冠飾句と関係文 302

冠飾句と関係文
冠飾句が関係文と同じような働き(名詞の修飾)をしている点に関する補充です。
(1)冠飾句
Das in Fäulnis übergegangene Fleisch ist ungenießbar.
腐りだした肉は食べられない。
(2)関係文
Das Fleisch,das in Fäulnis übergegangen ist,ist ungenießbar.
(同上)
一見すると,同じことを表わす表現形式が名詞の前にも後にも現れるわけで,なにかぜい
たくのような,ムダのような感じがしませんか?しかしドイツ語においてこのように,名
詞を修飾する文的表現(動詞的要素を含む表現形式)が名詞の前にも後にも現れるのは,
言語の一般傾向からながめますと,けっして恣(し)意的なことではないのです。すなわ
ち,どういうことかと言いますと,言語学の方で『「定形」の動詞が文末に置かれる言語
(たとえば日本語)では名詞を修飾する文的表現が名詞の前に現われ,「定形の動詞」が
第2位に置かれる言語(たとえば英語)では名詞を修飾する文的表現が名詞の後に現われ
る』ということが確かめられております。この観点からながめますと,ドイツ語では,み
なさんもよく知っているように,定形の動詞が第2位(主文の場合)にも,文末(副文の
場合)にも置かれるのですから,名詞の文的修飾句がドイツ語において名詞の前(=冠飾
句)にも,後(=関係文)にも現われるということはきわめて理にかなったことになるの
です。上述した名詞の文的修飾句の位置と「定形」の位置との関係をわかりやすくするた
めに図示してみると,次のようになります。
定形
文末
→ 日本語
定形
第2位 → 英語
→ 文的修飾句が名詞の 後
定形
文末
→ 文的修飾句が名詞の 前(冠飾句)
→ ドイツ語
→ 文的修飾句が名詞の 前
第2位
後(関係文)
1