エッセンシャル・ミクロ経済学:練習問題Ⅴ

エッセンシャル・ミクロ経済学(2014 年度後期 神戸大学)
エッセンシャル・ミクロ経済学:練習問題Ⅴ
問題Ⅴ-1
外部性に関する記述として適切なものを選択せよ。
1.コースの定理によれば、負の外部性が存在する場合には、取引費用がなくても、当事
者間での交渉で最適な取引が達成されない。
2.正の外部性がある場合、市場均衡では社会的に最適な取引が達成される。
3.負の外部性がある場合、市場均衡での生産量は社会的最適の観点からは過大である。
4.負の外部性がある場合、社会的限界費用は私的限界費用を下回る
問題Ⅴ-2
ある化学製品を生産する工場は汚染物質を排出する(大気汚染)。この工場が
操業すると3億円の利潤を生み出すが、大気汚染のため、近隣住民に対して4億円相当
の被害を与えている。コースの定理の観点から、住民と工場との交渉の結果として正し
いものをすべて選べ。
(交渉の取引費用はゼロとする。)
1.工場が住民に4億円の補償金を支払って操業を続ける。
2.工場は住民に補償金を支払うことができず、操業を停止する。
3.住民が工場に3億円の補償金を支払って操業を停止させる。
4.住民は工場に補償金を支払うことができず、工場は操業を続ける。
問題Ⅴ-3
生産活動に比例して公害が発生する産業を考える。図において、直線ABは
需要曲線、私的限界費用曲線と社会的限界費用はともに平行な直線として、以下の空欄
にあてはまるものとして適切なものを選択せよ。
価格・限界費用
社会的限界費用
A
F
私的限界費用
D
C
G
E
需要量
O
X
B
Y
生産量
(1)この産業において、社会的観点から最適な生産量(取引量)は(
のときの総余剰は(
1.A
2.C
3.X
8.DFGの面積
1 )であり、こ
2 )である。
4.Y 5.OABの面積
6.OAGの面積
7.DEGの面積
9.ACDの面積
(2)市場機構に任せた場合、市場均衡は点(
1
3
)となり、均衡価格は(
4
)とな
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る。
1.A
2.B
3.C
4.D 5.E
6.A
7.G
8.X
9.Y
(3)この市場均衡において、
(財の消費から得られる)消費者余剰は(
6
剰は(
)であるが、公害の社会的費用は(
5 )
、生産者余
7 )であるから、(
8
)の分
だけ余剰の損失(死重的損失)が発生する。
1.OAGの面積
2.ACDの面積 3.ACGの面積 4.OCGの面積
5.DEGの面積
6.DFGの面積 7.CFGの面積 8.OCGYの面積
9.OCFGの面積
(4)この市場に政府が介入し、財 1 単位の生産に対して(
9 )の分だけピグー税を課
せば、社会的最適な生産量が達成される。
1.A
問題Ⅴ-4
2.B
3.C
4.X 5.Y
4つの店(A,B,C,D)が立ち並ぶ商店街にアーケードを造る計画がある。アー
ケードの建設費用は 120 万円である。各店のアーケードに対する評価額は 50 万円か 0 円
のどちらかであるが、他店の評価額はそのどちらであるか分からないとする。アーケー
ドはいったん建設されれば、どの店も利用することができるものとして以下の問に答え
よ。
(1)すべての店の評価額が 50 万円のとき、アーケードは建設されるべきか。2つの店だ
けの評価額が 50 万円のときはどうか。
(2)次のような建設スキーム(メカニズム)を考える。
①各店は自店の評価額(50 万円か 0 円)を申告する。
②50 万円と申告した店が3店以上であればアーケードを建設し、2店以下の場合は
建設しない。
③建設する場合、その建設費用は、50 万円と申告した店で均等負担する。例えば、
3店が 50 万円と申告した場合、各店の費用負担は 120÷3=40 万円である。すべ
ての店が 50 万円と申告した場合は、120÷4=30 万円である。
いま、すべての店の評価額は 50 万円で、A 以外の3店がすべて正直に 50 万円と申
告しているとしよう。このとき A 店は正直に自身の評価額(50 万円)を申告するだ
ろうか。しないとすると、それはなぜか。
(3)
(2)のメカニズムの費用負担ルール③を次のように修正したとしよう。
③’建設する場合、その建設費用は、申告額によらず、すべての店(4店)で一律 30
万円ずつ負担するものとする。
いま、すべての店の評価額は 50 万円で、A 以外の3店がすべて正直に 50 万円と申
告しているとしよう。このとき A 店は正直に自身の評価額(50 万円)を申告するだ
ろうか。
2
エッセンシャル・ミクロ経済学(2014 年度後期 神戸大学)
解答
問題Ⅴ-1
3
問題Ⅴ-2
2,3
この場合、工場が操業を停止することが最適である。
問題Ⅴ-3
(1)3 (2)9 (3)7 (4)3 (5)3 (6)4 (7)9 (8)6 (9)3
問題Ⅴ-4
(1)すべての店の評価額が 50 万円のときは建設すべき。2つの店だけの評価額が 50 万
円のときは建設すべきでない。
(2)正直に申告しない。なぜなら、A の申告額によらずアーケードは建設されるが、0 円
と申告すれば、建設費用を負担せずにすむからである。
(3)正直に申告する。この場合(2)と同様、A の申告額によらずアーケードは建設され
るが、費用負担も申告額によらず 30 万円であるから、虚偽の申告(0 円)をしても得
をすることはない。
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