│ 特集│ 建設工事現場で掘られた「土」のゆくえ 建設発生土のセメント資源化 ▶ G4-EC7 建設工事に必要なものは、セメントだけではありません。 構造物をつくる前に、まず掘った⼟を処理しなければなりません。 太平洋セメントグループは、建設現場の⼟も資源としてリサイクルしています。 処理しなければ工事が止まる? 建設発生土 事の増加に伴って、膨大な量の建設発生土をいかに円 滑に処理するか、また有効活用するかが社会的課題と なっています。 2020 年に開催される東京オリンピック・パラリン 太平洋セメントは、建設現場にセメントを供給する ピックに向けて、首都圏では今、空港・道路等のイン だけでなく、この建設発生土を受け入れて、セメント フラ整備や都市のリノベーションのための大規模工事 の原材料として資源化処理を行っています。また、汚 が活発化しようとしています。 染などの無い良質な建設発生土については、鉱山の埋 建設工事で構造物をつくるには、まず地面を掘削し め戻し材として受け入れを行っています。 ます。掘り出した土砂は、現場の埋め戻しに使用して も余ることがあります。これが建設発生土です。場外 に搬出しなければ工事を進めることができません。工 セメント資源化による 建設発生土の有効利用 かつて建設発生土は処分場へ廃棄されていました が、2003 年に土壌汚染対策法が施行され、資源とし て利用する動きが強まっています。太平洋セメント は、土壌汚染対策法の施行以前より、建設発生土のセ セメント工場に受け入れた 建設発生土 18 TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2015 メント資源化によるリサイクルを行い、有効利用の推 進に取り組んできました。 建設発生土は有効活用すべき再 生資源ですが、セメント資源とし て利用するのは実は簡単なことで 建設発生土セメント資源化の受入実績 (t) 700,000 はありません。工事現場は常に工 期の問題があり、急に電話が入っ 617,608 600,000 521,775 500,000 500,297 て「今日すぐに受け入れてもらえ 545,293 504,722 ないと工事が止まってしまう」と 400,000 要請を受けることもあります。一 300,000 方で、セメントの品質を保つに 200,000 は、使用する土壌の成分・安全性の厳格な管理が必要で 100,000 0 2010 2011 2012 2013 す。安定的な受け入れの実現は、長年積み重ねてきた技術 2014(年度) 力と、グループならではの柔軟な対応力があるからだと自 負しています。今後は、汚染土壌の無害化製品の研究開発 を進め、対策のさらなる多角化を目指します。 建設発生土の処分は、まずサンプリングと分析から 始まります。セメント原料として利用可能であること 技術力と柔軟な対応力で 安定的な受け入れを実現しています を確認すると、搬出して陸路で中継基地または直接工 政彦 IC E を必要に応じて行います。処理が完了した建設発生土 資源事業部 土壌ソリューショングループ サブリーダー 守屋 VO 場まで運び、セメント原料として投入するための改質 は、海上輸送で全国のセメント工場へ送られ、セメン ト工場でセメント製造ラインに投入されます。太平洋 セメントは、分析調査から、輸送、工場での処理まで 社会の動脈と静脈の両方を担う をグループで一貫して請け負う体制を整え、建設発生 量も土壌の状態も処理のニーズも現場によって異な 土の発生地と全国展開している各工場とを有機的に結 る建設発生土に対して、分析から処理まで、幅広いソ びつける中間基地を整備しています。 リューションをワンストップで提供できるのは、太平 発生場所によって組成や成分がばらばらな土壌で 洋セメントならではの強みです。建設発生土を「出す も均一で高品質のセメントを製造できるのは、長年 側」と資源として「利用する側」が連携してこそ、様々 培った高度な技術があるから。さらに分析の結果土 なアプローチが可能になり、工事のスムーズな進行と 壌汚染が判明した場合でも、セメント工場まで安全に 発生土の資源としての有効利用が実現します。 輸送してセメント資源化によって無害化する、汚染が 太平洋セメントは、現場から建設発生土を受け入れ 判明した場所で重金属などの汚染物質が溶出しない てセメントを生産する静脈機能と、現場にセメントを よう処理するための不溶化材を提供する等、汚染の状 供給する動脈機能の両方を担うことで、社会基盤整備 況と現場のニーズに応じた様々な選択肢を提供して の現場を支え、同時に資源循環型社会の実現を目指し います。 ているのです。 太平洋セメントグループによる建設発生土の資源利用・無害化 建設現場 分析 中継基地 そのまま 再利用可能 ・改正土壌汚染対策法 にしたがって、土壌検 査を実施します ・セメント原料として の受け入れを想定す る場合は、鉱物組成と 微量成分の含有量を 測定します 処理が必要 陸上輸送 建設発生土 汚泥/建設汚泥 改質/汚染の除去 セメント原料として投入 するための改質/汚染 の除去を行います セメント工場 海上輸送 セメント資源化 セメントの品質を一定に 保つために、ロットごと に成分が異なる土壌を 管理して投入します 原位置不溶化 汚染が判明した場所で 汚染物質が溶出しない よう不溶化剤等を使っ て処理します TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2015 19
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