動詞の三基本形

動詞の三基本形
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------不定詞
過去基本形
過去分詞
lernen
学ぶ
lernte
gelernt
trinken
飲む
trank
getrunken (英:drink
(英:learn
learned
learned)
drank
drunk)
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------みなさんが英語を学んだとき,learn-learned-learned,drink-drank-drunk
と,声を出して,過去形と過去分詞を暗記しましたね。ドイツ語では,上掲の,不定
詞と過去基本形と過去分詞の三つの形を,動詞の様々な形(たとえば人称変化形,完
了形,受動形など)を学習する際の基本になるものであるとの意味で動詞の三基本形
と呼びます。この三基本形を学ぶのがこの記事の目標です。
[注]以前は,これらの形を三つの「要(かなめ)」の形であるという意味で三要形
と呼んでいました。また,英語で「過去形」と呼んでいたものをドイツ語は「過去基
本形」と呼びます。なぜそのように呼ぶのかは,過去人称変化を学ぶときに説明しま
す。
ドイツ語の三基本形の作り方には,大きく言って,3種類あるのですが,それらを
一つひとつ見ていくことにしましょう。
1.第一タイプ(規則変化動詞)
一つのタイプは,上表の lernen のように,不定詞の語幹に -te を付けて過去基本形
を,前つづりの ge- と接尾辞 -t を付けて過去分詞を作ります。
大半の動詞がこのタイプに属するため,規則で覚えた方が合理的な動詞であるとの
観点から,これらの動詞をふつう規則変化動詞と呼びます。このように,規則変化動
詞の場合,三基本形の作り方は簡単なのですが,簡単だと思って甘く見ず,しっかり
その変化の仕方を覚えてください。
不定詞
過去基本形
過去分詞
-en
-te
ge-t
kaufen
買う
kaufte
gekauft
spielen
遊ぶ
spielte
gespielt
[注]これらの動詞は,幹母音が変化しないため,以前は,弱変化動詞と呼ばれてい
ました。
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なお,過去の語尾 -te は「テ」とはっきり発音しましょう。また,前つづり ge- に
アクセントが置かれることは絶対にありません。
三基本形の場合も,現在人称変化の際に口調上のeを入れる動詞(すなわち,語幹
が -d/-t に終わるものや -ffn- に終わるもの)ならば,過去基本形と過去分詞におい
ても,語尾 -te,-t の前に口調上のeを入れ,-ete,-et とします。
不定詞
過去基本形
過去分詞
warten
待つ
wartete
gewartet
öffnen
開ける
öffnete
geöffnet
2.第二タイプ(不規則変化動詞)
第一タイプが動詞の語幹に接尾辞や接頭辞を付けるだけでよいのに対して,第二タ
イプは,上表の trinken のように,さらに幹母音(語幹の母音)の変化が(過去基本
形ではかならず)伴うものです。しかし,幹母音がどのように変化するかは,多様で,
一つひとつ暗記するしか方法がないため,これらの動詞を不規則変化動詞と呼びます。
数は多くないのですが,大半が重要な動詞です。不規則変化動詞には,2つのグルー
プがあります。
2.1.その主要なタイプは,過去基本形を,幹母音を変え,しかし語尾は付けずに
作り,過去分詞は,前つづり ge- と接尾辞 -en を付けて作ります(したがって,ge-
en の形になります)。以下の図式では,幹母音の部分を -×- で表しておきます。
不定詞
過去基本形
過去分詞
-en
-×-
ge-×-en
gehen
行く
ging
gegangen
schreiben
書く
schrieb
geschrieben
kommen
来る
kam
gekommen
上例から見てとれるように,過去基本形の幹母音は,不定詞の幹母音とすべて異な
っていますが,過去分詞の幹母音は,kommen の場合,同一です。幹母音の変わり方
には,以下の3種類があります。
a)3つとも幹母音が異なるもの(gehen)
b)過去分詞と過去基本形の幹母音が同一のもの(schrieben,
c)過去分詞の幹母音が不定詞と同一になるもの(kommen)
[注]これらの動詞は,幹母音が変化するため,以前は,強変化動詞と呼ばれていま
した。
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なお,現在人称変化で不規則に変化する「a→ä 型」や「e→i/ie 型」の動詞はすべ
て,この不規則動詞に属します。
不定詞
過去基本形
過去分詞
schlafen (er schläft)
眠る
schlief
geschlafen
sehen
見る
sah
gesehen
(er sieht)
【雑談】--------かつてよくできる学生が fragen「尋ねる」の過去形を frug と言ったので,不思議が
ったところ,辞書の巻末の不規則変化動詞一覧をすべて覚えたとのことでした。frug
は,いわば現在では使われない古形なのですが,学生は,そのことを無視して,とに
かく表のすべてを覚えてしまったのですね。
また,別の学生は,sparen「蓄える」の三基本形を,sparen-sparte-gesparen と
言っていました。規則変化ですので,gespraren ではなく,gespart ですね。これは,
規則変化よりも不規則変化を学び過ぎたための結果のようでした。
2.2.不規則変化動詞のもう一つのタイプに属するものは,ほんのわずかな動詞で
す。これらは,幹母音が変わる点で不規則動詞に準ずるのですが,接尾辞が過去基本
形では -te,過去分詞では -t になる点で規則動詞に準じるのです。
不定詞
過去基本形
過去分詞
-en
-×-te
ge-×-t
bringen
運ぶ
brachte
gebracht
denken
考える
dachte
gedacht
wissen
知っている
wusste
gewusst
[注]これらの動詞は,強変化動詞の特徴と弱変化動詞の特徴が「混合」しているた
め,以前は,混合変化動詞と呼ばれていました。
動詞の三基本形の作り方の原則は以上で終わりですが,重要な動詞 sein,haben,
werden の三基本形を一括して挙げることにします。それぞれ作り方が少しずつ異な
ります。たとえば,haben は,過去基本形で b が落ち,t が重なる点だけが変則的で,
それ以外は,規則的です。
不定詞
過去基本形
過去分詞
sein
‥である
war
gewesen
haben
持っている
hatte
gehabt
werden
‥になる
wurde
geworden
3
3.細則
3.1.分離動詞の三基本形
三基本形の作り方の基本を学んだところで,さらにいくつか細かい点に触れること
にしましょう。まずはじめは分離動詞の場合です。
分離動詞の三基本形は,基礎動詞の三基本形に準じます。すなわち,分離動詞の基礎
動詞が規則変化動詞ならば,規則変化,不規則変化動詞ならば,不規則変化になるの
です。ただし,注意しなければならないのは,過去分詞の ge- は前つづりと基礎動詞
の間にはさまれるという点,そして過去基本形は分離した形で示すという点です。
不定詞
過去基本形
過去分詞
出発する
reiste ... ab
abgereist
ankommen 到着する
kam ... an
angekommen (不規則変化)
abreisen
(規則変化)
3.2.過去分詞なのに ge- の付かない動詞
過去分詞なのに ge- の付かない動詞が2種類あります。これは,発音上の都合で,
第1音節にアクセントのない動詞の場合です。
(a)その一つは,アクセントのない非分離前つづり(すなわち be-,emp-,ent-,er-,
ge-,ver-,zer-)を持つ非分離動詞です。ただし,この場合も動詞そのものの変化は
基礎になる動詞に準じます。
不定詞
過去基本形
過去分詞
besuchen
訪問する
besuchte
besucht
(規則変化)
erfinden
発明する
erfand
erfunden
(不規則変化)
(b)もう一つのタイプは,-ieren で終わる外来語動詞です。-ieren は外来語からドイ
ツ語の動詞を作る後つづりで,これが付く動詞は必ず -ieren の ie にアクセントが置
かれ,したがって,過去分詞に ge- が付加されないのです。
不定詞
過去基本形
過去分詞
diskutieren 討論する
diskutierte
diskutiert
studieren 大学で勉強する studierte
studiert
以上で,三基本形の説明は終わりです。大方の辞書の巻末に,不規則変化動詞の三
基本形がすべて出ているので,それらをしっかり暗記してください。かつて,辞書を
覚えては食べ,そして最終的に食べつくした人がいたそうです。真偽はわかりません
が。なせば成る!でしょうか?
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