Ⅰ.オバマ後のアメリカ

中東研究センター 情勢分析報告会(要旨) 2015 年 2 月 9 日
Ⅰ.オバマ後のアメリカ
中山
俊宏
(慶應義塾大学
教授)
本 来 、 オ バ マ 大 統 領 が 意 図 し た の は 、 内 政 面 で は 分 極 化 を 修 復 し 、 外 交 面 で は 9.11
テロ攻撃への過剰反応をリセットすることだった。しかし、前者については、アメリ
カ政治の分断はオバマ政権下でさらに進行し、後者についても「リセット」自体が自
己目的化し、「アメリカの退却」が多くの混乱を引き起こしている。
こ う し た 状 況 の 中 、 昨 年 11 月 の 中 間 選 挙 で オ バ マ 政 権 は 歴 史 的 大 敗 を 喫 し た 。 し
かし、選挙後、オバマ大統領は選挙で大敗を喫した大統領とは思えないような積極姿
勢を見せている。残された二年間、妥協するよりかは、進むべき道をあえて示し、レ
イムダック化を避けるという狙いだろう。大きな賭けに出たといえる。
一年遅れで先日発表された国家安全保障戦略も、基本的には楽観的なトーンだ。全
体 と し て は 2010 年 の 戦 略 を 引 き 継 い で い る 。 イ ス ラ ム 国 に し ろ 、 ウ ク ラ イ ナ 情 勢 、
シリア情勢にしろ、アメリカにとっての「実存的脅威」ではなく、むしろアメリカの
過剰反応による混乱をおそれているような節がある。できることしかやらないという
発想だ。しかし、その発想自体がアメリカができることを狭めてしまっている。
も う 2016 年 の 大 統 領 選 挙 に 向 け た 動 き は 本 格 化 し て い る 。 共 和 党 は 候 補 が 乱 立 し
そうな状況なのに対し、民主党はクリントンの動向がすべてのカギを握っている。ア
メ リ カ 国 民 は 、 政 治 に 疲 れ て い る 。 2016 年 は 実 際 に 「 仕 事 が で き る 人 物 」 を 選 ぼ う
という機運が高まるかもしれない。その構図はクリントンにとっては不利ではない。
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