最低雇用権と雇用に関する義務 - Minimum employment rights

最低雇用権と雇用に関する義務
本書では、雇用主と従業員に法律により適用され
ニュージーランド国内での就労権雇用主
る最低雇用権と義務の概要を紹介します。
は、ニュージーランド国内で合法的な就労権を持
つ人のみを雇用しなければなりません。
雇用主は従業員に最低雇用権を下回る条件での
雇用契約を求めてはなりません。
従業員とは、そのサービスにより雇用契約を結び、
その労働により支払を得る人を指します。 この支
払とは、賃金、給与、歩合、出来高払いなどを含
みます。
当省の VisaView ツールを利用すれば、従業員の
就労資格に関する情報が確認できます。 詳細
は www.immigration.govt.nz/visaview をご覧くださ
い。
最低賃金
雇用契約
新人労働者 (starting-out worker) や見習
各従業員は、書面による雇用契約を結ばなけれ
ばなりません。 雇用契約は、個別契約の場合も、
組合を通じた団体契約の場合もあります。
(trainee) を除く 16 歳以上の従業員は、成人向け
最低賃金以上の支払が受けられなければなりま
せん。
雇用契約には、法律により記載が義務付けられ
ている事項があります。 雇用契約の詳細につい
ては、ビジネス・イノベーション・雇用省 (MBIE) ウ
また、他の従業員の研修・監督に当たる従業員も、
全員が成人向け最低賃金以上の支払が受けられ
なければなりません。 新人労働者は新人向け最
ェブサイトをご覧ください。このサイトでは、雇用契
約書作成ビルダー
(www.employment.govt.nz/agreementbuilder) も無
料で利用できます。
低賃金以上、20 歳以上の見習は見習向け最低
賃金以上の支払が受けられなければなりません。
最低雇用権は、雇用契約書への記載の有無にか
かわらず、また、雇用契約書内でこれを満たさな
い記載があった場合でも、順守されなければなり
ません。
従業員は、各人の雇用契約 (IEA) に関し変更を
交渉する際、組合、弁護士、同僚などの第三者か
ら 中立的なアドバイスを受けることができます。
雇用主と従業員は、適用可能な最低賃金を下回
らない限り、いかなる賃金でも契約を結ぶことが
できます。
支払う場合、雇用主は従業員から書面による同
意を得なければなりません。
また、賃金から控除がある場合も、事前に従業員
新人労働者 (starting-out worker) とは、以下の人
を指します。
• 16 歳または 17 歳の従業員で、現在の雇用
•
•
主の下で 6 ヶ月以上雇用を継続していない
人。
18 歳または 19 歳の従業員で、6 ヶ月以上特
の書面による同意が必要となります。
ただし、源泉所得税、学生ローン返済、児童手当
など、一部の控除は法律で定められており、これ
定の社会保障給付金を受給しており、受給開
始以降いずれの雇用主の下にあっても 6 ヶ
月以上雇用を継続していない人。 いずれか
の雇用主の下で 6 ヶ月以上雇用が継続した
らについては従業員の書面による同意は必要あ
りません。
記録の管理
場合は、もはや新人労働者とは見なされず、
成人向け最低賃金以上の支払が受けられな
ければなりません。
雇用主は、従業員の就業時間数、給与、休暇日
数を正確に記録しなければなりません。
16 歳から 19 歳の従業員で、自らの雇用契約
に関連した職業において有資格者となるため
に、契約上年間最低 40 単位の職業訓練の
履修が義務付けられている人。
また、雇用契約書の署名入りの写しや、現在有効
な署名入りの就業規則を保管し、要請があった場
合は従業員にその写しを渡さなければなりません。
さらに、雇用主は以下のいずれかの書類の写しも
保管しなければなりません。
• 公共の祝日の代替に関する合意書
見習 (trainee) とは、以下の人を指します。
• 年齢が 20 歳以上。
•
•
•
•
自らの雇用契約に関連した職業において有
資格者となるために、雇用契約上年間最低
60 単位の職業訓練の履修が義務付けられて
いる人。
年次有給休暇の現金化に関する合意書
公共の祝日の代替に関する申請書
年次有給休暇の現金化に関する申請書
記録や保管が必要な情報・書類について
の詳細は、当省ウェブサイトをご覧くださ
い。
フルタイム、期間契約のパートタイム、臨時採用、
在宅勤務、報酬の全額または一部が歩合・出来
休憩に関する権利
高制の人などを含め、最低賃金は労働形態に関
わりなく、すべての従業員に適用されます。
従業員は、休憩や食事時間に関して以下の各権
利があります。
• 就業時間中に、休憩や疲労回復、また個人
16 歳未満の従業員は最低賃金の対象ではありま
せんが、その他の雇用権はすべて適用されます。
16 歳以上の従業員が新人労働者に該当するか
判断する場合、継続雇用期間には 16 歳になる以
•
前の雇用期間も含めることとします。
最低賃金は毎年見直されます。現在の
金額については当省ウェブサイトをご覧く
ださい。
的な所用を行う上で妥当な休憩・食事時間が
与えられること
その雇用主の下での就業期間の長さに応じ
た休憩・食事時間であること
ただし、休憩や食事時間の長さや時刻について特
定した規則はありません。それらについては、雇
用主と従業員がお互いに誠意を持って交渉してく
ださい。
賃金の支払
法律上、賃金は現金で支払わなければなりませ
ん。 銀行振込や小切手など、別の方法で賃金を
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一般的に休憩は 10~15 分間で、食事時間は 30
分間以上となっていますが、実際の時間は業界
や職種により異なります。所属業界の標準的な慣
雇用主は、最低 14 日前に通知する場合に限り、
クリスマス・正月期間などの休業時期に年次休暇
を取るよう、従業員に義務付けることができます。
行がわからない従業員は、その業界の協会や組
合に問い合わせてください。
ただし、雇用主の定める休業期間に公共の祝日
が含まれる場合で、その祝日が通常の就業日に
当たる場合、従業員は代替の有給休日が取得で
従業員と雇用主は、休憩時間の代償として報酬
の支払に合意することも可能です。ただし、休憩
が妥当であるにも関わらず休憩が受けられない
場合は、雇用主は従業員に報酬を支払う義務が
きます。
公共の祝日
年間に 11 日ある公共の祝日には、それが通常の
就業日に当たる場合であっても、従業員は有給で
休日を取得できます。
あります。
そうした報酬の金額を特定した規則はありません
が、支払われる報酬は妥当でなければなりません。
その場合、休憩と同様の価値がある報酬が妥当
とされます。
雇用主は、公共の祝日についても、従業員に日
当、または平均日当 (適用される場合) を支払わ
なければなりません。
乳児のいる従業員が授乳や搾乳を希望する場合、
雇用主は妥当で実施可能と考えられる範囲内で、
適切な休憩時間や施設を提供しなければなりま
また、もし従業員が公共の祝日に就労した場合に
は、就業時間の 1.5 倍分以上を支払わなければ
なりません。 さらにその公共の祝日が通常の就
業日に当たる場合、従業員は代替の有給休日が
取得できます。
せん。 この場合の休憩時間は、雇用主が別に合
意しない限り無給となります。
年次休暇
また、業務上または従業員の個人的な都合によ
り、雇用主と従業員は協議の上、公共の祝日に
代わり通常の就業日を休日に充てることができま
同一の雇用主の下で 1 年間の雇用期間が経過
する毎に、従業員は 4 週間の年次有給休暇が取
得できます。
す。 しかし、従業員が取得できる公共の祝日の日
数は低減できません。 公共の祝日の代替日も、
給与および休暇の計算上公共の祝日と同様に扱
うものとします。
また、従業員は書面で毎年の年次有給休暇のう
ち最大 1 週間分の現金化を要請できます。ただし、
雇用主は年次休暇を現金化するよう従業員に強
要してはならず、雇用契約においても現金化要請
を義務付けることはできません。
公共の祝日については、当省ウェブサイトの一覧
をご覧ください。また、同サイトには休暇と給与の
計算に役立つ休暇計算ツール Holidays & Leave
Tool (www.employment.govt.nz/holidaytool) をご
利用ください。
従業員が雇用を 1 年間続けずに退職する場合、
年次休暇に対する現金化は総収入の 8%に当たる
金額から、既に支給した分を差し引いた額となり
ます。
断続的に働く完全に臨時採用の従業員や、期間
契約の従業員は、特定の条件を満たせば、就労
状況に応じて年次休暇の現金支給を受けられま
す。 詳細は当省ウェブサイトをご覧ください。
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以下の各条件を満たす従業員は、育児休暇が取
得できます。
• 同一の雇用主の下で、平均で毎週最低 10 時
病気休暇
従業員は、雇用開始から 6 ヶ月を経過すると、病
気有給休暇が 5 日間取得できます。
•
その後は 12 ヶ月毎に 5 日間の病気有給休暇が
取得できます。病気休暇は以下のいずれかの場
合に取得できます。
• 従業員が病気やけがをした場合
•
•
•
従業員の配偶者またはパートナーが病気や
けがをした場合
従業員の扶養者が病気やけがをした場合
間就労した場合
同一の雇用主の下で、毎週最低 1 時間、か
つ毎月最低 40 時間就労した場合
同一の雇用主の下で、出産予定日または養
子の育児開始日に先立つ 6 ヶ月間または 12
か月間 (期間により権利内容が異なります)
就労した場合
雇用期間が 6 ヶ月間で上記の条件を満たす場合
は、16 週間の有給育児休暇が取得できます。こ
そして雇用主は、病気休暇に対して、従業員に日
当、または平均日当 (適用される場合) を支払わ
なければなりません。
の休暇は、雇用期間が 6 ヶ月間で上記の条件を
満たす配偶者またはパートナーに、その一部また
は全部を移譲することもできます。 なお、2016 年
4 月 1 日から、この有給育児休暇期間は 18 週間
その際に雇用主は医師の診断書など、病気の証
明となるものを求めることができます。 ただし、そ
に延長されます。
の証明を病気休暇の開始から 3 日以内に求める
場合は、従業員がそれを取得するための費用を
全額負担しなければなりません。 また、雇用主は
従業員に特定の医療従事者から治療を受けるよ
雇用期間が 12 ヶ月間で上記の条件を満たす場
合は、最長 52 週間の無給長期休暇 (育児休暇分
も含む) も取得できます。 この休暇は、雇用期間
が 12 ヶ月間で上記の条件を満たす配偶者または
パートナーに、その一部または全部を移譲するこ
う強要してはなりません。
ともできます。
忌引休暇
従業員は、雇用開始から 6 ヶ月を経過すると、忌
引有給休暇が以下の日数取得できます。
• 配偶者またはパートナー、父母、子、兄弟、祖
•
雇用期間が 6 ヶ月間の配偶者またはパートナー
は 1 週間の、そして雇用期間が 12 ヶ月間の配偶
者またはパートナーは 2 週間の、父親・パートナ
ー向け無給休暇が追加で取得できる場合があり
ます。 その場合、配偶者またはパートナーは上記
父母、孫、配偶者またはパートナーの父母が
死亡した場合:3 日
上記以外の人が死亡し、雇用主が従業員に
忌引が必要であると判断した場合:1 日
の条件を満たさなければなりません。
また、妊婦の従業員は、育児休暇に先立ち妊娠
休暇計算ツール Holidays & Leave Tool を利用す
ると、病気休暇や忌引休暇の計算が簡単にでき
に関連した理由なら最大 10 日間の特別無給休
暇を取得できます。
ます。
育児休暇の取得資格や従業員の休暇申請処理
育児休暇
については、当省ウェブサイトをご覧ください。 有
給育児休暇計算ツールの Parental Leave
Calculator (www.employment.govt.nz/paidparental)
特定の条件を満たす従業員は、有給・無給の育
児休暇が取得できます。
を利用すると、休暇計算が簡単にできます。
育児有給休暇中の給与は、雇用主ではなく、政府
により支払われます。
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その他の休暇
なお、試用期間中の従業員にはその他すべての
最低雇用権があります。
従業員は、労災によるけがや兵役訓練などの際
に、他の種類の休暇が取得できる場合もあります。
組合
従業員には、組合に加盟するかどうか、そしてど
フレックスタイム制
の組合に加盟するかを決定できる権利があります。
そして雇用主や他の何人もが、従業員の組合加
盟に関して理不尽な強要を行うのは違法となって
います。
すべての従業員は、就業時間や就業日、就業場
所の変更を申請できる法律上の権利があります。
雇用主はこうした申請を考慮し、特定の理由がな
い限り拒否してはなりません。 詳細
は www.employment.govt.nz/worklifeをご覧くださ
い。
雇用主は、組合に加入した従業員に求められた
場合、その組合との団体労働協約に向けた交渉
に臨まなければなりません。
平等な給与支払と平等権
雇用主は、人種、肌の色、国籍、出自、性別、性
的指向、婚姻・家族状況、雇用状況、年齢、宗教、
政治信条、障がい、組合活動への参加の有無に
より、採用や解雇、給与支払、トレーニング、昇進
また組合員は、通常の就業時間内に有給で組合
の会議(各回 2 時間以下)に年に 2 回出席できま
す。 組合費は、賃金から差し引き組合に支払わ
れるよう雇用主に要請できます。 組合員は、有給
休暇を取得して雇用関係に関する教育セミナーに
において従業員を差別してはなりません。
参加できる場合があります。
期間契約の従業員
雇用主は以下の場合に期間契約での雇用を提示
できます。
• 季節労働、プロジェクト・ワーク、休暇中の正
•
組合は職場への訪問に関し雇用主の承諾を得な
ければなりません。 その場合、雇用主は不当な
理由によりそうした承諾を差し控えてはなりません。
ストライキやロックアウトを含め、組合や団体交渉
に関する詳細は、当省ウェブサイトをご覧ください。
社員の代行など、正当な理由がある場合
期間契約となる理由、契約終了の方法や期
日を雇用主が従業員に告知し、従業員が雇
用契約書でそれに同意する場合
安全衛生
雇用主は、適切なトレーニング、監督、整備を行
他の雇用契約同様に、期間契約の雇用の場合も
書面による雇用契約を結ばなければなりません。
い、職場の安全を確保しなければなりません。
試用期間
雇用主の義務には、危険物の特定、評価、管理と、
安全衛生上の事故の調査が含まれます。 また雇
雇用主は最長 90 日間の試用期間を含む雇用を
用主は、職場での発生した重篤なけがを当省に
届け出る義務があります。
従業員に提示できます。
試用期間の設定は任意であり、雇用契約の一部
として書面による同意が必要であり、誠意ある協
議の対象でなければなりません。
従業員は身の安全を守るために適正な注意を怠
らず、自分の作業により他の従業員を危険にさら
さないようにしなければなりません。 従業員は、
重大な危険が予想される作業を拒否することがで
試用期間の終了前に解雇された従業員は、不当
な解雇を理由に個人的な苦情を申し立てることは
きるほか、安全衛生向上のための措置や制度に
参加する権利があります。
できません。 ただし、雇用主による差別、ハラスメ
ント、不当な行為など、その他の理由により個人
的な苦情を申し立てることは可能です。
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職務の変更とリストラ
雇用関係上の問題
従業員の雇用継続に支障が予想される事業上の
決定が計画された場合、雇用主はそれについて
従業員と協議しなければなりません。
職場で雇用問題が起きた場合、雇用主と従業員
はまず事実関係を確認し、 問題解決のために両
者で話し合う必要があります。その際に、支援者
や組合・協会代表に参加してもらうことも可能です。
両者の権利と義務については、当省の情報を参
考にしてください
そして決定を下す前に支障を受ける従業員に情
報を提供し、その意見を聞かなければなりません。
雇用主はその際に正当な理由があるならば、秘
密情報を従業員に開示する必要はありません。
話し合いによっても解決しない場合、従業員また
は雇用主は当省フリーダイヤル 0800 20 90 20 ま
でご相談ください。相談内容は秘密厳守いたしま
一部のケータリング・清掃・介護・ランドリー業務や
用務を行う従業員の場合は、その雇用主の事業
が売却されたり、その業務が外部委託や別の請
負業者のものとなったりした場合、特別な規則が
適用されます。ただし、全体で 19 名以下の従業
す。また、本サービスは無料です。
員を雇用する雇用主およびその関係者 (small
and medium-sized enterprise ‘SME’) は、そのよ
うな規則から免除される場合があります。
Employment Court (雇用裁判所)の管轄となりま
す。
それでも未解決の問題は、まずは Employment
Relations Authority (雇用関係局)、その後は
罰則
雇用関連の各種法規に違反した場合、個人には
最高$10,000、企業には最高$20,000 の罰金が科
せられます。 また、職場の安全衛生に関連した法
規に違反した場合、雇用主は罰金を科せられたり、
起訴されたりすることがあります。
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