International 中国は1978年以後の「改革・開放」路線で工業化を進め、それに伴って都市部の人口も増え続 けてきた。一方で投資主導の経済成長は、都市部と農村部の格差拡大、環境破壊や社会保障制度の遅 れといった深刻な社会問題を生んだ。習近平政権が推進する「新型都市化」は、戸籍制度の改革や環 境への配慮を含んでおり、国内の経済格差を縮小させ、内需主導の持続的成長を実現する狙いがある。 そこには都市部と農村部の格差 を縮小させ、都市の発展による 内需拡大を新たな「成長エンジ ン」とする狙いがある。ここで 前提となる「新型」には主に二 つの意味がある。 一つは「ヒト」を中心とする 都市化である。これは 年3月 〜 年) 」が定 に国務院が公布した「国家新型 都 市 化 計 画( めたものである。ハコモノの都 内総生産に占める第2次産業の 急増しているため、都市計画が る。都市の数も都市部の人口も 市づくりでもある。単なる都市 の住民が安心して消費できる都 障制度の改革を優先し、都市部 市建設より、戸籍制度や社会保 割合)より大きいとされる。中 追い付かず、行政レベルの差に 開発より、生活者視点の「暮ら であ 国の都市化率は工業化率を下回 よる都市発展の格差も生じてい 500万人以上の都市は 中国では「改革・開放」以降 の経済成長に伴い都市部への人 年に逆転し、そ いて都市化率は、工業化率(国 14 っていたが、 都市人口は %突破 20 口集中が進んだ。都市化率(総 99 50 の割合)は1978年の ・9% 人口に占める都市部の常住人口 の後は都市化が加速している。 ビスの不足などに代表される 環境汚染、交通渋滞や公共サー る。さらに人口の多い都市では、 入れようとしている。 しのクオリティー」向上に力を 常住人口は約7・7億人となり、 よれば、 年末時点で都市部の 民経済と社会発展統計公報」に 月末に発表した「2015年国 年時点で100万 都市の数も1978年の19 3から2013年には657ま な発展格差をもたらした。 であり、都市部と農村部に大き 来と異なる新しい形” )の都市 習近平政権になってから、中 国政府は「新型」 (中国語で“従 16 で増えた。 新たな成長エンジン たが、農村部は後れを取る状況 「都市病」も顕著化している。 しかし、中国の経済成長は都 市部に飛躍的な発展をもたらし から2011年には %を突破 17 した。中国国家統計局が 年2 50 都市化率は ・1%に達した。 %を突破したといっても、実 在 す る。 そ の た め 都 市 化 率 が 中国では「農業」と「非農業」 に分かれる独特な戸籍制度が存 る。 「都市病」の改善―が挙げられ 市部と農村部の一体化改革③ 一般的な経済発展モデルにお せる抜本的な戸籍制度の改革が おいて、このギャップを縮小さ 中心とする新型都市化の推進に い た と 考 え ら れ る。 「ヒト」を 約2・3億人の出稼ぎ労働者が ぎ労働者の割合である。 年は 両者の差は総人口に占める出稼 り、大きなギャップが存在する。 らず、保障水準も低い。 と比べると十分に整備されてお 保険が含まれているが、都市部 の社会保障制度には年金と医療 児保険が含まれている。農村部 医療、失業、労災および出産育 市部の社会保障制度には年金、 なるシステムになっており、都 人 以 上 の 都 市 は 1 2 7 と な り、 化 を 積 極 的 に 推 し 進 め て い る。 中国の都市化は今後も加速 し て い く 可 能 性 が 高 い。 さ ま 小都市をつくるべきである。 レベルをアップさせ、新たな中 域(日本の町村に相当)の行政 く、農民が住みなれた郷・鎮地 の農民の流入を促すだけでな 行して、従来のように都市部へ 題として①戸籍制度の打破②都 新型都市化の実現に課題は山 積している。特に克服すべき課 る。 た住みやすい都市づくりであ 合理的に利用し、環境に配慮し もう一つは「環境・資源」を 重視する都市化である。資源を 09 13 15 56 際は、都市部人口の約 %は農 50 る一方で、総人口に占める非農 人口でみた都市化率が伸び続け 表に示すように、都市部の常住 業戸籍のままになっている。図 の開きは約3倍で依 にあるものの、両者 格差が縮小する傾向 市部と農村部の収入 改革が進められ、都 実施)を含めた農村 形 成 さ れ た。 近 年、 おける二元化構造が 差が拡大し、都市部と農村部に ている。その結果として経済格 発展したが、農村部は立ち遅れ 冒頭でも述べたが、中国経済 は都市部を中心として飛躍的に 極めて重要である。 年 また、大都市はより合理的な 都市計画をもって規模を抑制し る。 じた発展方針を決める必要があ を熟考した上で、都市規模に応 きである。都市計画や産業育成 資源」の問題を真剣に考えるべ 規模ばかりを拡大せずに「環境・ れまでの発展の教訓を生かし、 一朝一夕には解決できない。こ 起きている。要因は複雑であり 都市を中心として「都市病」が 北京の大気汚染、交通渋滞に 代表されるように、中国では大 化の進行に注目すべきである。 う。 今 後 も 中 国 に お け る 都 市 費 市 場 は 拡 大 し、 新 た な ビ ジ 格 差 縮 小 が 進 め ば、 中 国 の 消 つ つ あ る。 都 市 部 と 農 村 部 の 低 下 し、 消 費 の 構 造 が 変 わ り 支出におけるエンゲル係数が 近年は都市化の進行と併せ て、 都 市 部、 農 村 部 と も 消 費 る。 ーション力の向上にもつなが 人 材 の 流 動 性 が 増 し、 イ ノ ベ って戸籍制度の改革が進めば、 50 都市化率 40 農業戸籍率 非農業戸籍率 06 ネスチャンスも出てくるだろ き る。 新 型 都 市 化 の 実 現 に 伴 ば、 新 た な 経 済 成 長 も 期 待 で ざまな課題を乗り越えられれ 業戸籍の割合である「非農業戸 然として大きい。都 つつ、都市群を形成し、周辺に 非農業戸籍率=非農業戸籍の人口数/総人口 農業戸籍率=農業戸籍の人口数/総人口 都市化率=都市人口(都市部の常住人口)/総人口 (出典)中国統計年鑑(2014 年)を基に作成 11 05 07 09 1997 年 99 2001 03 60 変わる消費構造 籍率」は緩やかな増加にとどま 市部と農村部では社 ある中小都市の発展をけん引す 30 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 農業税の廃止( 会保障制度の格差も (富士通総研 経済研究所 上級研究員 趙 瑋琳) 12 る役割が期待される。これと並 30 存在する。両者は異 中国の都市化率と非農業戸籍率の推移 04 2016.4.11 2016.4.11 05 14 習政権が進める「新型都市化」 内需拡大で持続的成長目指す 国際 — International
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