2015年11月18日『学校だより・ふうしゃ児童・生徒版第6号』

学校だより
ふうしゃ
児童・生徒版
平成27年11月18日
アムステルダム日本人学校
No.6
http://www.jsa.nl/
戦後 70 周年
校長 尾後貫 智
私はみなさんと同じで戦争を体験していません。私が生まれてから今日まで戦争を体験しなく
てすんだのは、日本が戦争をしなかったからです。そのような国に生まれることができたことを
私は幸せに思います。今年は戦後 70 周年の節目にあたると言われています。戦争について、次
代を担うみなさんに伝えていくのは、大切な役割だと考えています。そこで平和について子ども
たちに考える機会が作れないだろうかと、企画したのがオランダ在住で戦争体験を持っているK
さんの講演です。
みなさんは、アメリカのワシントン国立公文書館に 70 年前の日本兵の手紙や日記が保存して
あるのを知っていますか。それはサイパン島に従軍し、戦死した将校が戦場に書き残した二十四
万字の届かなかった手紙等です。アメリカ軍は日本人の精神面や日本軍の戦略を分析するため
に、戦場に遺されたこれらの手紙や日記を収集したのでした。その残された手紙を家族へ届けよ
うと企画されたドキュメンタリーをテレビで見る機会がありました。
わが妻、静江へ
何も言い残すことはない。君と結婚して十七年がたった。幸せな思い出に満ちた十
七年だった。来世への思い出でこれ以上のものはないだろう。君になんとか恩返しを
したかった。感謝の気持ちでいっぱいだ。私のぶんも子どもたちを可愛がってほしい。
今後、日本は本当に困難な時期を迎えるだろう。日本は、あらゆる勇気を奮い起
こして困難を乗り越えねばならない。父親を亡くした息子たちのよい相談相手になって
やり、彼らを強く、廉直な日本人に育ててくれ。
健、正、康へ。強い正直な日本人になってくれ。将来に日本を担ってほしい。兄
弟どうし、互いに協力しあい、全力を尽くしてお母さんを助けてあげてくれ。
これまで過ごした年月に対し、君になんと礼を言えばいいのかわからない。体を大切
にして、末永く充実した人生を送ってほしい。
和美(かずよし)より
これは、自分の運命を悟って書いた兵士の手紙です。おそらく届くことはないとわかって書い
た手紙でしょう。人は死を目の前にしてどうしてこんなに優しくできるのか。それとももともと
優しかったのか。いずれにしてもこんなに優しい人がどうして敵と戦ったのか。また戦わなくて
はならなかったのか。それも今の私よりずっと若い人たちが。なんとも言えない気持ちになりま
す。Kさんの話を聞いたことをよい機会にして、平和の大切さを子どもながらに感じてほしいと
思います。