《素問・金匱真言論第四》訓読 故曰.陰中有陰.陽中有陽.平旦至日中.天之陽. 陽中之陽也.日中至黄昏.天之陽.陽中之陰也.合 夜至鶏鳴.天之陰.陰中之陰也.鶏鳴至平旦.天之 陰.陰中之陽也.故人亦應之. 故に曰く。陰中に陰有り、陽中に陽有り。平旦より日中に至るは、 天の陽、陽中の陽なり。日中より黄昏に至るは、天の陽、陽中の 陰なり。合夜より鶏鳴に至るは、天の陰、陰中の陰なり。鶏鳴よ り平旦に至るは天の陰、陰中の陽なり。故に人もまたこれに応ず。 夫言人之陰陽.則外爲陽.内爲陰.言人身之陰陽. 則背爲陽.腹爲陰.言人身之藏府中陰陽.則藏者爲 陰.府者爲陽.肝心脾肺腎五藏.皆爲陰.膽胃大腸 小腸膀胱三焦六府.皆爲陽. 夫れ人の陰陽を言へば、則ち外は陽となし、内は陰となす。 人身の陰陽を言へば、則ち背は陽となし、腹は陰となす。 人身の蔵府中の陰陽を言へば、則ち蔵なる者は陰となし、府なる 者は陽となす。肝心脾肺腎の五蔵、皆陰となす。胆胃大腸小腸膀 胱三焦の六府、皆陽となす。 所以欲知陰中之陰.陽中之陽者.何也.爲冬病在陰. 夏病在陽.春病在陰.秋病在陽.皆視其所在.爲施 鍼石也. 陰中の陰、陽中の陽を知らんと欲する所以の者ものは、何ぞや。 冬の病は陰に在り、夏の病は陽に在り、春の病は陰に在り、秋の 病は陽に在りとなし、みなその所在を視て、針石を施すをなすな り。 故背爲陽.陽中之陽.心也. 背爲陽.陽中之陰. 肺也.腹爲陰.陰中之陰.腎也.腹爲陰.陰中之陽. 肝也.腹爲陰.陰中之至陰.脾也. 此皆陰陽表裏.内外雌雄.相輸應也.故以應天之陰 陽也. 故に背は陽となし、陽中の陽は、心なり。背は陽となし、陽中の 陰は、肺なり。腹は陰となし、陰中の陰は、腎なり。 腹は陰と なし、陰中の陽は、肝なり。腹は陰となし、陰中の至陰は、脾な り。此れみな陰陽表裏、内外雌雄相輸り応ずるなり。故に以って 天の陰陽に応ずるなり。 帝曰.五藏應四時.各有收受乎.岐伯曰.有. 東方青色.入通於肝.開竅於目藏精於肝.其病發驚 駭.其味酸.其類草木.其畜鶏.其穀麥.其應四時. 上爲歳星.是以春氣在頭也.其音角.其數八.是以 知病之在筋也.其臭醒. 帝曰く、五蔵 四時に応じ、各々收受有るかと。岐伯曰く、有り。 東方は青色、入り肝に通じ、竅を目に開き、精を肝に蔵す。その 病、驚駭を発す。その味は酸。その類は草木。その畜は鶏。その 穀は麦。それ四時に応じ、上って歳星となる。 ここを以って春気は頭に在り。その音は角。その数は八。ここを 以って病の筋に在るを知るなり。その臭は醒。 南方赤色.入通於心.開竅於耳.藏精於心.故病在 五藏.其味苦.其類火.其畜羊.其穀黍.其應四時. 上爲熒惑星.是以知病之在脉也. 其音徴.其數七.其臭焦. 南方は赤色。入り心に通じ、竅を耳に開き、精を心に蔵す。故に 病は五蔵に在り。その味は苦、その類は火、その畜は羊、その穀 は黍、その四時に応じ、上って熒惑星となる。ここを以って病の 脉に在るを知るなり。その音は徴。その数は七。その臭は焦。 中央黄色.入通於脾.開竅於口.藏精於脾.故病在 舌本.其味甘.其類土.其畜牛.其穀稷.其應四時. 上爲鎭星.是以知病之在肉也.其音宮.其數五.其 臭香. 中央は黄色。入り脾に通じ、竅を口に開き、精を脾に蔵す。故に 病は舌本に在り。その味は甘、その類は土、その畜は牛。その穀 は稷、それ四時に応じ、上って鎮星となる。ここを以って病の肉 に在るを知るなり。その音は宮、その数は五、その臭は香。 西方白色.入通於肺.開竅於鼻.藏精於肺.故病在 背.其味辛.其類金.其畜馬.其穀稻.其應四時. 上爲太白星.是以知病之在皮毛也. 其音商.其數九.其臭腥. 西方は白色。入り肺に通じ、竅を鼻に開き、精を肺に蔵す。故に 病は背に在り。その味は辛、その類は金、その畜は馬、その穀は 稻、それ四時に応じ、上って太白星となる。ここを以って病の皮 毛に在るを知るなり。その音は商、その数は九、その臭は腥。 北方黒色.入通於腎.開竅於二陰.藏精於腎.故病 在谿.其味鹹.其類水.其畜彘.其穀豆.其應四時. 上爲辰星.是以知病之在骨也.其音羽.其數六.其 臭腐. 北方は黒色。入り腎に通じ、竅を二陰に開き、精を腎に蔵す。故 に病は渓に在り。その味は鹹、その類は水、その畜は彘、その穀 は豆、それ四時に応じ、上って辰星となる。ここを以って病は骨 に在るを知るなり。その音は羽、その数は六、その臭は腐。 故善爲脉者.謹察五藏六府.一逆一從.陰陽表裏雌 雄之紀.藏之心意.合心於精.非其人勿教.非其眞 勿授.是謂得道. 故に善く脉をなす者は、謹しみて五蔵六府を察し、一逆一従、陰 陽表裏雌雄の紀、これを心意に蔵し、心を精に合す。 それ人に非ざれば教えることなかれ、その真に非ざれば授けるこ となかれ。ここに道を得ると謂う。
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