温暖化対策 COP21前の作業部会始まる NHK NewsWeb10/19 地球温暖化対策の新たな枠組みの合意を目指す、国連の会議、COP21を 前に、各国が交渉を行う最後の作業部会が、日本時間の19日からドイツの ボンで始まりました。先進国と発展途上国の間で対立する温室効果ガスの 削減目標や、資金支援の問題などを巡って、合意に向けた道筋を見いだせ るかが焦点となります。 地球温暖化対策を巡っては、先進国だけに温室効果ガスの削減を義務づけ た「京都議定書」に代わり、すべての国が参加する2020年以降の新たな枠 組みについて、来月30日からパリで開かれる国連の会議、COP21での合 意を目指しています。 この会議を前に、190余りの国が実務者レベルで交渉を行う最後の作業部会が、日本時間の19日午後から、ドイ ツのボンで始まりました。 開会式では、COP21の議長国、フランスのトゥビアナ特別代表が、「パリでの合意に向けて、交渉を前進させなければならない。与えられ た時間は少なく、今週末までには必ずバランスの取れた合意文書の草案を用意しなければならない」と述べ、交渉の加速化を訴えまし た。 作業部会では、世界の排出量の9割近くを占めるおよそ150か国が国連に提出した削減目標に、どこまで法的拘束力を持たせるかや、 各国の削減を検証し、目標を見直す仕組みをどのように作るか、それに、途上国の削減の取り組みや温暖化の被害などに対して、先進 国が資金支援をどこまで行うかなどについて交渉が行われます。 交渉では、経済発展を続ける途上国への削減を求める先進国と、資金支援の強化を求める途上国との間で対立が続いていて、COP21 での合意に向けた道筋を見いだせるかが焦点となります。 会議に先立って、日本政府の代表を務める外務省の水越英明地球規模課題担当参事官は、「COP21で重要な政治判断を下せるところ まで交渉を整理することが重要だ。先進国と途上国の考えの隔たりは依然として大きく、交渉は相当難航が予想されるが、日本としては、 技術大国として、気候変動に対処するためのノウハウを伝えてきた信頼を活用して、交渉がスムーズにいくよう、各国に働きかけたい」と 話していました。 交渉の焦点と各国の主張 地球温暖化対策を話し合う国連の会議、COPの交渉では経済発展に伴って温室効果ガスの排出量が増加している発展途上国にも削減 を求めたい先進国と、先進国により多くの削減を求め資金や技術面の支援を引き出したい途上国との間で長年、構造的な対立が続いて きました。 新たな枠組みの合意を目指す今回のCOPでは、各国が国連に提出した温室効果ガスの削減目標に、どこまで法的拘束力を持たせるか や、先進国と途上国の間で削減の責任に区別を設けるかどうか、それに一定期間ごとに削減目標の達成状況を検証し、将来の削減を進 めるため目標を上積みする仕組みをどのように作るかが最大の焦点になります。 また、2020年までに年間1000億ドル(およそ12兆円)必要とされる途上国の排出削減の取り組みや、温暖化に伴う自然災害の被害対 策などに対する「資金」を、先進国などがどのように確保し、上積みすることができるかも大きな焦点になっています。 日本やアメリカなどは削減目標に法的拘束力を持たせることには消極的で、経済成長が著しい途上国も削減に取り組む必要があるとして 先進国と途上国が等しく排出削減を進めるべきだ主張しています。また、途上国への資金支援は将来にわたっての増額は約束できないと しています。 これに対し、途上国は中国やインドなどのグループを中心に、先進国と途上国の責任を区別し、先進国は途上国に対する資金や技術面 での支援の強化を約束すべきだとしています。 さらに温暖化による海面の上昇などの被害が懸念される島諸国やEU=ヨーロッパ連合は、削減目標に法的拘束力を持たせるなどして厳 格に達成を義務づけるべきだとしています。 日本に求められるものは 温室効果ガスの世界第7位の排出国で、排出量全体の2.8%を占める日本は2030年までに、2013年と比べて26%削減する目標を 国連に提出しています。 日本の目標について、政府関係者は、ことし6月のG7サミット=先進7か国首脳会議で「野心的だ」などと評価する意見が出されたとする 一方、環境問題に取り組む国際NGOなどは、アメリカやEU=ヨーロッパ連合に比べて低い水準だと批判しています。 一方で日本は、2度の石油危機を通じて省エネルギーなどの排出削減につながる技術を培ってきたことや、世界第3位の経済大国である ことから、国際社会から技術や資金面での貢献が期待されています。 このうち、技術面では経済成長によって電力需要が急増しているインドネシアで、官民を挙げてエネルギー効率が高い石炭火力発電所の 建設を進めたり、ベトナムでトラック輸送の省エネ対策を支援したりしています。 しかし、このうち、石炭火力発電所については国際NGOなどから、効率が高いものでも二酸化炭素の排出量は多く、再生可能エネルギー を後押しする方針に転換すべきだとする批判も上がっています。 資金面では、途上国の温暖化対策を支援する国際的な基金に対して、アメリカに次ぐ15億ドル(およそ1540億円)の拠出を表明してい ますが、途上国からはさらなる上積みを求める声が上がっています。 国際交渉の中で日本が存在感を示すには、技術や資金面での支援をどう打ち出せるかが問われています。
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