マイナス金利変動ローンの登場 羊がまんの金融機関 SAREX News 2015 年 2 月 ■ 超低金利変動型住宅ローンの登場 ■ 黒田日銀総裁の放つ異次元の金融緩和第 2 弾により 1%近傍をうろうろしていた短期変 動型住宅ローンの融資金利が、1%を切る商品が複数登場した(図参照)。 最も注目を浴びているのはイオン銀行住宅ローン短期変動型の 0.57 %である。この商品 の特徴は超低金利にとどまらず、ローン利用者に 5 年間イオン店舗での買い物 5%オフまで付けて販 売にしゃかりきになっている。 イオンが住宅ローン販売に血道を上げる理由は、 消費財やサービスから金融競争へと流通戦争のフ ェーズが移行しつつあるからだ。同じ流通系のセブ ン銀行や楽天銀行の後塵を拝するイオンとしては、 超低金利市場を背景に勝負に出たようだ。 しかし残念なことに、 イオン銀行は住宅ローン審 査のノウハウに乏しく借りにくいと評判はいま一 つである。 住宅ローン審査は金融機関とローン保証 会社の二重で行われる。 グループ内に保証会社を抱 えるメガバンクなどとは異なり、金融ビックバンで 銀行免許のハードルが下がり新しく設立された銀 行では審査ノウハウに乏しく、 審査については保証 会社におんぶに抱っこが実情である。 加えて、 融資金利と審査金利の乖離も超低金利住 宅ローン審査を厳しくさせる一因となっている。 住宅ローンには実行金利と審査金利の 2 種類が あり、審査金利は 4%±2%とされている。仮に 3,000 万円の融資を受けるとすると、0.57%で 30 年借入の場合、元利合計でおおよそ 3,400 万円と なる。しかし、審査金利の 4%で計算すると総借入 額は 5,000 万円近くに及び、いかに金利が下がろ うとも借入可能なハードルまでが下がっているわ けではない。 ■ ローン減税額が支払利息を上回る ■ 例えば 0.57%の金利が 10 年間変わらないと仮定すると、複利計算では元本込み 1.0645 倍となる。6.45%の正味利息に 2,000 万円、3,000 万円、4,000 万円の任意の借入額を入れ ると元本と利息が計算される。この利息額を今日現在の住宅ローン減税制度(一般住宅で 最大 400 万円、認定住宅は 500 万円)と比べてみると、どの借入額の利息よりもローン減 税額の方が上回る。なお、住宅ローン減税対象となる上限借入額は 5,000 万円である。こ こにマイナス金利が体現したといって差し支えないだろう。 住宅給付金のように 1 回こっきりの涙金ではなくて、10 年にわたってお金を借りること でお金がもらえるマイナス金利。どの道自分の払った税金から還付されるだけで降って湧 いた金ではないにしても、住宅ローン減税で想定しなかった事態が起きつつあることは事 実である。 金融機関が 2,000 万円のお金を貸しても 10 年間で受け取る利息は 129 万円である。月 に 1 万円ちょっと。驚くような超低金利変動型ローンも、高い事務手数料で帳尻合わせを 行っているので同情には及ばない。諸費用を含めた実質金利表示が金融コンプライアンス の常識なのに、未だ日本では実行に移されていない。十年一日の日本の住宅ローン市場に 愛想を尽かし、GE キャピタルやシティバンクはとうに住宅ローン市場から撤退している。 世界最低の住宅ローン金利更新中の日本の住宅金融はガラパゴス化の道を辿るしかな いのだろうか。 さて、このマイナス金利住宅ローンは使い得はあるのか。これまで変動型住宅ローンの 金利上昇リスクは耳にタコができるのを通り過ぎるくらい述べられてきた。そしてまさに デフレからインフレへのパラダイムシフトの時期にもあたり、変動金利住宅ローン危険説 が真実味を増してきている。その答えは政府のデフレ脱却宣言が出るまで、あるいは黒田 日銀総裁が退任するまでは短期金利は上がらないので、その間は安心して利用しても差し 支えないだろう。 こうしたマイナス金利住宅ローンに最適な借入層は頭金をたっぷり持っている住宅ロ ーン強者である。住宅資金贈与を受けたからといって頭金をたくさん入れる必要はない。 はなから住宅ローン残高を落としてしまえば、住宅ローン減税のメリットが減殺する。む しろ手持ち資金で、借入金利を少しでも上回るローリスクの投資に励む方が金利上昇リス クへの盾となろう。また、半年に一度見直しされる住宅ローン変動金利が想定外に上がっ てしまった場合、そこで繰上げ償還または固定金利への借り換え選択を行えばよいのであ る。 さらに究極のお値打ちな住宅ローンが平成 26 年度補正予算により出現する。長期固定 住宅ローンのフラット 35 S に 0.6%利子補給を行う住宅支援策である。これまで住宅融資 支援制度は、災害復興融資を除けば、割増融資とローン減税が中心で利子補給はほとんど 講じてこられなかった。フラット 35 の 2015 年 1 月の適用金利は最多の金利で 1.47%な ので、フラット 35S が利用できる場合は、当初 5 年間 0.87%となる。これは非常にお勧 めローン商品である。平成 27 年度内かつ早いもの勝ちなので、徹夜しても並んで申し込 む価値があるといっても大げさではない。
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