生産 - 田辺三菱製薬株式会社

事業プロセス別 事 業戦 略
生産
基本方針
生産体制
医薬品を確実に患者さんのもとにお届けするために、災害を
患者さんに安心して使用いただける医薬品を製造するため
はじめとする不測の事態においても、医薬品を安定的に供給
に、品質確保に向けた取り組みを行っています。国内外から
するための体制を整えています。さらに、品質の確保を最優
調達した原材料の受入試験、原薬製造、製剤製造、試験検査
先にするとともに、より効 率 的な供 給 体 制を構 築するため
というすべての製造工程は、医薬品の製造および品質管理
に、調達、製造、物流、それぞれの機能強化に取り組んでい
基準( GMP )に基づいて行われます。また、CMC 研究 1 を行
ます。
う CMC 本部と生産工場との連携により、新薬の開発段階か
ら、高品質な製品を低コストで安定的に製造するための生産
調達における取り組み
技術の開発を行っています。
現在、国内 5ヵ所、海外 4 ヵ所の生産工場および製造委託
医薬品の原材料の調達にあたっては取引先との公平、公正、
先工場のもと、グローバルな生産体制を構築し、世界中の患
透明な取引に努めています。独自に制定した「購買規則」お
者さんに医薬品を供給しています。海外では、アジア地域に
よび「購買コンプライアンス行動規範」に基づき、関連法規
製造・販売拠点を置き、中国では天津田辺製薬が経口剤を製
の遵守や環境への配慮、人権尊重などを重視した購買活動
造しているほか、ミツビシタナベ ファーマ コリアおよび台湾
を行っています。
田辺製薬は、自国向け製品に加え、日本向け製品も扱ってい
医薬品原材料の選定(変更)にあたっては、当社で定めた
ます。また、タナベ インドネシアは、自国および東南アジア
取引先選定基準や、選定(変更)前および取引開始後の製造
諸国の製造拠点としての役割を担っています。なお、中国医
現 場 の 実 地 確 認 などを 踏まえ、取 引 先 で ある原 材 料メー
薬品事業の合理化・効率化を目的として、中国における輸液
カーの品質保証レベ ル、技術力、顧客指向性(柔軟な対応
事業から撤退することを決定し、2014 年 10 月には、輸液を
力)、経営力(継続性)などについて評価した上で判断してい
製造していた三菱製薬(広州)を譲渡しました。
ます。取引先に対しては、三菱ケミカルホールディングスグ
ループの企業行動憲章に照らし、取引先にも一緒に取り組ん
でいただきたい内容についてアンケートを実施しています。
1. 原薬の製造法および製剤化の研究、原薬および製剤の品質を評価する分析研究な
どの医薬品製造および品質を支える統合的な研究のこと。CMC とは、Chemistry,
Manufacturing and Control( 医薬品の原薬・製剤の化学・製造およびその品質
管理)の略。
さらに、相互理解を深めるために説明会を開催し、意見交換
を行っています。
生産拠点の再編
また、非常事態の発生を想定した在庫管理基準や情報連
グローバル基準の新薬供給体制の整備ならびに環境変化に
携 基 準などの ルー ルを定めることにより、BCM( Business
強い柔軟で効率的な生産体制への転換に向けた取り組みを
Continuity Management:事業継続マネジメント)体制を
進めています。当社国内生産子会社の田辺三菱製薬工場が
構築しています。災害をはじめとする不測の事態にも、患者
保有する生産拠点 5 拠点を、小野田工場および吉富工場の 2
さんに医薬品を安定的にお届けできるように供給体制を整
拠点に集約する方針です。この方針に則り、2014 年には足
えています。
利工場をシミックホールディングスに、2015 年 4 月には鹿島
2015 年度には、サプライチェーンをさらに強固なものに
工 場 を 沢 井 製 薬 に 譲 渡しました。大 阪 工 場 に つ い て は、
するために、サプライチェーンに関わる部門を SCM 推進部に
2017 年度末を目処に閉鎖する方向で、製造品目の移管等を
集約することを決めました。
推進しています。一方、吉富工場では新製剤棟が 2016 年度
に竣工予定であり、小野田工場では、2015 年度から2016 年
54
田辺三菱製薬コーポレートレポート 2015
度にかけて注射剤製造設備の再構築を進めています。
託先であるコラボクリエイトが運営する新規物流センターへ
さらに、中国、アセアン市場の需要拡大に対応した生産能
の移管が完了しました。安定供給および品質の確保を維持
力の増強に取り組んでいます。2015 年 1 月には、天津田辺製
しながらも、さらなるサービスレベルの向上や、社内外の環
薬およびタナベ インドネシアで新製剤棟がそれぞれ竣工し
境変化への柔軟な対応、継続的な物流コストの低減などの
ました。今後も各施策を着実に実行し、QCD(品質・コスト・
効果が期待できます。
安定供給)を満たしたグローバル体制を構築していきます。
物流における品質管理
物流体制
物流センターでは、薬機法 2 などの関連法規で求められる構
造設備や業務運用に関する様々な要件に準拠することはも
当社は、東日本、西日本の 2 拠点から医薬品を出荷する供給
とより、取り扱い製品の特性を踏まえた指針、手順書を整備
体制をとっています。両物流センターともに、安定供給を脅
して います。そ の 内 容を遵 守して 業 務を実 施 することで、
かす様々なリスクを低減するために、建屋免震構造や自家発
ハード、ソフトの両面から物流品質の維持を実現しています。
電機の設置、重要設備の多重化といった機能を保有してお
特に厳格な温度管理が求められる保冷品については、保冷
り、大規模災害発生等の緊急事態においても、重要医薬品
倉 庫 の 定 期 的な温 度バリデーションや温 度 計キャリブレー
の 供 給 を 継 続 できるよう設 置 されて います。一 方 の 物 流
ションを実施するとともに、異常発生時の緊急連絡システム
センター機能が失われた場合でも、相互でバックアップして
の導入や、自家発電機による電力供給維持などの非常時対
対応することで、医薬品の供給を継続することが可能です。
応を確立させることにより、休日・夜間も含め適切な温度が
また、各物流センターでは、倉庫管理システムにより製品
維持できるように管理されています。
在庫などを正確かつ詳細に管理しています。これにより、製
物流センターからの配送は、輸送品質基準に適合した輸
品特性や保管温度などの条件で多種多様に区分される製品
送業者によって行われており、各輸送業者は医薬品の特性・
を適切に管理することができるほか、受注内容に対して、正
重要性を踏まえた高レベ ルの管理を実施しています。さら
確かつ迅速に作業することが可能となります。加えて、この
に、物流過程での品質劣化を最小限に抑えるために、輸送業
ような設備、システムを利用する従業員に対して、定期的に
者への定期的な監査や輸送車両の温度バリデーションを実
教 育 研 修を実 施することにより、各 個 人 のスキ ルアップと
施しているほか、専用保冷ボックスの利用などにより、高品
ヒューマンエラー削減をめざすとともに、患者さんまでつな
質の医薬品を供給できる輸送体制を構築しています。
がる医薬品物流への意識を高めています。
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等
2. 旧「薬事法」。正式名は、
2014 年 5 月には、グループ会社の MP ロジスティクスが物
に関する法律」。
流センターで行ってきたすべての物流業務について、外部委
生産機能の強化
中国・アセアン市場の需要拡大に
新薬供給体制の整備と最適生産体制の実現に向けて
対応した生産能力の増強
田辺三菱製薬工場の生産拠点を 2 拠点に集約
新製剤棟
天津田辺製薬
場所:天津(中国)
稼働:2015 年 7 月
新製剤棟
小野田工場
吉富工場
場所:山口県
場所:福岡県
稼働:2016 年 11 月(予定)
譲渡
譲渡
閉鎖予定
新製剤棟
足利工場
鹿島工場
大阪工場
タナベ インドネシア
場所:栃木県
譲渡:2014 年 4 月
譲渡先:シミック
ホールディングス
場所: 城県
譲渡:2015 年 4 月
譲渡先:沢井製薬
場所:大阪府
閉鎖:2018 年 3 月(予定)
場所:バンドン(インドネシア)
稼働:2015 年 3 月
田辺三菱製薬コーポレートレポート 2015
55