変わり行くCKD-MBDの概念

第60回日本透析医学会学術集会・総会 企業共催シンポジウム2
日時 平成27年6月27日
(土)
14:00∼16:30
場所 パシフィコ横浜 第1会場
(メインホール)
司会
福岡赤十字病院 副院長 平方
秀樹 先生
昭和大学 医学部内科学講座 腎臓内科学部門 客員教授 秋澤
忠男 先生
Hideki HIRAKATA
Tadao AKIZAWA
慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常
(CKD-MBD)
の概念は、
FGF23
(Fibroblast Growth Factor23)
などの新たな関連因子の登場により大きく変わりつつある。2014年に発売された鉄を有効成分とする初の
リン吸着薬であるクエン酸第二鉄の登場も、
リン管理と鉄補充の関連に光が当たるきっかけとなり、
CKD-MBD
と鉄代謝の概念変化が世界的な潮流となっている。シンポジウム開催にあたり、平方氏は「クエン酸第二鉄発売
以降、注目されているCKD-MBDと鉄代謝に関する話題を楽しんでください」とその関心度の高さについて
触れ、
秋澤氏もシンポジウムのテーマが「CKD-MBD/鉄代謝の概念変化と世界の潮流」
であること自体に、
昨年
とは異なる新たな空気を感じると述べた。
本シンポジウムでは、
深川氏にCKD-MBDの概念の変化、
友杉氏に鉄代謝概念の分子レベルでの理解、
濱野氏に
鉄欠乏と鉄補充の正しい認識、横山氏に臨床試験結果から見るクエン酸第二鉄と鉄代謝の関連について解説
していただいた。
講演
1
変わり行くCKD-MBDの概念
∼世界の潮流変化より∼
東海大学医学部内科学系 腎内分泌代謝内科 教授 深川
雅史 先生
CKD-MBD治療の潮流は、
FGF23分泌に対する介入である
利尿ホルモンのFGF23が注目されている。FGF23はリンの
CKD-MBDにおいて心血管疾患予防による生命予後改
活性型ビタミンD産生を低下させ、二次性副甲状腺機能亢
善が重視されるようになっており、心血管リスク因子とし
進症の発症に関与すると考えられている。深川氏は「高リ
てリン負荷と血管石灰化に加え、骨細胞で産生されるリン
ン血症が生命予後不良に繋がることはよく知られている
負荷により分泌が亢進し、リン排泄を促進させる以外に、
が、血清リン濃度が上昇するかなり前にリン調節系の異常
に、鉄の種類によってはFGF23への作用が異なることか
が始まっており、FGF23上昇は、そうした異常の早期から
ら、FGF23を低下させる薬剤選択が必要である。
認められる 」と指摘した。
同氏は「FGF23欠損マウスでは造血が亢進することも報
透析患者、保存期CKD患者ともに、FGF23高値になるほ
告されており、FGF23高値は造血を抑制する可能性が示唆
ど死亡率が上昇する 2),3),4)。FGF23は、特に心不全と強く関
されている 8)。CKD-MBDの新たな構成要素としてFGF23
連している 5)。こうした知見を総合し、同氏は「CKD患者に
と鉄代謝との関連のさらなる研究が期待される」と述べ、
おけるFGF23分泌に対する介入では、なるべく分泌を上昇
講演を締めくくった。
1)
させる因子を避け、分泌低下に導く介入を行うことが望ま
しい(図)
」と述べた。
図
FGF23と鉄代謝はCKD-MBDの新たな構成要素
CKD患者におけるFGF23分泌に対する介入
上げる
保存期CKD患者へのクエン酸第二鉄投与で、FGF23が約
下げる
50%低下することが報告されている 6)。深川氏は、リン吸着
1. リン負荷
1. リン制限
薬の中で唯一鉄を含有するクエン酸第二鉄がFGF23を低
2. カルシウム負荷
下させた背景として、リン吸着作用以外の関与を示唆する
3. 活性型ビタミンD
2. カルシウム非含有
リン吸着薬
報告を示した。それによると、鉄が充足している状態では
4. 鉄欠乏
FGF23は正常であったが、鉄欠乏状態ではFGF23の転写が
亢進した。保存期CKD患者も鉄欠乏状態にあり、ここに鉄
5. 炎症
補充を行うことで、骨細胞でのFGF23の転写が正常化し、
6. 低酸素
3. シナカルセト
4. 鉄補充(種類による)
FGF23が低下したと考えられる。一方、静注鉄の含糖酸化
提供:深川 雅史氏
鉄では、透析患者のFGF23の上昇が認められる7)。このよう
参考文献
1)Isakova T, et al.: Kidney Int 79(12): 1370-8, 2011
5)Scialla JJ, et al.: J Am Soc Nephrol 25(2): 349-60, 2014
2)Gutierrez OM, et al.: N Engl J Med 359(6): 584-92, 2008
6)Yokoyama K, et al.: Clin J Am Soc Nephrol 9(3): 543-52, 2014
3)Isakova T, et al.: JAMA 305(23): 2432-9, 2011
7)Takeda Y, et al.: Am J Nephrol 33(5): 421-6, 2011
4)Komaba H, et al.: Nat Rev Nephrol 8(8): 484-90, 2012
8)Coe LM, et al.: J Biol Chem 289(14): 9795-810, 2014
講演
2
鉄代謝の概念変化
∼分子レベルでの理解から実践へ∼
金沢医科大学 名誉教授 友杉
直久 先生
腎性貧血は総鉄量の減少ではなく体内鉄分布の異常
鉄が過剰にならないように調節するという大きな役割を
20世紀末から今世紀初頭にかけ、鉄代謝の分子レベル機
担っている」と説明した。鉄はこのような半閉鎖の制御機構
序の解明が急速に進んだ。特に重要なのは、鉄量を感知して
で再利用され、大量出血しない限り、体内の鉄総量は変わら
調節する機構が、血清鉄と細胞内鉄に対し別個に存在する
ない。同氏は「腎性貧血は、ヘモグロビンとフェリチンの貯
ことである。血清鉄濃度が高まると肝臓由来ペプチドであ
蔵量の均衡が崩れた状態で、体内の総鉄量の減少ではない。
るヘプシジン-25の発現が亢進し、肝臓から血中への鉄流入
ヘモグロビン鉄を持続的に確保する工夫が必要」と述べ、
が抑制される。また、細胞内鉄濃度が上昇すると、鉄調節蛋
neocytolysis赤血球崩壊への対応の重要性や、輸血や静注
白質(IRP)が鉄貯蔵蛋白であるフェリチン産生を促進しつ
鉄投与が一過性の対症療法であることを指摘した。
つ、DMT-1やTfR-1などの膜蛋白の発現を抑制し、細胞内へ
の鉄取り込みを阻害する。友杉氏は、
「鉄代謝の本質は、鉄を
クエン酸第二鉄は生理的な物質
蓄積することなく、血中鉄濃度の恒常性を保つことである。
ヘプシジン-25は鉄回転の指標である。遺伝子疾患や感染症
これらの感知機構は、鉄を回転させて有効に利用する、
での貧血を対象とした研究で、ヘプシジン-25の値が10ng/mL
以下では、鉄はスムーズに取り込まれるが、40ng/mLで鉄回転
が不十分となり、100ng/mLで停止することがわかっている。
経口鉄の吸収は、鉄貯蔵量の影響を受け、鉄充足状態に達
図
MIZUHO-Riona Study
(ng/mL)
80
すると経口鉄は吸収されなくなる1)。またそのレベルはフェ
リチン50ng/mL以上とされ 2)、ヘプシジン-25が上昇するた
くなると、細胞内鉄で制御されるDMT-1発現が低下し腸
からの吸収が抑制され、mucosal block現象がみられる 。
3)
友杉氏は「クエン酸第二鉄の投与は、母乳の約3割を占める
クエン酸鉄と同様であり、これはまさに生理的物質を生理
的経路で補給することになる」と指摘した。実際、同氏らが、
透析患者に対し、
2週間ごとにクエン酸第二鉄6錠/日を2ヶ月
間繰り返した結果、
クエン酸第二鉄投与群では換算フェリチ
60
換算フェリチン値 の
※ 変化量
めferroportinからの鉄供給が抑制される。経口鉄負荷が多
P<0.05
Paired t 検定
40
20
0
-20
ン値
(血清フェリチン値およびヘモグロビン鉄の換算フェリ
チン値の和)が増加し、1日当たり4mg程度の鉄補充であっ
-40
た
(図)
。
今回の検討では血清フェリチンが60ng/mL以下と
鉄が吸収されやすい患者群であったが、
血清フェリチンがさ
らに高い患者群では鉄の吸収量が低下するものと想定され
る。同氏は「クエン酸第二鉄の登場は、鉄代謝の概念と身体
に優しい鉄補給のあり方を考え直す良いきっかけである」
-60
リオナ 6錠
14日間
服薬なし
14日間
N=28
※換算フェリチン値=血清フェリチン値+ヘモグロビン鉄の換算フェリチン値
提供:友杉 直久氏
と述べ、講演を締めくくった。
参考文献
1)Wheby MS, et al.: J Clin Invest 43(7): 1433-42, 1964
2)Eschbach JW, et al.: Ann Intern Med 87(6): 710-3, 1977
3)Frazer DM, et al.: Gut 52(3): 340-6, 2003
講演
3
いつまでも、
鉄=毒だという認識でいいんですか?
大阪大学大学院医学系研究科 腎疾患統合医療学 寄附講座准教授 濱野
高行 先生
ESA抵抗性を予測するにはTSATの方が
血清フェリチン値よりも遙かによいマーカー
しろ、鉄欠乏が懸念される。また、ESA抵抗性(ERI)はTSAT
わが国の腎性貧血患者に対する鉄投与頻度も量も、世界
約40%まで上昇するにつれ、ERIは低下する(図)2)。一方、
的に見ても少なく 1)、サロゲートマーカーにすぎない血清
ERIと血清フェリチン値の関連は補正により減弱する。ERI
フェリチン値の変動をもとに鉄負荷を過度に懸念する傾向
を予測するには、
TSATの方が血清フェリチン値より有用性
にある。血清フェリチン値は、ESA使用や炎症などさまざま
が高いことは明白であり、
過去の文献とも一致を見る3)。
と強い関連があり、フェリチンの高低に関わらず、TSAT が
な因子に影響され、体内鉄動態を正確に反映しているとは
するという観察研究の結果から、鉄投与が生命予後の悪化
静注鉄のリスクを
経口鉄に当てはめることはできない
に繋がると考えるのは、明らかな曲解」と断じた。
鉄は生体に必須の元素である。ラットを用いた研究では、
同 氏 ら に よ る 国 内 統 計 デ ー タ( J a p a n R e n a l D a t a
鉄欠乏による心筋ミトコンドリア障害が報告されている4)。
Registry(JRDR))の解析では、TSAT20%未満、血清フェリ
臨床では、機能性鉄欠乏を伴う心不全患者を対象としたラ
チン値50ng/mL未満の患者の割合が年々増加しており、む
ンダム化試験で、鉄投与によりNYHAや歩行テスト、心不全
言えない。濱野氏は「血清フェリチン高値が予後不良に関連
悪化による入院が有意に抑制された5)。また、貧血のない鉄
よって血栓塞栓症のリスクが高まる。最近、鉄欠乏による反
欠乏女性への鉄投与で、疲労の改善や学習能力の向上が示
応性血小板増多症がまた心筋梗塞、脳梗塞に繋がることが
されている
判明している9), 10), 11), 12)。鉄製剤の適切な併用によりESAに
。さらに、濱野氏は静注鉄と経口鉄による
6 ), 7 )
eGFRへの影響を検討した最新のランダム化試験8)の結果、
よる一過性の血小板増加が徐々に軽減される自験例が示さ
静注鉄群において心血管イベントと感染症の発生割合が有
れた。
意に高くなり、試験が早期中止となったことに触れ、この点
濱野氏は、これらの知見を踏まえ「貧血の有無にかかわら
を踏まえて「従来知られている静注鉄のリスクを経口鉄に
ず、本来的に鉄は必須の補酵素であり、特に透析ごとに鉄を
当てはめることはできない。鉄補充にあたっては、静注より
喪失する透析患者では、鉄はなおさら必要である。いつまで
も経口の方が良いと考えている」と述べた。
も、鉄=毒だという認識でいいんですか?」と述べ、講演を終
ESAには血小板凝集を増大させる副作用があり、それに
えた。
ESA抵抗性とTSATの相関
(U/week/kg/g Hb)
エポエチンα/β
(μg/week/kg/g Hb)
2.6
(μg/month/kg/g Hb)
−2
2.4
フェリチン≧100
(N=11,226)
2
フェリチン≧100
(N=19,218)
−3
フェリチン<100
(N=7,798)
−1.2
−2.5
2.2
エポエチンβペゴル
−1
フェリチン<100
(N=30,380)
フェリチン<100
(N=15,409)
Log ERI
Log ERI
ダルベポエチン
Log ERI
図
1.8
−1.4
フェリチン≧100
(N=5,897)
−1.6
−1.8
1.6
−2
−3.5
0
20
40
60
TSAT
80
100(%)
0
20
40
60
TSAT
80
100(%)
年齢、性別、log 透析歴、糖尿病、BMI、Alb, log CRPで調整を行った。
0
20
40
60
TSAT
80
100(%)
Hamano, T. et al.: Kidney Int Suppl 5: 23-32, 2015
参考文献
1)Bailie GR, et al.: Nephrol Dial Transplant 28(10): 2570-9, 2013
7)Murray-Kolb LE, et al.: Am J Clin Nutr 85(3): 778-87, 2007
2)Hamano T, et al.: Kidney Int Suppl 5(1): 23-32, 2015
8)Agarwal R, et al.: Kidney Int 2015, in press ; doi: 10.1038/ki.2015.163
3)Tessitore N, et al.: Nephrol Dial Transplant 16(7): 1416-23, 2001
9)Aundhakar SC, et al.: J Assoc Physicians India 61(10): 745-7, 2013
4)Dong F, et al.: Clin Sci(Lond)109(3): 277-86, 2005
10)Williams B, et al.: Am J Med Sci 336(3): 279-81, 2008
5)Ponikowski P, et al.: Eur Heart J 36(11): 657-68, 2015
11)Naito H, et al.: Intern Med 53(21): 2533-7, 2014
6)Krayenbuehl P, et al.: Blood 118(12): 3222-7, 2011
12)Chang YL, et al.: PLoS One 8(12): e82952, 2013
講演
4
包括的なリン管理の実際
東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 准教授 横山
啓太郎 先生
鉄含有リン吸着薬はリン管理とともに
貧血管理に影響する
して、①カルシウムの負荷、②コンプライアンス、③懸念さ
新たなリン吸着薬であるクエン酸第二鉄の治験で中心
踏まえて、まず治験データからクエン酸第二鉄の特徴を説
的に携わった横山氏は、これまでのリン吸着薬の問題点と
明した。
れる蓄積性をあげ 1),2)、本学会で議論が白熱する鉄指標を
透析患者180例を対象とした52週の追跡ではクエン酸第
ESA使用量が多く、ESAの減量が顕著であった(図)。同氏
二鉄投与(平均投与量2.73g/日)により鉄の吸収が認めら
は、こうした関連の背景として「ESA投与の減量によりヘ
れ、鉄の利用能を示すTSATは上昇し、16週後に約40%に
モグロビン合成が低下し、造血での鉄利用が減少した結
達した後に定常化した。血清フェリチン値も上昇し、28週
果、余剰となった鉄が移動して血清フェリチン値が上昇し
後に約250ng/mLに達した後に定常化した 。クエン酸第二
た可能性がある」との推論を述べた。
鉄の投与開始用量は1.5g/日(1回2錠×3)である。この場
また横山氏は、注目のリン利尿ホルモンであるFGF23に
合、平均血清フェリチン値は200ng/mLを超えない。
ついても言及した。治験時、クエン酸第二鉄投与により
またクエン酸第二鉄投与開始後に、ESAは減量され、多
CKD患者の血清FGF23濃度は約50%低下した 4)。今回新た
くの症例で静注鉄製剤が中止されていた。この結果は、今
に同氏が探索的に要因分析を行った結果、このFGF23の変
学会で多く報告されているとおりである。
化量は、リン濃度変化量に加え、クエン酸第二鉄投与量、
3)
ベースラインの血清フェリチン値とも関連することが示さ
クエン酸第二鉄投与による鉄吸収は
ESA抵抗性の改善と関係する
れた。これはCKD-MBDの中心たるリン代謝と鉄代謝が相
横山氏はさらに治験データを追加解析し、クエン酸第二
いえる。
鉄投与時の鉄代謝を明らかにすべく検討を行った。その結
そのうえで横山氏は「クエン酸第二鉄は透析患者のERI
果、血清フェリチン値の変化量と関連する因子として、要
を改善し、CKD患者において血清FGF23値を低下させた
因分析によりクエン酸第二鉄投与量とESA変化量が同定
が、機序については不明な点も残されており、FGF23低下
された。さらに、MMRM解析によりESA使用量の減少と血
の臨床的な効果、鉄との関連については今後検証する意義
清フェリチン値上昇の間には関連が認められた。また、
がある」とまとめ、講演を締めくくった。
互に関わり合うことをCKD患者で裏付ける重要な見解と
ESA抵抗性(ERI)が改善した症例は、他の症例に比べ、
図
0∼28週のESA変化量カテゴリ分類別 ERI推移
Q1>群
26
Q1<=,
<=Q3群
Q3<群
ERI ベースライン ERI 28週 ERI 52週
24
22
20
18
ERI
16
14
Q1>
VS
Q1<=, <=Q3
<.0001
0.0458
0.681
Q1>
VS
Q3<
<.0001
<.0001
0.4006
Q1<=, <=Q3
VS
Q3<
0.03
0.0142
0.1948
12
t 検定
10
8
6
4
2
0
0週
28週
ERI=ESA使用量/(体重×Hgb)
52週
0週
28週
52週
0週
28週
52週
ESA使用量:
(エポエチン+ダルベポエチン×200+エポエチン ベータ ペゴル×200)/W
【28週;24週-28週,
52週;44週-52週の処方量より算出】
体重:透析前体重を使用
ESA減量の程度を4分位でQ1∼Q4に分け、
3群
(Q1>群、
Q1<=, <=Q3群、
Q3<群)
に分けて比較
参考文献
1)Spasovki GB, et al.: Nephrol Dial Transp 21(8): 2217-24, 2006
2)浪江 智, ほか:日本透析医学会会誌 48(3): 169-77, 2015
3)Yokoyama K, et al.: J Ren Nutr 24(4): 261-7, 2014
4)Yokoyama K, et al.: Clin J Am Soc Nephrol 9(3): 543-52, 2014
提供:横山 啓太郎氏
**2015年5月改訂
(第4版 投与期間制限医薬品に関する情報の項削除)
*2015年1月改訂
処方箋医薬品注1)
クエン酸第二鉄水和物(Ferric Citrate Hydrate)錠
商品名
和 名
リオナ®錠 250mg
洋 名
Riona ®Tab. 250mg
一 般 名
日本標準商品分類番号
クエン酸第二鉄水和物
(Ferric Citrate Hydrate)
87219
性 状 ・ 剤 形
外
白色のフィルムコーティング錠
イ
ズ
識 別 コ ー ド
承 認 年 月
2014年1月
*薬 価 収 載
2014年4月
*販 売 開 始
2014年5月
販 売 元
鳥居薬品株式会社
製 造 販 売 元
日本たばこ産業株式会社
臨床症状・措置方法
機序・危険因子
これら薬剤の作用を減弱させるおそれが これら薬 剤と結 合
あるので、
併用する場合にはこれらの薬剤 し、吸収を減少させ
の作用を観察すること。
るおそれがある。
キノロン系抗菌剤
シプロフロキサシン等
テトラサイクリン系抗生物質
テトラサイクリン等
セフジニル
抗パーキンソン剤
ベンセラジド・レボドパ等
エルトロンボパグ オラミン
経口アルミニウム製剤 注2 )
水酸化アルミニウムゲル
合成ケイ酸アルミニウム
上面
サ
22600AMX00005000
甲状腺ホルモン剤
レボチロキシン等
セルロース、
ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、
ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、
ヒドロキシプロ
ピルセルロース、
クロスポビドン、
ステアリン酸Ca、
ヒプロメロース、酸化チタン、
タ
ルク、
ポリエチレングリコール
形
承 認 番 号
薬剤名等
有 効 成 分
クエン酸第二鉄水和物を無水物として
(クエン酸第二鉄として)250mg含有
( 1 錠 中 )
物
3年
(外箱等に表示の使用期限を参照のこと)
3. 相互作用
併用注意
(併用に注意すること)
組成・性状
加
気密容器、室温保存
(「取扱い上の注意」参照)
使用期限
注1)注意−医師等の処方箋により使用すること
【禁忌(次の患者には投与しないこと)】
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
添
貯 法
側面
注2)透析療法を受けている患者へは投与禁忌である。
長径 約14.9mm、短径 約6.9mm、厚さ 約4.6mm
4. 副作用
国内における本剤の主要な臨床試験において、
801例中204例
(25.5%)
に副作用が認め
られた。
主な副作用は、
下痢、
便秘、
腹部不快感、
血清フェリチン増加であった。
(承認時)
その他の副作用
下記の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場
合は適切な処置を行うこと。
JTP 751
効能・効果
慢性腎臓病患者における高リン血症の改善
種類
用法・用量
通常、成人には、
クエン酸第二鉄として1回500mgを開始用量とし、1日3回食直後に経口
投与する。以後、症状、血清リン濃度の程度により適宜増減するが、最高用量は1日
6,000mgとする。
<用法・用量に関連する使用上の注意>
・本剤投与開始時又は用量変更時には、1∼2週間後に血清リン濃度の確認を行う
ことが望ましい。
・増量を行う場合は、
増量幅をクエン酸第二鉄として1日あたりの用量で1,500mgまで
とし、
1週間以上の間隔をあけて行うこと。
使用上の注意
1.慎重投与
(次の患者には慎重に投与すること)
(1)消化性潰瘍、
炎症性腸疾患等の胃腸疾患のある患者[病態を悪化させるおそれが
ある。]
(2)ヘモクロマトーシス等の鉄過剰である患者[病態を悪化させるおそれがある。]
(3)C型慢性肝炎等の肝炎患者[病態を悪化させるおそれがある。]
(4)
血清フェリチン等から鉄過剰が疑われる患者[鉄過剰症を引き起こすおそれがあ
る。]
(5)他の鉄含有製剤投与中の患者[鉄過剰症を引き起こすおそれがある。]
(6)発作性夜間血色素尿症の患者[溶血を誘発し病態を悪化させるおそれがある。]
2. 重要な基本的注意
(1)本剤は、血中リンの排泄を促進する薬剤ではないので、食事療法等によるリン摂取
制限を考慮すること。
(2)本剤は、定期的に血清リン、血清カルシウム及び血清PTH濃度を測定しながら投
与すること。血清リン、血清カルシウム及び血清PTH濃度の管理目標値及び測定
頻度は、学会のガイドライン等、最新の情報を参考にすること。低カルシウム血症の
発現あるいは悪化がみられた場合には、活性型ビタミンD製剤やカルシウム製剤の
投与を考慮し、
カルシウム受容体作動薬が使用されている場合には、
カルシウム受
容体作動薬の減量等も考慮すること。
また、
二次性副甲状腺機能亢進症の発現あ
るいは悪化がみられた場合には、
活性型ビタミンD製剤、
カルシウム製剤、
カルシウム
受容体作動薬の投与あるいは他の適切な治療法を考慮すること。
(3)本剤は消化管内で作用する薬剤であるが、
本剤の成分である鉄が一部吸収される
ため、血清フェリチン等を定期的に測定し、鉄過剰に注意すること。
また、ヘモグロ
ビン等を定期的に測定し、特に赤血球造血刺激因子製剤と併用する場合には、
過剰造血に注意すること。
販売元
東京都中央区日本橋本町3ー4ー1
他のクエン酸製剤との併用で血中アルミニ クエン酸との併用に
ウム濃度が上昇したとの報告があるので、 より、
吸収が促進され
同時に服用させないなど注意すること。
るとの報告がある。
製造販売元
頻度
2%以上
2%未満
胃腸障害
下痢(10.1%)、便秘(3.2%)、 腹部膨満、腹痛、十二指腸潰瘍、排便回数増
腹部不快感(2.5%)
加、
胃腸障害、
悪心、
嘔吐、
便通不規則
臨床検査
血清フェリチン増加(2.7%)
血中アルミニウム増加、
γ-グルタミルトランスフェ
ラーゼ増加、
ヘマトクリッ
ト増加、
ヘモグロビン増加
赤血球増加症、肝機能異常、食欲減退、
そう痒
症、
高血圧
その他
5. 高齢者への投与
一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を観察しながら慎重に
投与すること。
6. 妊婦、産婦、授乳婦等への投与
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人、産婦及び授乳婦には、治療上の有益性
が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
[これら患者への投与に
関する安全性は確立していない。]
7. 小児等への投与
小児等に対する安全性は確立していない
(使用経験がない)。
8. 適用上の注意
薬剤交付時:PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。
(PTPシートの誤飲により、
硬い鋭角部が食道粘膜に刺入し、
更には穿孔をおこして縦隔
洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されている。
)
9. その他の注意
(1)本剤の投与により便が黒色を呈することがある。
腹部のX線又はMRI検査で、本剤が存在する胃腸管の画像に未消化錠が写る可能性がある。
(2)
(3)
イヌを用いた長期反復投与毒性試験において、最大臨床用量の鉄として約5倍に
相当する用量より、鉄の過剰蓄積に伴う肝臓の組織障害(慢性炎症巣、細胆管の
増生及び肝実質の線維化)が認められた。
これらの変化は休薬による回復性はな
く、
休薬期間中に病態の進行が認められた。
*包 装
リオナ®錠250mg:100錠(10錠×10 PTP包装)、500錠(10錠×50 PTP包装)、1,000錠
(10錠×100 PTP包装)
取扱い上の注意
アルミピロー開封後は湿気を避けて保存すること。
詳細は添付文書をご参照ください。
禁忌を含む使用上の注意の改訂に十分にご留意ください。
資料請求先
鳥居薬品株式会社 お客様相談室
TEL 0120-316-834
FAX 0120-797-335
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2015年7月作成