「みどりが人を呼ぶ」最新百貨店の屋上

■寄稿■
「みどりが人を呼ぶ」最新百貨店の屋上
㈱グリーバル 取締役 石黒 一弘
売上増が顕著な百貨店業界
国内の景気回復に伴う国内購買力に加え、昨年10月
以来新税制度がスタートし、外国人観光客への免税項目
が広がり、日本製品を買い求める外国人観光客が増加し、
百貨店売上を押し上げて来ている。
「爆買い」と言われる
中国人観光客の動向を伝えるニュースをご覧になった方
も多いことだろう。そのことを裏付ける東京地区の最新
の外国人観光客売上、来店動向が先日発表された。それ
によると、2015年6月の売上は前年同月比407.
1%で
写真1 西武百貨店(池袋)屋上全景。夜のシーン。
29ヶ月連続のプラス、来客数も前年同月比376.
5%とこ
ちらも右肩上がりで推移しているという。
(日本百貨店協
会資料より)
特に今年4月以降の東京地区の百貨店売上は、円安や、
韓国でMARSの感染が広がったことなどの影響を受け
て、外国人観光客の来日人数も増え、百貨店での購入額
も右肩上がりに増えており、近年にない伸びを見せてい
る。
百貨店業界はさらに集客力を高め、オリンピック需要
を見込んだ差別化を狙って、未活用、未利用の資産に大
きな投資を始める時期に来ていることが想像できる。
未利用の屋上空間をリニューアル
ゴールデンウイークを間近にした今年の4月下旬、東
写真2 屋上に上がり、まず目に飛び込んでくるのは、緑の多さと
奥の空間への広がり。この先に何があるのだろうかと来た人をワク
ワクさせてくれる。
京・池袋のターミナル駅直結の百貨店、西武池袋本店の
屋上が
「食と緑の空中庭園」としてリニューアルオープン
る高くて長い圧倒感のあるグリーンウォール(壁面緑化)
した(写真1)。この屋上は、フランス人画家・モネの蓮
(写真4)、その中に隠れるようにして飲食店が並んでい
の池を模した庭園が目玉となり、毎日沢山の来場者を迎
る。さらに奥に進むと、お目当てのモネの蓮池が現れる
(写真5)。その間、色とりどりの花々が彩りを添えてい
えている。
屋上に上がってまず目に入って来るのは開放的な広が
る(写真6)。ここまで来ると、訪れた人は百貨店の屋上
りのある空間(写真2)。細長い建物特性を活かした、こ
であることを忘れてしまう。周りの女性達も思い思いに
の先に何があるのだろうと思わせるワクワク感を生み出
スマホやカメラのシャッターを切っている。フランスに
す作りになっている。奥に進むと、大きなベンチ付きの
旅行に来てしまった様な錯覚に陥っているのかも知れな
池とパラソル(写真3)、さらに進むと両サイドに現れ
い。
Vol.41 No.482 2015-9 29