 240 問、年間 3000 問くらいの計算で、こど も達はほぼ暗記しています。ですので、読みの力は恐ろしいものです。 故郷から離れ、ここ北京で寄宿生活しているこども達は英龍とほぼ同じ年齢 でまだあどけないです。男の子なら毎日のシャワー、着替え、洗濯など本当に めちゃくちゃです。夏は言うまでもなく、いまでも時に誰かの臭い足で全教室 が異様なにおいになります。夜の検討時はその臭さに耐えられず、先生は「足 を洗ってこい」と命令するまでの始末です。しかし、臭い?!少年達は対局や 検討に出てくる手が非常に天才的で、私は検討を聞き入り、臭い部屋から出る ことを惜しみました。みんなは実験室で何日も閉じこもって研究に没頭する科 学者のような可愛い子達です。 いま自分の担当するクラスの子に身の回りの整理整頓、机をきれいにしてお くこと、シャワー、シャンプー、着替え、手洗いなどを教えています。毎日朝、 私は「親愛なる天才達」とあいさつし、みんなは「親愛なる梅先生」と答えま す。 4 環境に順応 空気、清潔の悪さ、一日 10 時間以上の勉強にイライラして鬱になりそうな気 持がいつの間にか飛んでいきました。英龍は慣れない中国料理に苦戦し、苦し い勉強に大泣きする日もあるが、病気がなく笑顔で毎日を過ごしています。さ さやかな楽しみは週末にスーパーで好きなものを買い、ケーキ屋さんと美容院 へ行くことです。 いまは毎日ただ勉強に夢中です。中国では、布石と定石は完全に研究されて いるものをこども達に暗記させているので、序盤ではみんなはプロみたいに正 しく打っています。中盤になると、詰碁で鍛えた読みを武器に、ヨセではヨセ 問題集も定期的に解いているから、これもまた正確です。時々先生達は研究し ている布石定石の秘密兵器をみんなに披露し、それを暗記したこども達はすぐ に実戦に使います。私達は次から次へと学んだ新しいものに夢中になり、親子 でこのハイレベルの勉強をともに楽しんでいます。少し北京を感謝するように なりました。
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