アジャイル初心者の心得 - Jesse Fewell

アジャイル
プロジェクト・マネジャー
アジャイル初心者の心得
初めてのアジャイル・プロジェクトにおいて、
心得えておくべきこととは?
文:JESSE FEWELL(CST、PMI-ACP、PMP、編集者)
参考書を読み、トレーニングも受講しました。アジャイル・
プロジェクトに初めて着手する準備は万端です。しかし、ど
うしても気にかかることがあります。「アジャイルにはさまざ
まな利点があると言うけれど、実際のところどうなのだろう
か?」
この疑問に答えるために、アジャイルに着手した後の現
実について、お話しします。
新規のアジャイル・チームは急峻な学習曲線を示します。実際、チ
ームは 3~5 回のイテレーションを経験すれば、上記のような最初の
ハードルを乗り越え、比較的安定します。もちろん、プロジェクト計画
短期間のウォーターフォールを繰り返すだけでよい:多く
は十分に練るべきです。ただし、スケジュールには必ず余裕を持たせ
のアジャイル専門家は、有能な人材が力を合わせて同時
なければなりません。
に1つの成果物を完成できるという、理想的な状態の実現
を強調します。しかし、それはあくまで最終的な状態です。
信頼性が第一、生産性はその次に:アジャイルの重要なビジネス上
即座に実現するわけではありません。アジャイル手法の主
の利点の1つは、機能横断的で自己組織的なチームによって生産性
なねらいは、スポンサーに対して早い時期から頻繁に価値
が向上することです。ただし、その利点がすぐに実現するとは限りま
をもたらすことです。それを念頭に置けば、実際に使用で
せん。私はこれまで、プロジェクト開始後1カ月以内で生産性が20%
きるプロダクトのインクリメントを定期的にデリバリーできる
または25%向上すると予測したプロジェクト計画を何件か目にしたこと
限り、どのようなやり方で作業を進めても構わないということ
があります。これでは15%もの改善をしっかり達成しても、チーム・メン
になります。もちろん、いずれはより積極的な姿勢を取ろう
バーはピザ・パーティーで祝うこともなく、失敗したような気分に陥るこ
とするようになるでしょう。しかし、例え以前とまったく同じプ
とになり望ましい状況ではありません。
ロセス・サイクルを採用するとしても、1年がかりのプロジェ
私はむしろ、新規のアジャイル・チームには、信頼性と予測可能性
クトを1カ月ごとの実用プロダクトのインクリメントに分割す
を高めることに集中してほしいと考えています。デリバリー・サイクルを
れば、リスク・プロファイルと価値曲線は劇的に改善しま
短縮すれば、リスクを抑えて集中力を高めることができます。そうすれ
す。出発点としてはそれで十分です。
ば、約束したことを実行できる可能性は格段に向上します。アウトプッ
トの信頼性が高まれば、プロジェクト・マネジャーである私はステーク
最初のイテレーションは常に不安定:あなたは有能な人材
ホルダーの期待を従来よりもうまくマネジメントできるようになります。
を集めたチームを結成し、優れたトレーニングを実施しまし
生産性を問題にするのはそれからです。
た。プランニング・ポーカーのようなハイレベルな見積り手
アジャイルに期待できるビジネス上の利点を実現するには、大量の
法を使って、数回のイテレーションの計画も練りました。そ
再学習と問題解決が不可欠です。プロジェクトを実施する際にその 2
れでも、私はこう断言できます。初めてのイテレーションは
つを行うことを厭わなければ、混乱に陥ることなく自信を持ってアジャ
予定どおりには進みません。なぜかと言えば、新チームの
イルを実践できることでしょう。
メンバーは、長期にわたり共同作業をするのも、当該のビ
ジネス上の問題に取り組むのも、今回が初めてです。また
Jesse Fewell 氏(CST、PMI-ACP、PMP)は、PMI アジャ
多くの場合、与えられた一連のツール、テクノロジー、そし
イル CoP(Agile Community of Practice)の創設者で、
てとりわけアジャイル手法を実際に扱うのも、やはり初めて
PMBOK®ガイド・ソフトウェア拡張版(Software Extension
のことだからです。
to the PMBOK® Guide)のコアチーム・メンバー。
連絡先 [email protected]
PM Network® Magazine, Project Management Institute, Inc., 2014.
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