コミュニケーション力12.1

コミュニケーション力と聞く力
うちに勉強に来ている生徒の例になるが、彼はなかなか頭の回転も速いし、
自分の考えや希望を表現することには長けていて、自己主張はしっかりできる
タイプだが、逆に、相手を思いやり、尊重し、理解することが苦手で、相手が
言うことをしっかり聞き、内容を理解して、それに対して、自分の考えや、反
対意見を伝えることができない。だから、いつも自分の思うようにならないと、
すねて、つまらなさそうな態度でやる気を失い、レッスンへの態度も豹変する。
つまり、コミュニケーションが苦手なタイプである。
それでは、コミュニケーションがきちんと取れないことになるし、一方通行
の会話や、意思の伝達、自己主張だけになってしまう。
そこでいつも私が思うことは、様々なコミュニケーション手段を使い、相手と
の考えや情報のキャッチボールがうまくできて、円滑なコミュニケーションを
取るためには、まずは聞く力、相手が伝えたいことをきちんと理解することが
大切になる。
その力を培う手段の一つは、幼少期から親子、兄弟姉妹、祖父母などとの会
話やコミュニケーションの中で、ゆっくり話を聞く習慣をつけることだと思う。
自分の話をゆっくり聞いてもらえると、相手の話も聞こうとする、また、聞く
ようにしつけをする。まずは、親が子供の話をしっかり聞いてあげること、何
を言いたいかをしたいかを理解する。そして、それがいいのか悪いのか、その
理由をきちんと伝える。その繰り返しが聞く力を培い、相手にわかるように話
そうとする力も培う。相手を理解しようとする、尊重しようとすることになる。
その上にコミュニケーション力は育っていくものだと思う。
コミュニケーションの手段は、直接話す言葉だけではない身振りや表情、そ
して、手紙やメールなどの文字媒体、さらには写真や絵などいろんな手段がそ
こに介在する。様々な手段を使って自分を表現することはもちろんだが、様々
な手段から相手が発信している情報をキャッチして理解する力が必要になるだ
ろう。そこに、相手への思いやり、相互理解が必要になる。
今、子供にとって、この忙しい、慌ただしい世の中で必要なものは、ゆっく
り、しっかり自分の表現したいことを聞いてもらえること、また、聞くことの
大切さ、相互理解の大切さを親子の関係から身につけることではないだろうか。
電車の中で、子どもが隣にいるのに、携帯でゲームをしている母親や父親を見
るにつけ、そんな思いが増幅する昨今である。幼少期にしっかり親子のコミュ
ニケーションを楽しみながら子供のコミュニケーション力を培ってほしい。
コミュニケーション力
★ 電車内での出来事
西武線の電車が入ってきて、ドアが開くと勢いよく 2 人の男の子が飛び込ん
できて、座ろうとした。その矢先、ビジネスマン風の父親らしき男性が、「子
供は座るな、立ってろ!」と一喝!すると、子どもたちはしぶしぶドア付近
のところに移動した。しかし、そこで、3 人は楽しそうに会話を始めた。父
親が、いろいろ子供たちに話している。それも、先ほど一喝した時とは打っ
て変わってとても穏やかに、優しい口調で子供たちに何かを説明しているよ
うだ。
子どもたちは、その父親の話を聞きながら、聞き返したり、自分の思うこ
とを伝えたりしているようだ。サッカーの練習帰りのような服装をしている。
サッカーの話なのかなんなのかわからないが、とても和やかな空気を醸し出
していて、きっと、この時だけではなく、この父親は、忙しいだろうが、子
どもたちと向き合う時は、いろいろな話題を提供して、コミュニケーション
をしっかり取っているのだろうと感じさせてくれた。何とも心温まる風景で、
少し離れているので会話の詳細までは聞き取れなかったが、何ともうれしく
なるようなひと時だった。一駅、3 分ほどの状況だがとてもいい時間を過ご
せた。
そして、降車駅につき降りようとしたとき、わたしのななめ前の若い女性
が、放った一言がそんな私の気持ちを一瞬にしてがっかりさせてしまった。
というのは、「ばばぁ、邪魔なんだよ!」という言葉を放って、すたすた歩
いて行ったのだ。それが、誰に向かっての言葉かわからなかった(私にかし
ら?)が、何をそんなにいらいらしているのだろう?
混んだ電車の中で彼女にバッグがぶつかったのか、足を踏まれたのか、行
く手を阻まれたのか、理由は何であれ、そのような言葉を吐き捨てながら、
歩いてゆく彼女の背景を考えてしまった。コミュニケーション力を培ってき
ていないのではないだろうか?素敵な親子の後で、あまりにも淋しい光景だ
った。