理学療法士 安西 毎年やってくる雪のシーズン。この季節になると「雪かきをして腰を痛 めてしまった。」と整形外科を受診される患者様を見かけるようになりま す。日頃あまりやることはない動作で雪かきをおこなうと、腰には予想以 上に負担がかかってしまいます。かといって、積もってしまったら雪かき をやらないわけにはいきません。少しでも腰の負担を軽くするために、今 回はちょっとした雪かきのコツを解説いたします。 腰痛には様々な原因が考えられます。雪かきをして腰痛になってしまう 場合のほとんどが姿勢と雪を投げ捨てる方向に問題があると私は思って おります。解剖学的に研究をされておられる先生も沢山いらっしゃいます が、ここではごく簡単に説明させていただきます。 人間は立っているだけで腰部椎間板に負担がかかっています。あおむけ で寝ているときの椎間板内圧を基準にすると、立っているだけで寝ている ときの4倍、ものを持たない中腰(この場合、膝を伸ばしたままでお辞儀 をしたときをさします)ですと6倍の圧力がかかるとの研究結果がありま す(Nachmson 1976)。椎間板にも負担がかかっている上に、荷物を 持つと背筋にも負担がかかってきます。人間の体はテコの原理が多く働い ています。腰の場合、テコの支点にあたるのが背骨です。手に持った重さ を背筋が支えていることになります。背骨と背筋の距離は変えられないの で、荷物を持つ手が背骨から離れれば、離れるだけ背筋に負担がかかるこ とになるのです。 また、腰の骨は構造上、体を前屈・後屈させやすくできていますが、体 を捻るのは苦手です。腰の骨をつなぐ椎間関節は、前屈・後屈では関節面 がスムーズに動きますが、捻ると関節面がぶつかりあうようにできている のです。 医療法人社団めぐみ会 南大沢メディカルプラザ2 リハビリテーション科 智 これらを考えた時に少しでも腰に負担をかけないコツとは、 ① 全体を使って雪をかく②体をできるだけ捻らない、ことです。 ①体全体を使って雪をかく 写真1 どうしても雪をかく時、体が前かがみになってしまい ます。また、雪を体 から離れた位置でかいてしまいま す(写真1) これですと、椎間板にも背筋にも負担が かかってしまいます。 写真2 腰の力だけで踏ん張るのではなく、膝を使い、雪はで きるだけ体に近い位置でかきましょう(写真2) ②体をできるだけ捻らない 写真3 写真4 かいた雪を右、左と体を捻って道路わきに 捨てるのはやめましょう(写真3、4)。 写真5 写真6 かいた雪は正面に捨てるように心がけて ください(写真5、6)。 そのほかにも、雪かきの前には準備運動をする。一度に大量の雪はか かない。使いやすい道具を使うなど、ちょっとした工夫で楽になる場合が あります。大雪が降ってしまうとどうしてもやらなければいけない雪かき ですが、無理なく安全に行ってください。 医療法人社団めぐみ会 南大沢メディカルプラザ2 リハビリテーション科
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