H H IC Br I CH3 CH3CH2 C CH3 + Br- CH3CH2 立体配置(configuration)が反転(inversion)したことをWalden(ワルデン)反 転とよぶ・・・・先週ふれなかった(下の因子を観ていく最初に触れる。。。触 れなかった!) H H H HOBr C HO CH3 CH3CH2 Br C CH3 1 HO C CH3 CH3CH2 CH3CH2 2 + Br- 遷移状態 transition state ΔGキ (活性化エネルギー) 自 由 エ ネ ル ギ ー 1 2 CH3-Br 反応座標 この求核置換反応の図から、反応に影響を及ぼす因子は何かを考えてみよう SN2 反応に影響を与える因子 1)反応中心のかさ高さ(立体障害:steric hindrance ) 反応中心の炭素上の置換基の数が増えたり大きくなると立体障害が大きく なり、求核剤が接近しにくくなる(表 8.1/10.1 を参照)。 2)求核剤の求核性(nucleophilicity) ・求核中心がマイナス電荷をもつ方が相手に電子を与えやすいの で、求核性が強い(求核攻撃する原子が同じもの同士の比較)。 酸素系求核剤 – HO > H2O H O δ- O H H – CH3O > 窒素系求核剤 – NH2 CH3CH2NH– CH3OH > NH3 > CH3CH2NH2 ・求核中心の原子が異なるマイナス電荷をもつ場合 (求核中心の原子が同周期の場合) その電気陰性度の小さいものの方が陰電荷の束縛が小さいので 外に向かって電荷を出しやすく求核性が高い。 - NH 2 > OH > F ・ 求核中心の原子の大きさが大きく異なるマイナス電荷をもつ場 合(求核中心の原子の周期が異なる場合) 大きい原子の方が最外殻電子の束縛が少なく分極しやすいので相 手に電子を与えやすい。すなわち、求核性は高い。イチゴ大福 ハロゲン系の求核性の序列(プロトン性溶媒中): I ‒ > Br - > Cl - > F 硫黄系と酸素系の求核剤では: RS‒ > RO- ☞表 8.2/10.2 の求核剤の求核性の比較(MeOH 中の反応)。 ・立体的に嵩高い求核剤は求核性が低い。 3)脱離基の脱離能 各ハロゲン化物と水酸化物イオンの置換反応の相対速度を比較する (p392/411)。 *脱離基によって速度が大きく変る! ●脱離能の高いものは: 脱離後の脱離基(L - )の共役酸(HL)の酸性度(表 8.3/10.3)が 高いほど脱離能が高い。 これは、L - が安定なほど脱離しやすいことを意味している。 すなわち、共役酸 HL の酸性度が高いものとは、L - が安定 で解離しやすく H+ の濃度が高いためで、共役酸の酸性度が 高いほど脱離能が高いといえる。 H+ HL L- + 酸性度が高いとは:HL が解離して生ずる L がエネルギー的に安定な ほど平衡が右にかたむきプロトンの濃度が高く、酸性度が高くなる。 ●脱離基と脱離能の比較 ・原子半径が大きい脱離基は L- がより安定で脱離能が高い L- の安定性:I- > Br - > Cl - > F- (脱離能の順に同じ) 酸性度:HI(-10.0) > HBr(-9.0) > HCl(-7.0) > HF(3.2) ( )=pKa ・脱離基のマイナスイオン L- が共役安定化する場合に脱離能が高い O L- の安定性: 酸性度: CF3 S O O O > CH3 S O O O CF3 S O OH (-14) > CH3 S O - O (脱離能の順に同じ) OH (-0.6) ( )=pKa 4)溶媒の影響 ・溶媒和によって求核性が変わる(p395/414)。 *求核中心が溶媒和を受けやすいと求核性が下がる。 プロトン性極性溶媒(H2O や MeOH, EtOH など)中の求核剤は イオン-双極子相互作用 により溶媒和を受けている。 *求核剤のカチオン部が溶媒和を受けると、求核性が増す。アニオン部 とカチオン部が離れ両イオン間の電荷の相殺が弱まる結果陰電荷が 高まることで求核性が上がるため(P415/396)。そのような例を次に 示す。 ジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide,DMSO)やジメチルホル ムアミド(N,N-dimethylformamide,DMF)のような非プロトン性極性溶 媒は次のような極性をもっており、カチオン部を溶媒和する。これに よって 裸の アニオン種(naked anion)が生成し求核性が増す事 になる。 δ− δ+Me O S Me Me Me O O S Me S Me δ− δ+ NMe2 O C H このような溶媒和の例を次に示す。 ☞問題1 問題12/13まで、各自で解答せよ。納得する答えが出るまで 決して解答をみないこと。 【注】教科書には求核性と塩基性を関係付けて解説されている部分が 散見されるが、混同しやすい。そのため、問題5/問題4(旧版)は 無視すればよい。 【問7/6】(p397/416:旧版)のコメント *教科書の解答に対して注釈する:求核性の比較はいかに相手に電子 を与えやすいかを考察すればよい。酸素原子よりイオウ原子の方が原子 半径が大きく、分極しやすいので(電子を与えやすく)メタンチオレー トの求核性が最も強い。チオレートでは電荷がより分散されているので 水による溶媒和を受け難いということも求核性の強い要因である。他の 酸素系 求核剤のうち、電荷を持っていないメタノールが最も求核性が低 い。残り3種では、アニオン種の安定性を比較する。水酸化物イオンは 共鳴構造式が書けない(すなわち、電荷の分散がない)ので、一番エネ ルギー的に高い。すなわち、一番不安定で反応性に富んでいるので求核 性も一番高い。フェノラート(phenolate、フェノキシド)とアセター ト(acetate)は下の様に共鳴構造式が書けるが、同形の混成体からな る後者の方が安定性が高い。よって、求核性はフェノラート>アセター トとなる。 - O O CH3 - O- - O - O O O- O- O CH3 O CH3 O- O 以上の解説が解答となるが、教科書の解答と違って塩基性にも共役酸 にも触れていない。しかし、上の解説で求核剤の安定性を比較している 内容は、共役酸の酸性度を比較する際に考察するのと同じ内容である。 すなわち、共役酸の酸性度を比較する時は、その解離型のアニオンの安 定性を考察する。一方、求核性を比較する時にも同じアニオンの安定性 を比較する。 アニオンの安定性と共役酸の酸性度: 共役酸のpKa HOOe-level 16 (H2O) 10 (PhOH) O CH3 O- 4 (CH3CO2H) ☞【問題】光学活性ヨウ化物に NaI を作用させると、どのようなことが起 こるか、説明しなさい。 H C I NaI CH3 CH3CH2 ☞【問題】次の反応で、ヨウ化ナトリウムはどのような役割を担っている か。NaI が共存しない場合と速度がどのように変わるか。また、生成物 を書きなさい。 CH3CH2CH2 Cl + NaCN NaI ☞【問題】次の反応では、全て当モル量の反応剤が混合される。優先して 生成するものを示しなさい。 1) 2) I Cl Cl + CH3CH2O- + CH3CH2O- + CH3CH2S-
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