日本材料試験技術協会 創立 60 周年記念「讃岐シンポジウム」報告 (第

日本材料試験技術協会 創立 60 周年記念「讃岐シンポジウム」報告
(第 268 回 材料試験技術シンポジウム)
日本材料試験技術協会は、2016 年で創立 60 周年となります。その記念事業の第
一弾として 9 月 5 日、香川大学工学部で「讃岐シンポジウム」を開催しました。開
催の直前に沖縄で発生した台風の影響で、四国への移動の心配がありましたが、台
風の影響も小さく無事に開催することができました。
「讃岐シンポジウム」は、当協会だけでなく香川県および香川大学工学部にゆか
りのある企業の方々が数多く参加し、副題の“ものつくりとそれを支える計測 =
はかる(測る・計る・量る)= ”に沿っての計測機器展示とポスターによる研究
成果発表がインターラクティブセッションと称して講義棟のロビーで行われまし
た(写真1)。地域連携が3件、材料試験8件、材料強度4件、センシング 10 件、
見学会の企業紹介の2件を含めて全部で27件の発表がありました。昼食をはさん
でおよそ3時間。ゆったりとした時間配分のせいかいつもより深い交流が行われた
と感じました。特に、センシングのセッションはこれまでの材試協の活動ではあま
り見られない内容であり、新たな展開を予感するものも多々ありました。
講義室での講演では、最初に、シンポジウムの趣旨説明が讃岐シンポジウム実行
委員長 香川大学教授 石井明氏より行われた後、当協会の小賀正樹会長より開会あ
いさつと材試協の紹介が行われました(写真2)。続いて当協会の3つの研究部会
(「硬さ研究部会」、
「新しい硬さ研究部会」、
「実用材料試験研究部会」)の活動内容
の紹介がそれぞれの研究部会長等より行われました。
インターラクティブセッション後、地域連携活動の紹介プレゼンテーションに先
立ち、香川大学理事・副学長 筧善行氏、香川大学工学部長 中西俊介氏より、日
本材料試験技術協会創立 60 周年に対してお祝いの言葉をいただきました。香川大
学社会連携・知的財産センター特命教授 倉増敬三郎氏および香川高等専門学校地
域イノベーション・センター長 教授 岩田弘氏からは、それぞれの機関の地域と
の連携活動についてご紹介いただきました。
基調講演は、産業技術総合研究所工学計測標準研究部門長 高辻利之氏から、も
のづくり産業の高度化を支える計量標準の研究開発について産総研が取り組んで
いる研究開発を紹介していただきました。メートル原器の発案から国際的な採用、
定義の変遷、さらに円滑な通商のための各国相互承認に至るまで、モノをはかる習
慣を変えていくにはおよそ 100 年という年月が必要なことの困難さが感じられま
した。また、2018 年には SI の改定が予定されており、重さ(質量)の標準がキロ
グラム原器からアボガドロ定数に基づく定義に変更になる計画を紹介していただ
きました。
特別講演は、香川大学危機管理先端教育研究センター長の白木渡先生から「南海
トラフ巨大地震に備える ~防災から減災、減災から縮災~」を紹介していただき
ました。巨大地震に耐える設計をしても、想定したレベル以上の大きな地震が来た
らどうなるのか。想定からの設計で安全安心を確保する限界があることが、これま
での大きな災害で得られた教訓ではないか。それよりは、災害に直面することを前
提とし、避難できる時間を稼ぐなどで被害を最小化する減災、復旧を素早くする縮
災、それを行うための全体の危機管理の考え方が述べられました。安全設計に代表
されるハード面の対策に加えて、訓練・教育や地域体制作りなどのソフト面、危機
管理の設計が重要であることを説かれました。安全についての文化はたやすく変え
られないが、数年かけて人は変えていくことができるとの言葉が印象に残りました。
シンポジウムの参加者は、83 名(材試協から 27 名)。高松市内と瀬戸内海の島々
を一望できる研究棟 11 階のラウンジで開催された交流会には 56 名が参加しました。
2 日目の 9 月 6 日の見学会には、26 名の方が参加し、産業技術総合研究所四国セ
ンター、鎌長製衡(株)、(株)タダノの三か所の見学を行いました。
産総研四国センターでは、健康工学研究部門の研究施設などを見学し、人の健康
状態を見える化するためのアプローチの研究について紹介していただきました。
鎌長製衡は、産業用の秤(はかり)、計量システムのメーカーですが、元々は天
秤の分銅を作ることから発展された老舗の企業です。現在の主力製品は、トラック
スケールですが、コンテナトレーラーの重心位置(三次元)を瞬時に計測できる高
い技術には驚きました。今も、大小分銅の製造、校正も行っているとのことでした
が、トンレベルの巨大な分銅でトラックスケールの検査をしている様子は迫力があ
りました。
タダノは、日本有数のクレーン車など高所作業車のメーカーで、今回見学した工
場では、主として国内で用いられるラフテレーンクレーン車の製造ラインでしたが、
製造している部材の大きさに目を奪われました。特に、最後のほうに見学した吊上
げ荷重 550 トンのクレーン車の巨大さ(バランスを保つため車本体に掲載するカウ
ンターウエイトだけでも 200 トン)には度肝を抜かれました。巨大クレーンのブー
ムの製造には軽量化のための設計、確実な溶接技術、シリンダ収縮機構の工夫が必
要であるとの説明にはとても関心させられました。
見学会の最後には、第 84 番札所 屋島寺を訪問し、屋島ドライブウェイの不思議
な傾斜がある坂や屋島頂上から一望できる瀬戸内海の美しい景色で記念事業の第
一弾 讃岐シンポジウムを締めくくることができました。
讃岐シンポジウムを実施するにあたり、実行委員会を組織しました。シンポジウ
ムの準備から実行までの実行委員のみなさまにお世話になりました。特に、実行委
員長としてご尽力していただいた石井明氏、現地担当としてお世話していただいた
香川大学教授 平田英之氏、澤田秀之氏と研究室の学生さんに感謝いたします。
写真1
インターラクティブセッションの様子
写真2
小賀会長のあいさつ