⑤ - 広島県立庄原特別支援学校

平成26年度 庄原特別支援学校 公開授業研究会ポスター発表
コミュニケーション指導について
~日常生活の指導や自立活動を中心に~
広島県立庄原特別支援学校
小学部 教諭 増村 幸
教諭 谷川 サヨリ
児童の実態
・自分の名前を言うことができる。
・「どうぞ」や「ありがとう」などの言葉で人と
コミュニケーションをとることができる。
・絵本を繰り返し読み聞かせを行うと,物語を
一部を覚えて言うことができる。
・「楽しかったね」や「おいしいね」などの簡単な
言葉で自分の気持ちを表すことができる。
・「テラスに行きましょう」や「おいしいしようね」な
どの2語文を話すことができる。
・自分が困った状況になったときに,「って
(手伝って)」と支援を要求することができる。
・「おんがくのカードを持ってきて」などの簡単な
指示に従うことができる。
小学部 4年生(女児)
・知的障害(療育手帳A)
脳梁形成不全,ウエスト症候群
・肢体不自由
脳性麻痺による移動機能障害
・KIDS 乳幼児発達スケール TYPE Tの結果
総合発達年齢 2歳 3ヶ月
理解言語
3歳 0ヶ月
表出言語
2歳 3ヶ月
対子ども社会性 1歳11ヶ月
対成人社会性 2歳 7ヶ月
仮説
取組①
・物を借りる場面や報告する場面
などを設定する。
・要求する流れを固定する。
・繰り返し取り組む。
・自分で考え,簡単な言葉を使って,
相手に要求することができるので
はないか。
取組②
・正しい言葉を覚える。
・友達や教師の名前を
覚える。
・ 先生や友達の名前を
入れて伝える機会を増やす。
・誰にでも分かる言葉を使って,
人と関わることができるでは
ないか。
取組① 相手に要求して伝えるために(自立活動)
20枚
○支援
・生活道具のカードを見て,
連想する言葉を言う時間を設けた。
・児童が言った後,正しい名称を
伝えるようにした。
○変容
・洗濯機以外は,連想したことを
言葉で伝えることができた。
・「ゴミ箱」のカードを見せると,
「ゴミ,ぽぃ」と関連のある言葉を
言っていたが,ゴミ箱と言うことが
できるようになりつつある。
○支援
・連想する言葉を言うことが
できなかったカードについては,
実物を見て,使い方を思い出す
ことができるようにした。
○変容
・洗濯機では,実物を見ると,
「お洗濯」などの関連ある言
葉 を言うことができるように
なった。
取組① 相手に要求して伝えるために(日常生活の指導)
○支援
・場所が描かれた写真カードを用意し,児童自身が手に取り,遊びたい
場所を選択できるようにした。
・「遊びたい場所を自分で選択する→先生の肩を叩く→ 『○○先生,
トランポリンに行ってもいいですか』と言う→遊びたい場所へ行く」などの
要求する方法の流れを固定した。
・テラスで自転車や三輪車を借りる場合は,伝える先生を固定した。
・遊び終わった後も「○○先生,自転車を貸してくれてありがとうございました」
とお礼を言う場面を設定した。その際,正しい言葉に導くようにした。
・相手に伝えるときに,視線を合わせる言葉掛けをするようにした。
○変容
・教師の言葉を手掛かりに,自分から「トランポリンに行ってもいいですか?」
と言うことができるようになってきている。
・要求する先生を固定したことで,自分から伝える先生の所に行くようになった。
・教師の言葉を手掛かりに「〇○先生,自転車かしてください」と伝えることが
できるようになった。
取組② 人と関わろうとするために (自立活動)
写真カード:教師19枚
友達19枚
○支援
・教師が「誰ですか」と尋ね,写真
カードに写っている人の名前を答
えるようにした。
・不明瞭な言葉や違う人の名前を
言った場合は,ゆっくりと正しい
名前を伝えるようにした。
○支援
・児童の机の上に8枚のカードを
提示する。
・教師が「○○先生」と言った人の
写真カードを取るようにルール作
りをした。
○変容
・写真を見て,瞬時に先生と友達
が判別でき,名前を言うことがで
きるようになった。
・教師が正しい名前をゆっくりと伝
えると名前の一部を復唱するよ
うになった。
○変容
・繰り返し活動することで,教師の言
葉をよく聞いて,正しいカードを取る
ことができるようになった
・カードを取り終わった後に,「もう1
回」と言って何度も活動をしようとす
る姿が見られるようになった。
取組② 人と関わろうとするために (日常生活の指導)
○支援
・児童が分かっている先生や友達に気付けるように言葉かけをした。
・児童に「誰ですか」と教師が尋ねることで,児童が考えることができ
る場面を設定した。
・「○○先生,おはようございます」などのあいさつをすることができたら,
賞賛する言葉掛けを行うようにした。
○変容
・「おはようございます」と挨拶するだけだったが,それぞれの先生を見
分けて挨拶することができるようになった。
・人が通り過ぎたときや食堂で見かけたときに,自分から「○○先生」と
話すようになった。
・話し掛けた人のところに積極的に行き,関わる姿が多くみられるよう
になった。
成果①
取組①
・生活に関する道具のカード16枚の名称が言うことができるよう
になった。
・カメラのカードを見て,「はい,ポーズ」などの関係のある言葉を
言っていたが,「カメラ」などの正しい名称を覚えることができるよ
うになった。
・カードだけでなく,実物を見ることで,生活と結びつけて物の名
称を覚えることができた。
取組②
・状況に応じ,相手に分かる言葉で,やりたい気持ちを表現するこ
とができるようになってきている。
・それぞれの場面に応じて,状況に応じた言葉を言おうとする 姿
が多く見られ,自分の要求や意思を伝えることができるように
なってきている。
成果②
取組①
・校長先生を始めとして,小学部の教員や養護教諭など(15人)
の名前や18人の友達の名前を覚えることができ,教師の言葉
掛けが無くても「○○先生おはようございます」と言うことがで
きるようになりつつある
・人を意識することができるようになったことで,廊下などで出
会った人に自分から挨拶する姿が多く見られるようになった。
取組②
・写真カード取りでは,始めルールが分からなかったり,写真を
じっくりと見ることができなかったため,違うカードを取ることが
多かったが,活動を繰り返すこと教師の言葉をよく聞いて,写
真を見比べ,正しい写真カードを取ることができるようになった。
・活動にゲーム制を取り入れることで,意欲を引き出し,自分か
ら「もう1回」と言って,繰り返し活動に取り組むことができた。
課題
・生活で使っている道具の中にも,名称の分からないものがある。
・相手に要求するときに,相手と視線を合わせることができていな
いこともある。
今後に向けて
・写真を見るだけでなく,実物を見たり,道具を使ったりする体験
を通して,生活の中で使用することができる物の名称を増やし
ていく。
・授業ごとの始めと終わりの挨拶のときに,お辞儀をしたり,手を
腰の所に当てるなどしていく。
・相手に伝えるときに,視線を合わせることを目標としていること
を担任間だけでなく,他の教師にも伝え,共通認識をもって,
指導にあたっていく。