品質・技術・研究開発

マネジメント
環境への取り組み
社会との取り組み
〜 お客様とともに 〜
品質・技術・研究開発
当社は100年以上にわたるセメント製品の製造によって培ってきた製造・品質管理技術により、
製品に対する安全・安心を保証する取り組みを推進しています。
品質保証に取り組む姿勢を明らかにした品質方針のもと、業界トップクラスの品質を維持し、
国内外の市場における当社ブランドの信頼に応えるべく、システムおよび製品の継続的な改善を行っています。
品質方針
います。その結果、太平洋セメント発足当時に40~
G4-DMA
60 件発生した品質課題が、ここ数年は20~30 件 / 年
当社は1998 年の太平洋セメント発足時に経営方針
まで低減できています。品質課題については、2012
に基づいて品質方針を定め、この品質方針を組織全体
~2014 年度の件数(平均)に対して毎年 20%減を目
に周知するように取り組んでいます。品質方針を実現
標にして2015 年度から活動を進めていきます。
▶
するため、従業員一人ひとりが品質方針に基づいた活
また、2013 年度から当社製品だけでなく、グルー
動を行うことで、確かな技術と品質保証体制を確立し
プ会社の製品についても品質保証体制を拡充し、重要
て高品質な製品・サービスを提供し、お客様に信頼さ
課題の抽出や解決に向けて各部門横断的な活動を進め
れ、期待される企業であり続けるように努めています。
ることで太平洋ブランドへの信頼感と顧客満足度の向
上を図っていきます。
【 品質方針 】
ユーザーニーズに即した品質設計を追求し、
■ QMS概念図
品質保証を確実に行い、顧客満足度の向上を図る。
お客様
品質要求
品質マネジメントシステム
▶
G4-DMA, PR1
当社では品質保証活動の取り組みとして、
「各種セメ
営 業
研究・開発部門
品質要求事項の明確化
品の設計・開発および製造」を登録範囲として、品質
品質要求事項のレビュー
マネジメントシステムの国際規格 ISO9001(JIS Q 品質要求事項に応じた品質設計
9001)の認証を(財)建材試験センターより取得してい
試製・評価
月より1つの本社サイトにスリム化したQMSへと再構
築し、ISO9001の要求事項である「トップマネジメン
トの責任」
、
「業務の継続的改善」
、
「顧客満足度の向上」
への取り組みを充実させています。
● 顧客との関係の強化
「顧客満足度の向上」への取り組みを最重要課題と
捉え、各部門間で定期的な情報交換・連絡を実施し、
お客様の要求に応える品質重視の製品づくりを徹底
しています。お客様よりいただいた製品品質、デリバ
リー等のサービスに関する要望は、支店・営業所等の
営業・技術担当が窓口となって情報収集し、これら情
報を分析・改善してフィードバックするように努めて
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2015
資材調達
流 通
技術サービス
ント製品、各種クリンカ製品、各種セメント系固化材製
ます。製造工場ごとに構築していたQMSを2013 年 4
48
製品・技術サービス
営業部門
出荷検査
製造部門
●製造条件管理
●工程内での品質つくり込み
●工程内検査
受入検査
品質・技術・
品質・技術・
研究開発
公正な取引
セメントの安全性
安全で健康な
職場づくり
社会との
コミュニケーション
■ 「普通ポルトランドセメント」の微量成分含有量の推移(単位:mg/kg)
▶
1987年度
2010年度
2011年度
2012年度
2013年度
2014年度
平均
-
490
453
403
449
377
最大
-
595
503
543
583
418
最小
-
403
412
266
352
321
平均
-
67
73
67
69
75
全クロム 最大
-
79
81
81
81
86
最小
-
50
58
59
55
65
平均
17.4
6.9
7.2
5.8
6.0
7.4
最大
32.3
8.1
8.8
6.6
7.2
8.6
最小
5.3
5.6
6.1
5.4
5.1
6.1
平均
556
553
430
474
526
540
最大
1,059
830
547
682
689
711
最小
137
385
176
284
403
412
平均
221
61
63
63
62
61
最大
668
89
99
105
97
85
最小
18
45
44
42
40
42
平均
122
150
155
142
189
183
最大
233
281
246
224
277
281
最小
17
94
104
88
131
131
平均
17
8
10
10
12
12
最大
39
24
24
26
25
30
最小
2
2
2
3
4
5
平均
-
0.6
0.5>
0.6
0.6
0.7
最大
-
0.7
0.5>
0.6
0.6
0.8
最小
-
0.5>
0.5>
0.5>
0.5>
0.5>
1.8
G4-PR1
昨今、あらゆる製品に対し安全・安心が求められて
フッ素
おり、社会資本整備に欠かせない建設材料であるセメ
ントについてもその例外ではありません。
静脈産業であるセメント業界では、天然資源の代替
として古くより高炉スラグ、石炭灰、副産石膏などの
産業系廃棄物・副産物を活用しており、当社の場合も
都市ごみセメント資源化システムの技術開発による生
水溶性
六価
クロム
亜鉛
活系廃棄物のほか、建設発生土、建設廃材などのセメ
ント資源化を実施しています。廃棄物をセメント工場
鉛
に受け入れるにあたっては、廃棄物の搬入・一時保管
は密閉型のトラックや置き場を使用するなど、飛散防
銅
止や悪臭防止を図り、周辺地域や工場内の環境保全に
努めています。
ヒ素
また、廃棄物に限らず天然原料にもクロム、鉛など
の重金属類が微量に含まれていますが、セメント工場
セレン
では廃棄物の受け入れ量増加に対応して微量成分の管
理強化を行っています。新規の廃棄物の受け入れにあ
平均
1.5
3.2
3.0>
3.2
3.0>
カドミウム 最大
2.6
4.0
3.0>
4.0
3.0>
3.0
最小
0.6
3.0>
3.0>
3.0>
3.0>
1.0>
平均
-
0.007 0.005>
0.008
0.008
0.006
最大
-
0.014
0.005>
0.011
0.011
0.008
最小
-
0.005>
0.005>
0.005>
0.005>
0.005>
たっては発生元情報、化学成分、試験使用結果に基づ
く三段階の検査を行い、製品の品質や周辺環境に影響
水銀
を及ぼさないことを確認した後に受け入れ可否の最終
判断を行うなどルール化を徹底しています。
■ 「普通ポルトランドセメント」の微量成分含有量
安全データシート
(SDS)
による情報提供
▶
G4-PR1, PR3
セメント製品をより安全にご使用いただくため、危
険有害性情報を記載した SDS(安全データシート)を
ホームページに公開しています。
また、労働安全衛生法にかかわる規則改正により、
袋・フレコン等包装容器へのラベル表示が努力義務と
なりました。当社では、2014 年 8 月よりラベル表示
された袋・フレコンへの切替を順次行っています。セ
メント製品をより安全に使用いただくための情報を正
確に広く伝えることによって、使用者の安全・健康お
よび環境保全に努めていきます。
人権・多様性の尊重、
活気ある職場づくり
情報開示
土の含有量範囲※
(mg/kg)
1,600
1,500
900
800
700
600
500
400
300
200
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
1
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
棒グラフは当社2014年度の平均
540
377
183
75
61
12
0.7
(7.4)
1.8
0.006
フッ素 全クロム 亜鉛
(水溶性六価クロム)
鉛
銅
ヒ素
セレン カドミウム 水銀
※ 出典:H.J.M.Bowen著、浅見輝男・茅野充男訳『環境無機化学』
(博友社、1983年)
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2015
49
マネジメント
環境への取り組み
社会との取り組み
〜 お客様とともに 〜
放射能事故に対する製品の安全性の確保
▶
各種ユーザー会・工業会活動
G4-PR1, PR3
▶
G4-PR3
東京電力(株)福島第一原子力発電所の放射能事故の
当社では、セメントユーザーにおける事業の活性
影響により、2011 年にセメントの原料として使用し
化、技術競争力の構築等を支援するため、各種ユー
ていた一部の産業廃棄物について高濃度の放射能物質
ザー会・工業会を設立・運営しています。このうち最
が検出されました。当社は、使用するセメントの原燃
大規模のユーザー会である「全国太平洋セメント生コ
料の放射能濃度を厳重に管理することで、国が定める
ン会」では、北海道から九州まで10地区の地区太平洋
安全基準 を確実に下回るセメント製品を出荷する体
セメント生コン会を設立し、様々な活動を行っていま
制を整えており、その測定値については定期的にホー
す。技術的な取り組みとしては、技術懇談会・発表会
ムページに掲載するなど情報公開に努めています。
の開催、地区事情にあわせた特定テーマ活動のほか、
※ 2011年5月以降、国がセメントの放射能濃度にかかわる安全基準について、クリア
ランスレベルを100Bq/kg以下と定めています。
コンクリート技士・主任技士・診断士の資格取得支援
※
に注力しています。
セメント製品の放射能測定結果について
■http://www.taiheiyo-cement.co.jp/news/
sokutei.html
生コン会のほか、コンクリート製品会社間の相互発
展を目的として、「太平洋セメント舗装ブロック工業
会」、「スプリットン工業会」、「植栽コンクリート工業
太平洋ブランド力の強化
会」を設立して積極的な技術支援を行っています。今
▶
G4-PR3
当社は、当社グループを含めた「太平洋ブランド」
後ともユーザーの皆様にとって有意義な支援活動を推
進します。
の強化にも注力しています。ユーザーの皆様に当社お
よびグループ企業が保有している商材・工法へのご理
解を深めていただくため、主要な商材・工法を集めた
カタログ「太平洋ナビ」を 2012 年に発刊しました。
2014 年には、補修・補強材料の活用シーンを充実化
させた改訂版を発刊しておりますが、この度、ユー
ザーの皆様のご意見を反映させ、スマートフォンなど
タブレット型端末向けのアプリ化を行いました。
これにより、活用シーンごとの商材・工法が容易に
検索できるようになりました。ユーザーの皆様にタイ
ムリーな提案を行えるよう、今後とも内容の充実に取
り組んでいきます。
タブレット端末用アプリ
「太平洋ナビ」
50
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2015
■ 生コン会活動の一例(特定テーマ活動)
地区
北海道
内容
生コン工場での業務改善事例集の作成
東北
コンクリート強度コンテスト
(申告目標強度)
東京
生コン工場での業務改善事例集の作成
関東
骨材試験コンテスト
(群馬県)
北陸
高機能AE減水剤の使用による暑中コンクリート対策室内試験
中部
コンクリート強度コンテスト
(申告目標強度)
関西
コンクリート強度コンテスト
(申告目標強度)
四国
初期材齢におけるコンクリートの強度発現性の把握試験
中国
生コン工場での業務改善事例集の作成
九州
フレッシュコンクリートの工程検査の実態調査
品質・技術・
品質・技術・
研究開発
研究開発の推進
公正な取引
情報開示
人権・多様性の尊重、
活気ある職場づくり
安全で健康な
職場づくり
社会との
コミュニケーション
● 酸化マグネシウム系不溶化材「デナイト®」の開発
リニア新幹線や東京オリンピック・パラリンピッ
中央研究所と各事業部門との密接な連携のもと、セ
クなど大型の公共工事で発生する自然由来の重金属
メント・コンクリートを中心に、周辺分野である資
汚染土の対策が社会問題になっています。当社では
源、環境、建材・建築土木分野まで幅広く展開してい
汚染土壌事業を拡大するため酸化マグネシウム系不
ます。
溶化材「デナイト®」を開発し、2007 年から販売を開
始しています。デナイト®を汚染土に混合することで、
● セメント産業の環境負荷低減効果の
従来工法の掘削除去に比べて対策費用を安価に抑制
定量化の研究
することが可能となります。現在、大型公共工事に採
セメント産業の環境への貢献をより適切に評価する
用されるなど実績を増やすとともに、市場ニーズにあ
ために、大学等とも連携しながらセメントの環境影響
わせた新商材も開発・販売しています。今後も現場
評価について検討を進めています。セメントの環境影
が抱える様々な課題を解決する材料を開発し、社会貢
響としては CO₂ の排出がクローズアップされがちで
献を実現していきます。
すが、一方でセメント産業では多量の廃棄物を原燃料
として活用することにより環境への貢献もしていま
Denite®
す。開発中の手法では、各廃棄物・副産物の処理の困
難さなどを一つの指標として、廃棄物利用による環境
貢献の定量的な評価を試みています。さらには、CO₂
排出を含めた様々な環境影響を同一の評価軸で比較で
きるよう、既存の評価手法(下図)も活用しながら新た
な環境影響評価手法の開発に取り組んでいます。
周辺への飛散防止を考慮し、
デナイトをスラリーで施工。
飛散防止とともに混合精度を向
上させることが可能となります。
■ 日本版被害算定型影響評価手法(LIME2)による
ポルトランドセメントの統合化評価例
セメント製造における廃棄物の活用は、CO₂排出による環境負荷と比較しても同等以上
の貢献があることが示されています。
(円/t)
4,000
2,000
0
-2,000
-4,000
都市域大気汚染
酸性化
負荷
資源消費
地球温暖化
(CO₂)
廃棄物利用
貢献
-6,000
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2015
51