ドイツ語のアクセント

ドイツ語のアクセント
ドイツ語の過去分詞の作り方を学ぶ際,ge- の付かない動詞があることを学びましたね。
そして,同時に,それらが第1音節にアクセントのない動詞であることも学びましたね。
もう一度それらの動詞を挙げてみましょう。
第1グループは be-,emp-,ent-,er-,ge-,ver-,zer- などの前つづりを持つ非分離動
詞,第2グループは -ieren で終わる外来語動詞です(たとえば besuchen,studieren)。
今,アクセントのある音節を[強],アクセントのない音節を[弱]で表示しますと,上
例の過去分詞のアクセントの配列はどちらも[弱-強]になります。もしこれらの過去分
詞にさらに,前つづり ge- を付加しますと,アクセントは,[弱-弱-強]というよう
に,[弱]が連続することになります。
× ge- be- sucht [ゲ・ベ・ズーホト]
× ge- stu- diert [ゲ・シュトゥ・ディーアト]
これらの動詞の場合,なせ ge- が付けられないのかということですが,私のこれから言
おうとすることは,もうある程度推測がつくことと思います。すなわちドイツ語一般に,
アクセントのない音節の連続,すなわち[弱-弱],特にアクセントのないe音の連続を
嫌う傾向が認められるのです。これらの事例をいくつか挙げることにしましょう。
1)不定形の語尾は本来,trink-en,sing-en に見られるように,-en です。しかし,語
幹がアクセントのないe音で終わる動詞の場合,不定形の語尾は -n になるという細則が
あります(たとえば lächeln,rudern)。もしこれらの場合,不定形の語尾として -en
を付かえたらどうなるでしょうか。
次に示すように,弱音のeが連続することになりますね。ドイツ語が[弱-弱]の連続を
嫌うために,これらの動詞の場合,不定形の語尾が -n になるのです:×lächelen[レ
ッ・ヒェ・レン],×ruderen [ルー・デ・レン]
2)男性名詞・中性名詞の単数2格の格語尾には -es と -s の2種類がありますが,語幹
が弱音のeで終わる名詞(たとえば:Lehrer,Onkel)の場合,2格語尾 -es は付けな
いとの細則がありましたね。もしこれらの場合,2格の格語尾として -es を付加したら
どうなるでしょうか。この場合も,次に示すように,弱音のeが連続することになりま
す:×Lehreres[レー・レ・レス],×Onkeles[オン・ケ・レス]。ドイツ語は,とも
かく[弱-弱]の連続が嫌いなのです
3)所有冠詞 unser/(特に)euer に格語尾が付く場合ふつう,語幹の,または語尾の
eを省くという細則も学びましたね。これらの現象も弱音のeの連続,すなわち[弱-
弱]を嫌うというドイツ語の性質のためなのです:
unser-es
(たとえば男性2格) → unsers/unsres
unser-em (たとえば男性3格) → unserm/unsrem
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以上,特に弱音のeの連続を扱いつつ,ドイツ語が[弱-弱]を嫌うということを示して
きましたが,このことから,非分離動詞の過去分詞になせ ge- が付加されないのかも納
得が出来ますね。非分離前つづりはすべて,次に挙げるように弱音のeを含んでいるので
す:be-,emp-,ent-,er-,ge-,ver-,zer-。すなわち,これらの動詞の過去分詞に geを付加して[弱-弱]になるのを避けるために ge- を付けないのです。また -ieren で終
わる動詞の場合も同様に,ge- を付けて[弱-弱]になるのを避けるために,ge- が付か
ないのです。
文法的規則よりも発音のし易さをドイツ語は選んだのです。ドイツ語は[弱-弱]がとに
かく嫌いなのです。別の言葉で言うと,みなさんが発音がし易くなるようにという,ドイ
ツ語の,みなさんへの愛情表現とも言えます。
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