ケーススタディ｜商圏特性と立地 SM の MD対応を見 MD対応を見るる⑥ 世界で最も注目される観光地・京都密集地「町なかスーパー」の出店戦略世界で最も注目される観光地・京都の出店戦略京都市・千本北大路周辺千本北大路周辺 SM の MD対応の第 6回目は、京都の町なかのスーパーマーケットを取り上げる。古くからの民家が密集した地域に新たにオープンしたイズミヤと地場のマツモト。それに以前からあるダイエーの店舗を巡ってどのような商圏なのかを探ってみた。国際観光都市・京都で暮らす人々にとって身近な買い物に欠かせないスーパーマーケットは、まだまだ十分とはいえない。古い景観を守りつつ、狭い土地で店舗を出店するのは一苦労だが、それなりの売上高が見込めるから、目が離せない地域だ。（商圏データは技研商事インターナショナルの「Mar ketAnal yzer 」を基に作成した）黒瓦屋根の町家が軒を連ねる足元商圏＝船岡山の頂上から写すギッシリ連なる黒瓦「京の町家」今年、京都は世界にある観光地のこの千本北大路の交差点を東に 100m ほど行った傾斜地に「イズミ北山通から一本北側の大宮交通公ヤ」がある。売場面積は 944㎡と小園前に、京都北部の亀岡市を本拠と中で、最も人気がある都市に選ばれぶりだが、屋上に 23台た。人口 147万人もの大都市であ分の駐車場も備えていりながら、古い神社や仏閣、史跡なるので、車客には便利。どが点在し、人々が日々の生活を送イズミヤの裏手は小っている――こんな町の雰囲気が世高い山になった史跡の界的にも魅力になっているのだろう。船岡山が広がっている。今回は京都の北区、2015年の 2 標高 112m の頂上に月末にオープンした「デイリーカナ登ってみた。木々の間ートイズミヤ千本北大路店」を中心からは黒い瓦屋根の町とした半径 1. 5km 圏の地域を取り家（町屋）が連なってい上げる。る様子がよく見える。京都の町は「碁盤の目」のように低層階のマンションも道路が通っているといわれるが、中増えているようだが、心部を離れると、ややいびつになっメインは黒屋根だ。てくる。しかし、南北を結ぶ千本通と市内を東西に通る北大路通が交差するのは「大体このあたり」と見当がつくのがいいところだ。イズミヤ VS マツモトの構図イズミヤの北側の地名は「紫野（むらさきの）」という地域だ。京都市北区の閑静な住宅地で、船岡山の北方に位置する。近くには臨済宗の大本山・大徳寺や今宮道路上に大きな鳥居。京都の町なかならではの風景だ＝北大路・今宮門前交差点 02 週刊ストアジャパン 2015. 09. 28No. 854 山が控え、北山通が東西を結ぶ。神社、京都市北部の住宅地としても有名な北千本北大路交差点から半径 1. 5km の商圏特性世帯数人口平均世帯人員人口構成比 14歳以下 15歳～ 29歳 30歳～ 49歳 50歳～ 64歳 65歳以上夜間人口比率昼間人口比率人員別世帯比率 1人世帯内 20代単身内高齢単身 2人世帯内高齢夫婦世帯 3人世帯 4人世帯 5人以上世帯持ち家比率内 1戸建て比率内共同住宅比率内共同住宅 1. 2階比率内共同住宅 3階以上比率 1世帯当り年収高 1, 500万円以上構成比 1, 000～ 1, 500万円 700～ 1, 000万円 500～ 700万円 400～ 500万円 300～ 400万円 200～ 300万円 200万円未満商圏内京都府平均 34, 967世帯 71, 703人 2. 05人 1, 122, 108世帯 2, 640, 170人 2. 35人 10. 4% 20. 3% 24. 2% 18. 6% 26. 7% 54. 0% 46. 0% 12. 9% 16. 8% 26. 7% 20. 2% 23. 4% 50. 0% 50. 0% 47. 4% 14. 3% 11. 7% 23. 8% 9. 9% 13. 8% 10. 3% 4. 7% 54. 6% 50. 4% 44. 2% 7. 0% 37. 2% 428万円 2. 2% 5. 3% 10. 4% 12. 8% 10. 0% 11. 9% 15. 3% 32. 0% 35. 7% 8. 0% 9. 9% 26. 8% 10. 5% 17. 2% 14. 0% 6. 3% 61. 9% 55. 5% 40. 2% 6. 9% 33. 3% 444万円 1. 6% 4. 7% 11. 5% 15. 5% 11. 5% 14. 6% 16. 5% 24. 1% 技研商事インターナショナル「Mar ket Anal yzer 」により作成京都市・千本北大路周辺高齢者の比率は京都府平均より高い傾斜地に建てられたデイリーカナートイズミヤ千本北大路店イズミヤの北側の商圏をそっくり取り込む形でオープンしたスーパーマツモト北山店する「スーパーマツモト」が、イズミヤの 3日前に北山店を出店した。店舗の規模は 977㎡で、イズミヤより若干大きく、駐車場も 50台ばかりある。昔ながらの町家が軒を連ねる足元商圏マツモト周辺は、坂道になっている。ここは買い物に不便なところだと思っていたが、南東に 200m ぐらいの場所に「グルメシティ北山店」があった。古い店舗だが、きっちりダイエーが商圏を押さえているところはさすが。古くからの “地の人” が多い千本北大路周辺は半径 1. 5m 圏内（以下、圏内）では 65歳以上の高齢者人口比率は 26. 7％に達する。京都府平均が 23. 4％だから、この地域は 3. 3ポイントも高い地域だ。これをイズミヤが出店した千本北大路交差点の東側で、北大路通を南北に挟んだピンポイントに限定すると、およそ 30％にもなる。圏内では高齢者の 1～ 2人、いわ技研商事インターナショナル「Mar ket Anal yzer 」により作成ゆる夫婦世帯は 9. 9％と京都府平均の 10. 5％より若干低いものの、高齢者単身世帯は 11. 7％と平均の 9. 9％とは逆に多くなっている。一方、圏内の持ち家世帯比率は 54. 6％で、61. 9％の府平均よりかなり低くなっているが、その分民間の 2015. 09. 28No. 854 週刊ストアジャパン 03 ケーススタディ｜商圏特性と立地 SM の MD対応を見る⑥ 借家世帯は 41. 6％と平均の 29. 4％を大きく上回っている。圏内の平均京都市・千本北大路周辺高齢者の単身世帯が比較的多い地域年収は 428万円、府平均が 444万円なので若干低いが、地域メッシュでの「ばらつき」はあまりない。こうしたデータから、高齢者を中心に、単身・2人世帯も多く、古くからこの地の町家、借家住宅に住み、平均年収もそこそこある、いわゆる “地の人”が多い地域だということが浮かび上がってくる。京の出店“開発担当者泣かせ” 商圏の特性を踏まえてイズミヤでは、足元 500m 圏内ではフレスコなど地場の小型スーパー以外には競合店がないので、売上予想を比較的高い 14. 5億円に設定した。しかし、マツモトの出店で状況に変化があった。北側からの集客を期待していたイズミヤにとっては、誠年収面での「ばらつき」はあまりないに頭の痛いことだった。だから、 500m 圏を徹底的に取り込む作戦に変更せざるを得なかった。1. 5km 圏近辺にはイズミヤの白梅町店や堀川丸太町店があり、京都の拠点を完全に押さえたライフや阪急オアシスの店舗もあるので、これはこれで正しい選択だ。イズミヤは千本通を 1km ばかり下った千本中立売でも、新店を建設中だ。年内のオープンを予定。狭い土地に、間口は狭いが奥行きがあり、ギッシリと建ち並んだ京都の町家。土地さえあれば、まだまだ出店の余技研商事インターナショナル「Mar ket Anal yzer 」により作成多層階で、衣食住は一通り何でも揃うグルメシティ北山店 04 週刊ストアジャパン 2015. 09. 28No. 854 地がある中心部だが、開店までこぎ当者泣かせ”であることは、昔も今つけるのは容易ではない。 “開発担も変わらぬことのようだ。