2015年7月1日 「日本の約束草案(政府原案) 」対する意見 東京都生活協同組合連合会 会長理事 伊野瀬 十三 ①日本の約束草案の提出について (意見の概要) 日本の削減数値は、先進国としてのリーダーシップを果たし、官民一体となって国際的な技術的 優位性を飛躍的に高める動機づけとして、積み上げ式ではなく野心的な目標を掲げるべきです。 (意見及び理由) 約束草案に記載されている通り、気候変動問題は地球規模の課題です。COP3以来、日本は先 進国の中でリーダーシップを取り、厳しい削減目標の中、国民的な活動として取り組みをすすめて きました。また、東日本大震災以降、国民のエネルギーに関する意識は高まり、日本の持続可能な 社会構造に向けて考える土壌づくりがすすんでいます。しかしながら、約束草案で掲げる削減値は、 積み上げにとどまっており、日本が保有する技術的優位性を飛躍的に高める動機づけには至ってい ません。また、国際的に先進国としての約束(2050 年までに先進国全体で 80%削減)を後退させ る日本の削減値への非難はNGO等を中心に高まっています。これらの理由から最低でも、1990 年比 30%以上の削減目標値とすべきです。今後、温室効果ガス排出量削減の進捗状況を定期的に評 価し、内外に周知することによって、国内省エネルギー活動の推進と技術開発の後押しを行なえる よう世論を形成していく必要があると考えます。 ⑤温室効果ガス削減目標積み上げに用いたエネルギーミックス (意見の概要) 原子力・石炭に頼らない再生可能エネルギーを中心としたエネルギーミックスとすべきです。 (意見及び理由) 長期エネルギー需給見通しを策定において最優先されるべきものは、目先の経済性ではなく、持 続可能性をベースとした長期的かつ戦略的な視点であると考えます。原子力発電は、多額の国税を 投入しているにも関わらず、いまだに廃炉や核燃サイクル技術が確立されておらず、放射性廃棄物 の最終処分の見通しが立っていません。東京電力福島第一原発事故原因も究明されていない中、現 実を無視し楽観的な技術革新を前提にベースロード電源とすることは、将来に大きな負の遺産を押 し付けることになるのは否めません。これらの理由から、原子力発電をベースロード電源に位置付 けることに強く反対します。また、温暖化防止やエネルギー自給率を高めるために、ドイツやイギ リスをはじめ他国は石炭火力発電割合を戦略的に減らしています。日本が石炭火力発電を段階的に 増やしていくことは、国際的なトレンドにも逆行しており、温室効果ガス削減目標とともに国際的 な非難の対象となっています。持続可能性、エネルギー安全保障、技術的な国際競争力を高める視 点で考える場合、再生可能エネルギーの拡大こそが日本における最も重要な戦略になると考えます。 ⑥温室効果ガス削減目標積み上げの基礎となった対策・施策[5]エネルギー転換部門 (意見の概要) 再生可能エネルギーの目標は最低でも 30%以上とし、最大限の導入に向けた施策を早急に行なう べきです。 (意見及び理由) 約束草案では、再生可能エネルギーの最大限の導入促進を図るとしていますが、肝心な対策・施 策がほとんど示されていません。また、再生可能エネルギーにポテンシャルが低く見積もられてい ることに違和感があります。政府は、現時点ではベースロード電源割合、再生可能エネルギー割合 は他国に後れをとっていないとしていますが、先進国は、再生可能エネルギーを基本電源とし4 0%以上とすることが標準となっています。日本の戦略がいかに経済優先・既得権者保護の旧態依 然の政策を踏襲したものとなっているか明らかです。再生可能エネルギーのポテンシャルや技術力 の高い日本であるからこそ、地域経済に貢献する循環型の再生可能エネルギーを最低でも電源割合 として 30%以上を目標にするよう求めます。
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