「地域主権改革」の意義と定義(「地域主権戦略大綱」(2010 年)より) (1)地域主権改革の意義 地域主権改革は、明治以来の中央集権体質から脱却し、この国の在り方を 大きく転換する改革である。国と地方公共団体の関係を、国が地方に優越 する上下の関係から、対等の立場で対話のできる新たなパートナーシップ の関係へと根本的に転換し、国民が、地域の住民として、自らの暮らす地 域の在り方について自ら考え、主体的に行動し、その行動と選択に責任を 負うという住民主体の発想に基づいて、改革を推進していかなければなら ない。 (2)地域主権改革の定義 「地域主権改革」とは、「日本国憲法の理念の下に、住民に身近な行政は、 地方公共団体が自主的かつ総合的に広く担うようにするとともに、地域住 民が自らの判断と責任において地域の諸課題に取り組むことができるよう にするための改革」である。「地域主権」は、この改革の根底をなす理念 として掲げているものであり、日本国憲法が定める「地方自治の本旨」や、 国と地方の役割分担に係る「補完性の原則」の考え方と相まって、「国民 主権」の内容を豊かにする方向性を示すものである。 疑問の多い「地域主権」 その先にある日本とは ただ少し違うかもしれないと思うのは、地域主権の先には連邦制や道州制の 姿が見え隠れすることだ。 そもそも主権とは国家の最高独立性を示すものである。国内的には、自らの ※9 領土を治めるという意味での統治権であり、国の最高法規である憲法を制定し、 ※9 統治権 国政のあり方を最終的に決定する力が主権である。国外的には、国家間の対等 な関係を担う独立した国家であることを示す力ということになる。 統治権は国土や国民など国家を治める権利 のことで、主権や国権とも呼ばれる国家の最 高権力。日本では主権者である国民の負託を 受けて、政府が統治権を代行する機関となっ ている。 日本は国民に主権(主権在民、国民主権)があり、国民の選挙によって選ば れた国会議員が内閣総理大臣を指名し、内閣が組織され中央政府として国政が 行われる。つまり現在の日本は、主権者である国民の負託を受けた政府が国政 を行うことで「国民主権」を体現しているのだ。 地方分権は、国家の存在や最高権威性を前提として、政策の効果や効率性を 最大限にするために、財源や権限を地方に委ね、地方経営の自由度を高めるこ とを主眼にしている。国(中央政府)と地方(自治体)とは互いに補完する関 係であり、日本がめざす姿や大きな方向は同一である。 しかし地域主権がめざす「地域のことは地域で決める」という考え方を突き ※10 詰めていくと、連邦制国 家 のように、連邦を構成する州や邦、共和国も主権 や憲法をもつことになる。なによりも最高法規であるべき憲法が、州や邦ごと ※10 連邦制国家 複数の国や州が連盟や同盟して、一つの主 権国家を形成している国のこと。アメリカや ロシア、ドイツ、スイスなどが該当する。 に違っては国がめざす姿や方向が一つにならない可能性がある。日本は本当に そうした連邦制国家をめざすのだろうか。 13
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