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VFM算定と現在価値
Fコンサルティング
VFM
バリューフォーマネー
PFIの手続きの中でVFMの算定が必要だ
と定められた為によく耳にするようになった
が、PFIだけの話ではない!
本来は全事業でVFMを算定しなければならな
い!
というわけで
VFMは長期計画・予算策定など全てにおい
て必要な概念である。
したがって、今回はPFIというよりは、PFIの導
入前に考えなければいけないVFMに的を
絞って説明します。
VFMとは何か
公共事業のやり方の違い
(例えば従来方式とPFI)による
財政支出の違い。
しかし!
財政支出の違いの計算方法自体も従来の方法とは違う!
企業会計を用いた財政支出の計算が必要!
企業会計とは
色々特徴があるが
・「複数年度」という点
がVFM計算に関ってくる。
複数年度
役所は単年度会計を使っているが、
本来あらゆる事業は長期間複数年度継続す
るので、
初期費用(建設費用など)と運営費を
トータルして考えるのが複数年度会計の意
義である。
事業開始前の投資判断
VFMの算定は事業開始前の投資判断です。
従来も事業開始前に投資判断はしています
が、あまり複数年度の精査をしていなくて、
運営赤字が続いたりするわけです。
運営費を考慮した投資判断
初期投資 10億円
年間運営は下記のような事業方式を考える。
年度
1
2
3
合計
A方式収支
-10億
-2億
-2億
-14億
B方式収支
-10億
-3億
-5億
-18億
A方式が採算性が上だ。
では次に
初期投資 10億円
年間運営は下記のような事業方式を考える。
年度
1
2
3
合計
A方式収支
-10億
-2億
-2億
-14億
C方式収支
-10億
-3億
-1億
-14億
採算性は同じか。
いやそうではない!
なぜ?どこが違うのか?
A方式の方が、早い時期に多くの収入がある
ので優れている。
なぜ、早い時期の収入が優れている?
早くもらえると気持ち的に嬉しいから。
それもそうだが、その理由は、通常の考え方では、早い時期
の収入は金利収入につながるから数字上にも得だから。
金利計算が必要になる
このように複数年度にわたる事業を考えるときには
金利の考慮が必要になる。
どうやって計算する?
VFMの計算では、割引キャッシュフロー法を用いて現在価値
化している。
それって一体何?
現在価値・割引キャッシュフロー法とは?
ディスカウンテッドキャッシュフロー法(DCF法)の訳で
民間企業はもちろん、国でもこの考え方を用いて費用便益
分析を行い、事業の評価を行っている。金利というより割引
率として用いる。
PFIが民間手法の取り入れをするのに付随して、PFIガイドラ
イン等で民間のこの方法を用いることになった、
PFIだからこの方法でやると言うわけではなくて、世間では1
以前から普及していた。
具体的な方法は次から
具体的にはどういうこと?
お金の価値は、金利の為
に年々変わっていく。金利
が4%だとすると、
今年 :10億円
来年 :10億4千万円
再来年:10億8千160万円
×1.04
×1.04
今年の10億円は使わずにいれば再来年10億8千
160万円になる。
言い換えると
金利が4%だとすると、
再来年の10億8千160万円は
今年の10億円。
再来年:10億8千160万円
来年 :10億4千万円
今年 :10億円
÷1.04
÷1.04
ということは逆に
来年の-10億円は
今年の-10億円÷(1.04)=9億6千150万
再来年の-10億円は
今年の-10億円÷(1.04)2=9億2千455万
と言う具合になる。この金利を割引率という。
ここで
先ほどの例
年度
1
2
3
合計
A方式
-10億
-2億
-2億
-14億
割引(割 1
る数)
割引後 -10億
1.04
1.042
-1億
9230万
-1億
8291万
-
-13億
7721万
というわけで
割引後の合計を純現在価値(NPV)と呼び、
一般的には
NPV=Σ(i年度収支/(1+割引率)のi乗))
という方法で計算されます。
そして方式によるNPVの差をVFMというわけです。
先ほどの例
年度
1
2
3
合計
A方式
-10億
-2億
-2億
-14億
C方式
-10億
-3億
-1億
-14億
はそれぞれNPVが
-13億2400万、-13億2800万となりますので、
VFMは400万、
支払方法の違いだけで400万円浮いたことになるわけです。
このように
3年間の事業だけでも支払方法に差が出ます
から、例えば10億円、20年間の事業を一括で
払うのと分割で払うのではかなりの違いが出
るわけです。
初年度10億円支出、NPV=10億
毎年5,000万円を20年支出、NPV=6億8千万
こんな具合で3億2千万の差が支払い金利を埋
めてしまう可能性もあるわけです。
ですから
PFI導入では、民間の借入と公共の起債で
は信用力の差から借入金利の差が出てしま
いますが、この借入金利差だけでなく割引率
を考えて計算することが必要になってきます。
このように長期的なファイナンスを活用する
のは金融機関のモニタリング機能を活かす
為にも重要です。
今までの話が信用できない
このNPVの計算で出る数字、本当に世の中
で使われてるの?信用できるの?
⇒民間企業の長期プロジェクトの採算性を見る際につか
われているだけでなく、金融関係ではこの計算を用いて
あらゆる数字が計算されているわけで、身近な年金や保
険もこの計算方法に基づいて成り立っています。
国の事業選定でも使われています。そのために国は割
引率を定めて通知を出しています。
また、エクセルの数式にも入ってるぐらい普及した方法で
もあります。
VFM算定手順は、
単年度あたり費用が公共比で何%になるか前例をみて掛け
る。(ここを積み上げでやると非常に難しいが、実際は外部
委託でも積み上げでやってないことが多い)
費用から民間の財務指標を計算し、この指標を満たす(民間
の採算性がある)委託費を試算。
委託費を現在価値に置き換えてVFM。
最終的に求めるVFM
•サービス水準を同じと仮定した場合の
従来方式とPFI方式でのライフサイクルコスト
(現在価値割引後)の差
•従来方式での公共負担とPFI時の公共負担
(要するにPFIのときに業者に払う委託料)を
比べる(PFI業者の負担ではない所に注意)。
具体例
割引率を決めて次表を埋める
(割引率の話は今までのとおり、今回4%)
年
1
従来
割引後
2
3
4・・・
合計
-1,000 -100
-100
-100
-1300
/1.04
/1.043
/1.044
/1.042
PFI時 ここを ここを ここを ここを ここを この差が
VFM
の公共 計算 計算 計算 計算 計算
負担
割引後 /1.04 /1.04 /1.04 /1.04
2
3
4
PFI時の公共負担を出す
年度
1
2
3
4・・・
合計
市の負担(委託料)
SPCのキャッシュフロー計算
委託料収入
借入
等しい
金融機関等の借入基準等を満たす委託料を設定する。④
建設費のどの程度を借入れるか見込む①
インフロー計
建設費・運営費
従来方式の何割減かで見積もる③
元利返済
借入額と金利を加味して計算する②
アウトフロー計
①どの程度借入するか見込む
SPCが初期費用の調達をどのようにするかを
見込む。
今回は、資本金を初期費用の1割程度用意
することが金融機関に求められることが多い
と聞くので、のこりの9割を借入れるとした。
株式会社の最低基準の1千万を資本金設定
する場合もある。
借入金利は、各種金利や他市の状況を見て
3.5%に設定。
②どの程度返済するか
①で決めた額をどの程度返済するか
金利や他市の事例をみて3.5%で元利金
等返済の額を計算
③従来方式の何割減か縮減率を見積もる
工事費などの官民格差はあるといわれてい
るので、従来、市が発注した場合と、SPCが
発注した場合に差が出ることとして計算する。
今回、他市の縮減率の平均等を利用した。
(別データ%)
運営費についても人件費の官民格差や一括
発注で運営しやすい施設ができることによる
運営面での効率化を見込み計算する。
今回、他市の縮減率の平均等を利用した。
(別データ%)
④金融機関等の借入基準等
・SPCの出資金は初期投資(建設費)の1割
程度と見込む(金融機関にこの程度求めら
れることがおおいとか)ので、借入は9割と見
込む。
・借入に対し十分な収入があるかが審査基
準となるので、
例えば
DSCR=(当該年度収入-当該年度費用)/
当該年度返済額
が1以上になるように委託料を取ることとなる。
④の続き
• 審査基準にはDSCR以外にもあり、
• これ以外にSPCにとっての利益率も基準に
用いる。
• 基準を満たす委託料を求めて、これをPFI
方式時の市側の負担としてVFMが計算さ
れる。
④のつづき
今回はDSCRが通常1.2くらいと言われてい
るのでこれで計算するとVFMが出る。
あとがき
PFIでは事業者選定時も現在価値で比較し
ていますが、他の複数年度事業にもこういう
考え方の導入が必要です。
例えば市場化テストなんかもこういう方法で
比較した方が論理的ではあるでしょう。