超低周波磁界と小児白血病及び脳腫瘍に 関する我が国の疫学調査 (1999-2002) 国立環境研究所 首席研究官 兜 真徳 2003年5月文部科学省新興調整費報告書として公表 (http://www.chousei-seika.com/search/info/infonet.aspx) 背 景 これまでの屋内磁界曝露と小児白血病リスクの評価経過 米国のラピッド計画はpossibly human carcinogenic (2B)と評価, 1998 Greenlandのプール分析, 2000 Ahlbomのプール分析, 2000 IARCの評価、possibly carcinogenic (2B), 2001 WHO 国際電磁界プロジェクト (1996-2006) あと1ないし2つの大規模疫学調査による確認が必要 研 究 組 織 調査班メンバー Michinori Kabuto, DHSc (NIES) Hiroshi Nitta, DHSc (NIES) Seiichiro Yamamoto, Ph.D. (NCC) Naohito Yamaguchi, M.D. (NCC) Suminori Akiba, M.D. (Kagoshima U.) Yasushi Honda, M.D. (Tsukuba U.) Jun Hagihara, Ph.D. (Miyagi U) Katsuo Isaka, D.Eng. (Tokushima U.) Tomohiro Saito, M.D. (NICH) Toshiyuki Ojima, M.D. (Jichi Med. U.) Yosikazu Nakamura, M.D. (Jichi Med.U.) Tetsuya Mizoue, M.D. (UOEH) Akira Eboshida, M.D. (Hiroshima U.) Shin Yamazaki, M.P.H. (Kyoto U.) Shigeru Sokejima, M.D. (Kyoto U.) Yoshika Kurokawa, M.D. (NIES) Osami Kubo, M.D. (TWMC) 研究協力・支援 Participants’ families 5 Child Cancer (Leukemia) Research Groups MOES Research Promotion Committee (Chairperson: Dr. Fumimaro Takaku, Jichi Med. U.) 対象と方法 1. 小児白血病 (訪問面接調査) 2. 小児白血病 (郵送調査) 3. 小児脳腫瘍 (訪問面接調査) 本調査で考慮した基本的事項 パワー計算によれば相対リスクが1.5の場合症例は 1、000例程度必要となるがリスクが大きい場合には これより少なくて良い 診断から調査までの時間を短縮化 調査期間は3年だが実際使える期間は2.3年 訪問面接調査をするキャッチメントエリアの規模 予備調査により、小児の寝室の磁界を直接1週間 測定必要 磁界の季節変動の影響を最小化するため、測定の タイミングを症例と対照でできるだけ一致させる 症例の選出 診断時年齢15才未満の新規症例 リスト (2002・2003年のうち2.3年間) 5 つの小児がんグループのネット 1) TCCSG 2) CCLSG 3) 東北小児がん研究グループ 4) JACLS 5) 九州小児がん研究グループ 国立がんセンター中央事務局で集約 1,606名登録。小児人口2000万人=10万対3.5人/年 (大阪がん登録における推定とほぼ一致) 18 都府県、全国人口の53 % 訪問面接調査のためのキャッチメントエリア 対照の選出 ● 性、年齢および人口規模をマッチング − キャッチメントエリアについて多層ランダム抽出に より123,000名の候補リスト −1症例について10候補を選び、郵送により協力依 頼。3名までを対照とした。 −症例と日程を合わせて訪問面接調査 解析対象者 ALL 症 例 251 ( 80 %) 対 照 495 AML 61 ( 20 %) 108 Total 312 (100 %) 603 ALL:急性リンパ性白血病 AML:急性骨髄性白血病 訪問面接調査項目 潜在的交絡因子群を含む 米国NCI調査を基本 人口学的属性 妊娠後の転居歴 住居のタイプ 母親、父親および本人の学歴、職歴、電気機器 利用歴、飲酒・喫煙歴、ワクチン摂取歴など 母親・妊娠中のX線検査歴や自然流産歴など 小児の寝室の磁界測定方法 測定器: EMDEX-Lite 設置位置: 小児が就寝時の頭部位置(ただし、近傍 に磁界発生源のない場所を選定) 30秒間隔で20,160個の測定値 算術平均値を曝露指標とした “疑われる期間(period of inquiry)” Period of inquiry MF measure birth onset end diagnosis interview Pregnant period Length at the present house Exclude those who moved after diagnosis 小児白血病の症例と対照の特徴 - 診断時における居住期間症 例 N % 住居のタイプ 一戸建て 集合住宅 疑われる期間(%) < 80 80 ≤ 対 照 N % 312 100.0 603 100.0 173 133 55.4 42.6 350 246 58.0 40.8 155 157 49.7 50.3 316 287 52.4 47.8 45 267 14.4 85.6 75 528 12.4 87.5 現住所での居住期間 < 12 months 12 ≤ 小児白血病の症例と対照の特徴 - 性と診断時年齢 症 例 N % 対 照 N % 312 100.0 603 100.0 性別 男性 女性 178 134 57.1 42.9 343 260 56.9 43.1 診断時年齢 ≤5才 6-9 10 ≤ 148 98 66 47.4 31.4 21.2 336 145 122 55.7 24.0 20.3 本疫学調査の強み 国内のほぼ全ての新規症例がリストされた 診断から調査までの期間が短縮された 平均1.1年 調査は 環境と小児の健康 として実施された 主たる部分(キャッチメントエリア)については訪問面接調査した 小児の寝室の磁界は1週間測定した 磁界測定日を症例・対照間で一致させた 平均2.6日 室内のベンゼン測定 (東京と神奈川のみ) 室内ラドン測定(症例・対照=1:1) 室内の自然放射線(γ線)測定 (全対象者) 小児の寝室の磁界による 小児白血病 (ALL+AML)のリスク 条件付きロジスティック回帰分析 小児白血病 (ALL+ AML) 症例 小児の寝室の磁界 レベル (μT) < 0.1 0.1-0.2 0.2-0.4 above 0.4 対照 312 603 276 18 12 6 542 36 20 5 OR (95%信頼区間) 1.00 0.94 (0.52 - 1.70) 1.09 (0.52 - 2.32) 2.63 (0.77 – 8.96) 小児の寝室の磁界による ALLに対するリスク 条件付きロジスティック回帰分析 ALL 症例 小児の寝室の磁界 レベル (μT) < 0.1 0.1-0.2 0.2-0.4 above 0.4 対照 251 495 223 14 8 6 447 29 16 3 OR (95%信頼区間) 1.00 0.89 (0.46 - 1.75) 1.03 (0.42 - 2.52) 4.73 (1.14 – 19.7) case1 case3 case5 Hourly mean MF level,μT ALL cases (n=6) 5.0 4.5 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 0 8 16 0 8 16 0 Sun Mon 8 16 0 Tue 8 16 0 Wed o'lock 8 16 0 Thu case2 case4 case6 8 16 0 Fri 8 16 Sat control1 control2 control3 ALL controls (n=3) 5.0 小児の寝室の磁界レベル ≥0.4 µT の症例(上)と対照(下) Hourly mean MF level,μT 4.5 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 0 8 16 Sun 0 8 16 Mon 0 8 16 0 8 16 0 Tue Wed o'lock 8 16 Thu 0 8 16 Fri 0 8 16 Sat ● 小児白血病(ALL+AML)に対する小児の寝室の磁界レベ ルが 0.4 µTのリスクは 2.63 (0.77 – 8.96) 、ALLのみで は4.73 (1.14 – 19.7) であった ● 対照群における 0.4 µT 以上の割合は1 % 未満であった ● それら高レベル群は高圧送電線周辺の家屋のみではな かった ● 潜在的な交絡因子群の影響は見られなかった ● バイアスに関する感度分析を行った結果、上記磁界のリ クは説明できなかった
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