平成 20 年度電子情報通信学会東京支部学生会研究発表会 講演番号:161 D−8 日本語版 Araucaria の開発 ∼自然言語議論の分析と議論計算機能の実現∼ Implementation of the extended Araucaria for Japanese argumentation ∼For analyzing argumentation via natural language and computing argumentation semantics∼ 吉田 康二 Kouji Yoshida 浅野 裕子 Hiroko Asano 若木 利子 Toshiko Wakaki 芝浦工業大学 システム工学部 電子情報システム学科 Shibaura Institute of Technology 1 はじめに 人間社会では様々な議論があり, 議論の結果により対 象問題の意思決定が行われている. 近年, このような人間が行う自然言語の議論をダイアグ ラム表示を行って分析する Araucaria [1] というツールが 開発された. 他方,Araucaria の自然言語論証を形式論証 に変換する方法が新潟大学の澤村らにより提案されてい る [2]. また, 芝浦工業大学の望月により澤村らのアプロー チの具体的な変換方法を示した [3]. しかし Araucaria で は, (1) 英語の自然言語議論を GUI にダイアグラム表示 を行って分析することはできるが他言語には対応してい ない. (2) 複数の論証をダイアグラム表示し, 保存するこ とができない. (3) 対象議論の GUI による分析はできる が勝敗の判定が自動化されていない, などの課題がある. 本研究では日本語に対応し, 複数の論証をダイアグラ ム表示して議論計算を可能とし, かつ Araucaria とも上 位互換性のある日本語版 Aaucaria の設計開発を行う. 2 システム構成 図 1 に本研究のシステム構成を示す. 図 1 システム構成 本システム (図 1) は, 次の 7 つの Step からなる. Step1 議論テキストを日本語版 Araucaria に入力. Step2 日本語版 Araucaria で論証ダイアグラムを作成. Step3 論証ダイアグラムを AML II 文書に出力. Step4 AML II 文書を ELP 変換ツールを用いて, 拡張論 理プログラム (ELP) P を生成. Step5 ELP P から, 論証と攻撃関係を計算し議論フレー ムワークとして出力 (MakeAF). Step6 議論フレームワークを議論計算機能へ入力, 議論 の勝敗の判定を計算して結果を表示. Step7 ELP P のルール集合を議論エージェントシステ ムの知識ベースとして利用. 3 日本語版 Araucaria 3.2 AML の DTD の拡張 複数の論証の保存, 論証間優先関係の入力及び表示 を実現するため, DTD の定義の拡張を行った. 拡張版 AML(AML II) 文書の DTD の一部を以下に示す. なお, 下線部が変更及び拡張部分である. <!ELEMENT ARGS (SCHEMESET?, TEXT?, EDATA?, ARG*)> <!ELEMENT ARG (AU)> <!ATTLIST ARG id ID #REQUIRED pref IDREFS #IMPLIED > <!ELEMENT AU (PROP, REFUTATION?, (CA | LA)*)> <!ELEMENT PROP (PROPTEXT, OWNER*, INSCHEME*, ROLE*, TUTOR?)> <!ELEMENT REFUTATION (AU)> <!ELEMENT CA (AU)> <!ELEMENT LA (AU, AU+)> 3.3 議論計算機能 Araucaria にはサポートされていないが, 日本語版 Araucaria に追加する新機能として, AML II 文書から ELP へ変換を行い議論計算をする機能を提案する. な お AML II から ELP への変換は, [3] のツールを用い, 議 論計算は, [4] の研究で開発されたツールを用いて実現す る. 議論計算の手順は, 議論条件入力画面に, 議論フレー ムワークと条件を入力し, 実行をすることで, 議論結果画 面に Extension と正当化判定結果が出力される. 3.4 実装 日本語版 Araucaria の起動時の様子を以下に示す. 図 2 日本語版 Araucaria の実行例 ツールの開発状況は論証ダイアグラムを作成し, AML II 文書への保存ができる. AML II 文書を読み込み論証ダ イアグラムの表示, 議論計算機能は現在開発途中である. 4 おわりに 本研究では日本語版 Araucaria の設計及び開発を行い, AML 文書を拡張した AML II を提案した. また, 追加機 能として議論計算機能の追加を提案した. 今後の予定と して, AML II 文書を読み込み論証ダイアグラムとして GUI 表示, 及び議論計算機能の完成を目指す. 参考文献 本研究では, 既存の Aracaria の機能に加え, 複数の論 証ダイアグラムの保存を可能にした AML II 文書の設計, 論証間優先関係の表現, 議論計算機能の提案を行った. 3.1 日本語版 Araucaria の GUI 機能 開発した GUI は既存の Araucaria と類似しているが, 一部アイコンや操作が異なっている点がある. -161- [1] http://araucaria.computing.dundee.ac.uk/ [2] 高橋, 澤村: 議論分析ツール Araucaria における自然言語による 議論の多値議論の論理における形式的な議論への変換, 合同エー ジェントワークショップ&シンポジウム 2007. [3] 望月, 若木:Araucaria ツールの形式論証から拡張論理プログラム の自動生成, 情報処理学会第 70 回全国大会, pp.591-592, 2008. [4] 伊藤, 若木: 解集合プログラミングによる議論の意味論の計算, 情 報処理学会第 70 回全国大会, 2008. Copyright © 2009 IEICE
© Copyright 2024 ExpyDoc